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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2012年2月号

ワールドナウ

ESCAPステークホルダー会議参加報告

寺島彰

2011年12月14日(水)~16日(金)、アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)「第2次アジア太平洋障害者の十年(2003―2012)の実施状況の最終評価のためのハイレベル政府間会合に向けた地域のステークホルダー会議(以下、ステークホルダー会議)」が、タイ国バンコクの国連会議場で開催され、専門家として参加したので、同会議の内容について報告する。

1 会議の位置づけ

2010年5月10日、ESCAP総会において「『第2次アジア太平洋障害者の十年(2003―2012)の実施状況の最終評価のためのハイレベル政府間会合(以下、ハイレベル政府間会合)』の開催に向けた準備に関する決議(決議66/11)」が行われ、1.ハイレベル政府間会合を2012年に韓国政府の主催で開催する、2.加盟各国や主要関係者がその準備に積極的に貢献するよう要請する、3.ESCAP事務局がアジア太平洋地域の障害者団体を含む主要な関係者に準備過程への参画を促すよう努力する、ということが決められた。

この決議に基づき、ハイレベル政府間会合の準備が進められており、2010年6月23日~25日には、「ESCAP第2次アジア太平洋障害者の十年(2003―2012:びわこミレニアム・フレームワーク)の実施状況評価に関する専門家・関係者会議」が開催された。その結果は、報告書としてまとめられ、2010年10月19日~21日に開催されたESCAP第2回社会開発委員会に提出された。同委員会は、ハイレベル政府間会合に議題案などの準備をするために開催されたものであり、その報告書をもとに議論された。

今回のステークホルダー会議は、2012年10月に迫ったハイレベル政府間会合に向けて、1.第2次アジア太平洋障害者の十年(2003―2012)の実施に関して域内の政府および市民団体に対して実施した調査で示された重要な問題を検討すること、2.第2次アジア太平洋障害者の十年(2003―2012)最終評価のためにハイレベル政府間会合において提出する文書(インチョン戦略)にステークホルダーの意見を取り入れること、という二つの目的のために開催された。

今後、3月14日~16日にバンコクで開催されるハイレベル政府間会合準備会議に「インチョン戦略」原案が提示され、修正、承認ののち、10月のハイレベル政府間会合に提案される。参加者数は、政府・障害者団体からの専門家41人、国際機関から7人、オブザーバー67人であった。

2 議論の内容

ステークホルダー会議の日程は、表1のとおりであった。3日間に4つの議題が議論され、主な議題は、次の二つであった。

表1 会議日程

プログラム
12月14日(水)
08:00-09:20 受付
09:30-10:00 1.開会式
10:00-10:30 休憩
10:30-12:15 2.議題案採択
3.第2次アジア太平洋障害者の十年(2003-2012)の実施に関する最終評価のためのハイレベル政府間会合までの道のりの概観(1)
12:15-13:30 昼食
13:30-14:30 3.同ハイレベル政府間会合までの道のりの概観(2)
14:30-15:00 休憩
15:00-17:00 4.第2次アジア太平洋障害者の十年(2003-2012)の実施に関する最終評価のためのハイレベル政府間会合に対する提出文書(インチョン戦略)の草案検討(1)
12月15日(木)
09:00-10:30 4.同草案検討(2)
10:30-11:00 休憩
11:00-12:30 4.同草案検討(3)
12:30-13:45 昼食 
13:45-15:30 4.同草案検討(4)
15:30-16:00 休憩
16:00-17:00 政府間会合準備会議における代表市民団体の指名
12月16日(金)
11:00-12:00 韓国2012APDF組織委員会によるサイドイベント
12:00-13:00 昼食
13:00-14:00 「貧困・障害・生活に関する実地調査」打ち合わせ
14:00-17:00 報告書の採択
17:00-17:30 閉会式

(1)議題4「第2次アジア太平洋障害者の十年(2003―2012)の実施に関する最終評価のためのハイレベル政府間会合に対する提出文書(インチョン戦略)の草案検討」

インチョン戦略は、第2次アジア太平洋障害者の十年の実施評価を踏まえ、新アジア太平洋障害者の十年(2013―2022)に達成すべき目標を定めた計画である。表2のような10の目標が設定されている。これらの目標は、2011年夏に実施された政府および市民団体に対するESCAPによるアンケート調査の結果を参考に、事務局が抽出したものである。それぞれの目標には、下位目標が複数示され、また、その目標が達成できたかを判断する指標が示されており、目標の達成状況が把握できるようになっている。

