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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2012年10月号

列島縦断ネットワーキング【大阪】

ええもん買って被災地支援!
~「ミンナDEカオウヤ」プロジェクトの取り組み~

関原深

ミンナDEカオウヤとは?

「ミンナDEカオウヤ」とは、被災地の障害者福祉事業所で作られている商品を、全国の「支援したい」と考えている企業や福祉事業所等の団体に売っていただく、というプロジェクトです。

昨年3月11日の東日本大震災では、障害者福祉事業所においても、甚大なる被害を受けられました。事業所が流されたり、近隣での販売ができなくなったり、原材料の仕入れができなくなったりと、いつもの商品作りができなくなってしまいました。商品を作って売ることができないということは、そこで働く障害のある方々の給与がゼロになってしまい、生活にも支障を来します。

弊社は通常、民間企業における障害者雇用や障害者福祉事業所の経営・工賃向上に関するコンサルティング・研修を全国で実施しています。発災までは、東北の福祉事業所とは直接のお付き合いはなかったのですが、いつもお世話になっている障がいのある方々、そのご家族、支援者のことを思うと「自分たちにできることで、持続可能で、被災された皆様に喜ばれることをしたい」と考えました。そこで、被災地の緊急支援に行かれた方からお話を伺い、また、その方が「工賃確保のための市場を作らないといけない」とこのプロジェクトのアイデアをいただいたので、実施しようと決めました。

大震災発災時は、たった社員2人。被災地の商品売上を最大にするにはどのようにすればいいのか? 必死に考えました。

そこで具体的に実施したことは二つです(図1)。

図1 販売モデル

図1 販売モデル拡大図・テキスト

一つは、有償ボランティアで運営するアンテナショップ(直営店舗)を作りました。梅田スカイビル(空中庭園で有名)の地下1Fの空きスペースを、積水ハウス様に3か月間無償提供していただけることになりましたので、そのスペースを活用しました。有償ボランティアの方々は、発災後、現地のボランティアに赴き、帰って来てからも「何か支援できることはないのか」と探していた大学生や、仙台に住んでいたが引っ越して大阪に来られた特別支援学校の先生等々です。全員、店舗の立ち上げや商品の販売といった経験は全くなかったのですが、全員の支援したいという気持ちで何とか作り上げ、新しいメンバーも加わりながら、無償期間終了後の今も店舗運営を続けています。

もう一つは、全国の皆様に売っていただくための「仕組み」を作りました。販売を支援したいと考えている方々はおそらく2タイプがあるだろうと考えました。そこで、それぞれに合わせた販売タイプを作りました。

1.出店料やバイト代は必要 → 卸値で購入できる仕組み(手配の手数料のみ)

2.在庫が残ると困る → 販売協力だけして、在庫が残ったらすべて返品可能

このように、弊社は、皆様が販売協力しやすい機能に徹することで、また販売協力する側は、それぞれの事業所に個別に電話で依頼することなく簡単に発注することができますし、逆に、事業所側も数多くの相手先に請求書送付・入金確認する手間が省けるようになります。

そして、これらの活動から得られる利益を、直営店舗の家賃や有償ボランティアの人件費に充てることで、持続可能な運営を実現しようと考えました(弊社は一切利益を頂戴(ちょうだい)していません。これは弊社の被災地支援活動です)。

皆様の販売・広報支援のおかげで、支援はまだ途中段階ですが、平成24年8月末現在(開始から1年3か月)で売上高は5,200万円を超え、直営店舗を含む全国22店舗で継続的に販売協力をいただいており、全国で実施されたイベント約380件分のお手伝いをさせていただきました。これを換算しますと、約7万5,000人の方にご購入いただき、工賃にするとプラス2,000円/月を約1,400人の方に送り届けていることになります。被災三県(岩手・宮城・福島)の障害者福祉事業所で働く方々は約8,600人ですので、おおよそ2割弱の障害のある人の工賃の足しになっている、という状況です。

「ミンナDEカオウヤ」から「ミンナDEツクロウヤ」へ

障害者福祉事業所の仕事は大きく2パターンあります。障がいのある方がつくる商品を売るというパターンと、もう一つが請負、たとえば工場の下請け等です。商品を売る支援は、ミンナDEカオウヤでできる。けれども、請負を中心に行なっている障害者福祉事業所のサポートは実はできていないということがありました。

また、大震災から1年以上経って、フェーズが変わってきています。震災直後から1年間は、とにかく緊急的な支援が必要でした。しかし今、現地の方々もずっと支援を受けていたいのかと言うとそうではありません。自分たちも自立して、お互いが「ありがとう」と言いあえるような仕事の関係をつくっていきたい、という思いに変わってきています。その思いに対しては、ミンナDEカオウヤのような物販だけでは応えられません。そこで、仕事づくりという枠組みで次に取り組むことにしました。

平成24年9月に「ミンナDEツクロウヤ」というプロジェクトも本格開始しました。これは、被災された事業所や障害者雇用をしている企業に仕事を発注する、その仲介をしながら、東北に請負系の仕事を発注することを目的としています。

このプロジェクトの運営には、「障害のある方の「働く」を支援する」「被災地を支援する」という志を同じくする次の3社が協力して進めています。

・アイエスエフネット株式会社:東北エリアでの障がい者を5年間で1,000人採用

・株式会社アイオーテクノ:福祉事業所への仕事導入支援

・株式会社インサイト(ミンナDEカオウヤ):福祉事業所支援および障害者雇用コンサルティング

現段階で3つの仕事が完了、7つの仕事が実施中、という状況です。平成25年3月までには100の仕事をつくることを目標として進めています。

皆様ができそうなことを、できる形で

皆様にお願いしたいことがあります。それは「できる形で、できる支援を」ということです(図2)。

図2 お願いしたいこと

スタイル 内容
1.販売する 店舗、イベント、講演後
2.注文する ノベルティ、業務発注
3.商材を使う 企画商品
4.運営を手伝う 店舗運営支援
広報支援

皆様にご参画いただくスタイルは、大きく次の4つです。

1.販売する:店舗、イベント、講演後

・今お持ちの店舗・レジ横等の店頭で継続的に販売していただく

・復興支援イベントやバザー等で販売していただく

・講演会の終了後に即売会等を実施していただく

2.注文する:ノベルティ、業務発注

・会社や事業所等のイベント後にノベルティとして配っていただく

・結婚式の引き出物・引き菓子や、お中元・お歳暮に使っていただく

・社内の皆様で共同購入する(個人別に包装を分けることも可能です)

・名刺管理、Web製作等々、業務発注を東北にする(お申し込みはhttp://www.tsukurouya.jp/へ)

3.商材を使う:企画商品

・今あるミンナDEカオウヤの商材とコラボして、共同開発した商品を販売していただく

・商材を使った料理を作って提供する 等

4.運営を手伝う:店舗運営支援、広報支援

・プロジェクト主催のイベントを実施するときに、ボランティアで販売員として手伝う

・店舗運営を手伝う(店舗スタッフになる)→広報や在庫、店頭POPやチラシ作り等

このようにいろいろな仕事があります。

これまでのプロジェクト活動を通じて、有事が発生したときに、できることを徹底して積み重ねる、ということが最も前向きに事が進むと考えており、スタッフ一同、それを共有しながら活動を続けています。

皆様も、何かできることで、このプロジェクトに参画していただけないでしょうか?引き続き皆様のご協力をよろしくお願いいたします。

(せきはらふかし 「ミンナDEカオウヤ」プロジェクト運営責任者、株式会社インサイト代表取締役)