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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2012年3月号

行政の障害者支援

岩手県における障がい者支援の現状と今後の展望

岩手県保健福祉部障がい保健福祉課

1 本県の被害状況

東日本大震災津波により、本県では、死者4,667人、行方不明者1,319人(平成24年2月7日現在)、家屋被害は全・半壊2万4,534棟、一部損壊5,010棟(平成23年7月現在)など甚大な被害を受けた。

障がい者施設では15人(利用者12人、職員3人)が死亡、17人(利用者14人、職員3人)が行方不明となったほか、物的にも計84か所が被害を受けた。なかでも、沿岸部では入所・通所施設、ケアホーム・グループホーム、居宅介護事業所など21棟が全壊し、入所施設の利用者は被災直後からグループホーム型仮設住宅ができるまで福祉避難所に職員とともに集団避難し、通所施設ではサービス提供が一時中断されるなど、障がい者の生活にも大きな影響を及ぼした。

また、在宅の障がい者の中には、自宅の流失や保護者の死亡等により、内陸部の施設への入所を余儀なくされた方もいた。

2 本県における対応

本県では、平成23年8月に、「岩手県東日本大震災津波復興計画」を策定した。計画では、復興に向けての目指す姿を「いのちを守り 海と大地とともに生きる ふるさと岩手・三陸の創造」とし、「安全の確保」、「暮らしの再建」、「なりわいの再生」を基本原則とし、平成30年度までの8年間に取り組む施策を定めている。

障がい者福祉に関しては、災害に強く質の高い保健・医療・福祉提供体制の整備や、福祉コミュニティーを確立するための体制づくりなどに取り組むこととしている。

(1)被災した障がい福祉サービスの復旧支援

被災した施設等について、設置主体の意向を聴きながら仮設施設の建設を行うとともに、国庫補助を活用して施設の復旧を支援している。被災した事業所の中には、施設再建の用地が確保できないため今年度中に復旧工事に着手できないところもあり、こうした施設に対しては、平成24年度においても補助することとしている。また、施設や事業所のサービス提供体制の復旧を図るため、施設等が介護職員等を採用しOJT等を通じた育成を行うことに対して支援している。

(2)障がい者の就労支援

多くの就労支援事業所が取引先企業の被災等により自主生産製品の販売活動が困難になったことから、「就労支援振興センター被災地サブセンター」を沿岸地域に設置し、コーディネーターを配置して、販路拡大や新たな製品開発等の支援を行っている。

(3)相談支援体制の強化

避難所生活から仮設住宅への移行等、生活環境の変化に伴う障がい者の多様なニーズに対応するため、被災地域の相談支援事業所の人的体制強化を支援している。

(4)「被災地障がい福祉復興支援センター」の設置

復興期における障がい福祉サービス事業所の安定した運営を図るため、県内9障がい福祉圏域ごとに「被災地復興支援センター」を設置し、コーディネーターを配置して、被災地の事業所の運営支援、障がい者のサービス利用支援等を行うこととしている。

(5)発達障がい児への支援

障がいの特性により避難所生活への適応が困難な方や、特別なケアが必要な障がい者への対応として、発達障がい者への理解を促進するためのチラシを作成・配布したほか、発達障がい児支援者を対象とした研修を実施している。

(6)その他(被災者のこころのケア)

障がい者を含む被災者のこころのケアに継続的に取り組むため、本年2月県央に「岩手県こころのケアセンター」を、沿岸4か所に「地域こころのケアセンター」を設置し、相談・診察などの専門的ケアや、こころの健康に関する普及啓発などを行っている。

3 課題と今後の取り組み

(1)今後の災害に向けた対応

今回の大震災に関して、障がい者団体の方からは、「災害に関する情報の入手や避難行動が困難であった」、「避難所生活で必要な補装具や日常生活用具が速やかに配布される必要がある」などの意見をいただいた。本県では「障がいを持つ人たちの災害対応マニュアル」を作成し関係者に配布していたが、障がい当事者や家族の方々の意見を聴きながら当該マニュアルを見直し、今後の災害に備えた必要な対策を講じる必要があると考えている。

(2)個々の障がい者の現況把握とサービス利用支援

今回の大震災は規模が大きく、一部の市町村においては行政関係書類・データが流失するなど役場機能に支障が生じたこと、他市町村に避難した方も相当数いること等から、すべての障がい者の方々について、その現況や被災前と同様のサービスが受けられているかなどが十分把握できていない。

このため、前述の「被災地障がい福祉復興支援センター」を中心として、市町村と連携しながら、本県の障がい者の現況を再確認し、必要なサービス利用に結びつけるための支援を行うこととしている。

4 最後に

今回の災害では、他県の自治体や民間支援団体・企業のほか、遠隔地にお住まいの個人の方々から、行政や被災地のサービス事業所等の運営に対しさまざまな温かいご支援をいただいておりますことに、心から感謝申し上げます。