表2 インチョン戦略の目標

目標1 貧困の減少と就労の促進
政策決定における参加の促進
物理的環境、公共輸送、知識、情報へのアクセスの推進
社会的保護の強化
障害児に対する早期介入と教育の拡大
男女平等と女性のエンパワメントの確保
災害対策における障害者対策の統合
障害者データの収集と分析の改善
障害者権利条約の批准と実施の促進と国内法の調整
10 国際的協調、域内協調、サブ地域の協調の推進

たとえば、「目標4 社会的保護の強化」には、2022年までに「すべての人々に医療ケアを提供すること」「最低限の収入を保障すること」などの下位目標が設定されており、その達成状況を把握するための指標として、「障害者手当を受給している人の割合」「障害者手当の障害者一人あたりの年間平均額」などが示されている。

ステークホルダー会議では、事務局案に対して、参加者から多くの意見が述べられ、修正が加えられた。事務局案と修正意見は、ESCAPのサイトに掲載されているので、参照されたい(事務局案 http://www.unescapsdd.org/disability/event/regional-stakeholder-consultation-high-level-intergovernmental-meeting-final-review 修正意見 http://www.unescapsdd.org/disability/meeting-document/report-regional-stakeholder-consultation-high-level-intergovernmental)。

報告書の最終案は、現時点(2012年1月20日)では示されていないが、今後、ESCAPから提示されると思うので、これらのサイトに注目していただきたい。

(2)第2次アジア太平洋障害者の十年(2003―2012)の実施に関する最終評価のためのハイレベル政府間会合準備会議における代表市民団体の指名

2012年3月14日~16日にバンコクで開催されるハイレベル政府間会合準備会議に招待され、同会議で意見を述べることのできる市民団体の選出が行われた。ESCAP事務局から、世界的な組織、アジア太平洋地域、または小地域で活動している障害者団体、または障害者等の利益を代表する団体などの資格要件が提案され、さまざまな議論の後、最終的には、15の市民団体が選出された(表3)。

表3 政府間会合準備会議に招待される市民団体

1.APCD(アジア太平洋障害者センター)
2.APDF(アジア太平洋障害フォーラム)
3.CBR A P Network(CBRアジア太平洋ネットワーク)
4.DAISYコンソーシアム
5.DPIアジア太平洋 
6.インクルージョン・インターナショナル(2)アジア太平洋
7.RI(リハビリテーションインターナショナル)アジア太平洋
8.WBU(世界盲人連合)アジア太平洋
9.WFD(世界ろう連盟)アジア太平洋
10.WFDB(世界盲ろう者連盟)アジア太平洋
11.WNUSP(世界精神医療ユーザー・サバイバー連盟)
12.ASEAN 自閉症ネットワーク
13.ASEAN Disability Forum(アセアン障害フォーラム)
14.PDF(太平洋障害フォーラム)
15.SADF(南アジア障害フォーラム)

3 おわりに

ハイレベル政府間会合は、2012年10月29日~11月2日に韓国のインチョンで開催される。同会合では、「第2次アジア太平洋障害者の十年」でなし得たこととなし得なかったことを整理し、アジア太平洋障害者の十年をさらに10年延長する決議が行われる予定である。同会合は、各国政府の代表団が集まる会議であり、アジア太平洋地域の障害者施策の実施に関して強い影響力を持っている。傍聴も認められており、域内の主要な障害者関係団体は、同時期に国際会議を開催し、障害者権利条約の推進、障害者の社会参加促進等に強い関心を持っていることをアピールすることとしている。

これらの会議の開催日程(予定)は、表4のとおりである。日本障害フォーラム(JDF)は、これらの会議への参加を呼び掛けており、会議のプログラムの紹介や現地での通訳の配置などの支援を行う予定である。ノーマライゼーションの読者の皆さまには、これらの会議に積極的に参加していただき、私たちの思いをアジア太平洋の政府代表団に伝えていこうではありませんか。

表4 今後の会議日程

10月(2012年) 11月
24 25 26 27 28 29 30 31
←DPIインチョン会議→ 
←APDFインチョン会議→
←RI世界会議(インチョン)→
←ESCAP政府間会合→

(てらしまあきら 日本障害フォーラム国際委員長・浦和大学)