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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2012年3月号

平成24年度障害保健福祉関係予算
―地域生活支援の視点から見る

本多公恵

総合福祉法を見据え今年度の予算概要を考えている最中に、2月8日に行われた総合福祉部会に新しい法律について「厚労省案」が示され、自立支援法の名称の見直しは行い、細部は支援法の改正で課題が改善されているのでその延長線上で考えていく案が出されている。

これまで推進会議と総合福祉部会で検討が重ねられてきた。多くの関係者が時間や労力や知恵や経費をたくさん使って話され、まとめられた「骨格提言」が実現に向け反映されたものになっていないので、個人的には「えっ!」という印象を持っている。

福島先生は障害関連予算は年々増加していると言われるが、それはニーズ増大に伴う予算の「自然増」であり実質的な「予算増」ではないと指摘している。今でも必要な人に必要な支援が届いていない現状がある。

さて平成24年度障害保健福祉予算案では、障害福祉サービス関係費は7884億円で、23年度比16.2%(+1097億円)の伸び率となっている。良質な障害福祉サービス等障がい者が地域で暮らすために必要なホームヘルプ、GH、就労移行支援等の障害福祉サービスを計画的に確保すると心強い方針が掲げられた。では、実際はどのようになっていくかということだが…。

まず、福祉・介護職員の賃金引き上げについて処遇改善助成金が加算となり安定的に支給でき、不十分ながら低かった賃金が増える感を実感できる。事業所では賃金保障として期待できる一方、間接職員や同一法人内でも国以外の事業(たとえば地域生活支援事業等)に携わっている職員は対象ではないことが問題となる。

現状として、自治体の事業なども含めて多様な事業展開をしている事業所では、加算の対象とならない職員と対象者の間に不公平感が生じ、モチベーションにも影響するため、事業所負担で加算非対象者にも支給している。加算を申請すると結局、事業所負担が増えるという皮肉な結果になっている。事業所の赤字解消にはつながらないという課題もそのままだ。支給範囲や方法に更なる検討が必要と思われる。

相談支援事業については、「一般的な相談」(従前の委託相談)、「特定相談」(計画相談支援)、「基本相談」(地域移行・定着相談)、「障害児支援利用援助」と4つに分類された。相談事業は自治体からの委託によって運営している事業所が多いと思われるが、計画相談により収入が増えた分、委託費を減らすような市町村が出てこないかが心配される。相談は計画作成に至るまでの経過で時間を要し、計画にのらない部分の相談や支援方法のスーパーバイズなども行っている。委託費が主たる収入である事業所でも、次年度は相談員を増やして「計画相談」などに対応していくことになるが、実績積み上げの単価では厳しい運営が予想される。

また「計画相談」は施設入所者や児童を含め範囲が拡大され、マネジメントや利用計画作成が自身では難しかった方々には朗報であるが、相談員の量と質の観点から、どこまで対応できるか不安な状況となっている。

障がい児については、長期休暇や年度の変わり目など1年を通じて生活に変化が多いが、例示としてあげられたモニタリング期間「6カ月」にとらわれない判断を区市町村がしてくれることを期待したい。さらに障がい児の相談は、マネジメントだけでなく「育ちを支える」側面もある。厚労省の光真坊氏は「子育ち支援(療育)・子育て支援(家族支援、レスパイト)・地域生活支援」と3つの柱を提唱しているが、障がい児の相談は「何曜日にどのサービスを使うか」ということとともに、「この子の育ちや発達をどのように保障するのか」「将来をどのように展望するか」という「子育ち支援」「地域生活支援」の視点が持てる相談員が必要である。療育とサービス調整の両方をバランス良く対応できる相談員との出会いが重要なポイントにもなる。

GH・CHに関わる部分については、通勤者の評価がされたことは、喜ばしい。同一建物内の大規模化は施設と変わらないので減算対象として理解できるが、事業者が工夫して隣接するところにGHを建て、一体的に運営してきた場合も21人以上とみなされて減算されるとしたら、生活集団の小規模化を工夫をしてきた事業所にとっては新たな課題となる。隣接と近接の表記の違いも明確になっていない。

短期入所は空床確保と緊急時受け入れ加算が付くことで、実際に緊急時の対応が困難な中で事業者が努力して受け入れたことが評価されるのは望ましい。また、家族の要望も高いので体制整備につながることが期待される。

児童デイや放課後デイは現在の報酬が維持され、送迎について手厚い報酬が用意されたことは評価できる。ただし短期入所送迎加算は居宅⇔事業所間となっており、学校や日中活動場所からの送迎は該当しないため不便さが残る。また送迎加算は個別に支給決定される仕組みであると、支給が認められるか否かは自治体判断となり地域格差が生じている現在と同様になる。

居宅事業については、介護保険の報酬単価見直しに合わせ増額を期待していたが、物価下落分が下がっている。これを給地加算や処遇改善加算などの積み上げで計算しても1%ほどの減収になる見込みで、居宅介護事業所にとっては痛手と言わざるを得ない。加算でなく基礎単価の増額を要望したい。

地域に潜在的に眠っているニーズについては、申請主義を基本とする現在のシステムでは、自分のニーズを訴えることに課題を持つ人は支援につながってこない。どのようにしてその人たちに支援を届けていくのか、アウトリーチにも力を入れたい。

(ほんだきみえ 居宅サービス事業者ネットワーク事務局長)