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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2013年1月号

政策委員会に期待すること

障害者政策委員会に期待して

久保厚子

一昨年改正された障害者基本法を基に昨年の7月からスタートした障害者政策委員会で、障害者基本計画の策定について意見書をまとめるべく検討が行われている。

委員は障害当事者、障害関係従事者、学識経験者、地方自治体の長をはじめ30人で構成されていて、多くのさまざまな立場の意見が取り入れられるようになっていることは歓迎すべきことだと思われる。

障害者政策委員会の担っている役割は障害者基本計画案への意見、評価、管理、また、そのために必要な調査・研究を行うこととされている。具体的には、6つの小委員会を設置して、前半の3小委員会が終わり、今は後半の3小委員会の議論が行われており、12月からは6つの小委員会の意見をまとめ、全体で議論を行い意見書にまとめる予定である。

こうした中で、第1小委員会の教育関係では「共生社会を前提にした教育のあり方」が検討され、すべての子どもたちに「共に学び共に遊ぶ」を教育の現場でさらに押し進めようという方向は歓迎すべきである。

また、一人ひとりのニーズに沿った合理的配慮が盛り込まれた個別教育支援計画によって個別の関わり方を明確にするとともに支援計画が生かされる環境の一つとして、教員の養成や研修を通して専門性を担保し、どこに学籍があっても一人ひとりに合った教育を保障する方向も私たち親の願いに叶った方向となっていて歓迎すべきことである。

さらには、一人ひとりの特性・発達に応じた個別教育支援計画が、本人、保護者の意志や意見・希望が反映された形で正しく作成され、十分に活用されるシステムが確立されることに加えて、介護要員・補助要員制度の充実とともに、知的障害や発達障害の場合、子ども同士のコミュニケーション不足が懸念され、それがイジメなどにつながらないよう、PTAや社会全体に向けての障害の理解促進および通常学級の子どもや親たちへの障害についての理解促進を積極的に進め、保障されることを期待している。

一方で、卒業後の進路の選択においては、学校現場においてかなり無理のある進路の選択にならざるを得ない状況が予想されていて、本人の能力や体力からみて、本当に本人に合った本人のためになる進路と言えるのかと、疑問や危惧を抱いている親や教師が多い現状である。卒業後の進路の選択については、画一的ではなく、生活や仕事に対するさまざまな経験が用意されて、緩やかに段階を経て本人に合った進路を選択できる方向が基本計画に入れられるよう検討されることが期待されている。

第2小委員会では、所得保障や就労と社会保障によって一般的な生活が成り立つ方向の検討がなされていて、多くを占める低所得の知的障害者は日々の生活に不安を抱いて暮らしているため期待するところが大きい。しかし、国、地方自治体、独立行政法人での雇用が促進されるよう知的障害者の公務員採用試験での障害種別限定採用の見直しや、新たな雇用の確保方法として、社会的雇用(社会的事業所)をはじめ多様な働き方の促進、制度化の検討も期待したい。

第3小委員会の消費者としての障害者の保護、司法手続における配慮等では、知的障害者におけるバリアフリーは心のバリアフリーが重要であるため、一般社会全体への障害者理解の促進がさらに進むよう検討されることと合わせて、虐待等に関する事件で、過去に多くの障害者が司法の場での不利益な扱いがあったことに関連して、検察・裁判所における障害特性の理解と障害者の意思の確認およびその信ぴょう性についての理解が促進するよう検討されることを期待する。

選挙等における配慮では、人としての権利の保障として、広い意味でさまざまな生活分野と密接に関わることであり重要なテーマである、被後見人の参政権が剥奪(はくだつ)されることも含めて、人としての権利が保障されることを期待し、加えて、文化・芸術・スポーツの分野は、障害の有無にかかわらず同じ価値観やルールで楽しむことができるために、地域共生を具現化するためのツールとして大変有力である。文化・スポーツ施策と連動した支援の検討と実現に期待したい。

第4小委員会の医療・介護、療育、相談等では、医療では障害児を抱える若年層の家族では、自立支援給付、自立支援医療などそれぞれの負担で設定され、合計すると大きな負担額となるため、軽減策の検討を期待したい。

また、障害者基本法や障害者総合支援法、改正知的障害者福祉法などで、障害者の「意思決定支援」が規定された。特に、意思決定への支援を要する知的障害者にとっては、非常に重要な一歩が記されたと評価している。ただ、意思決定支援については概念定義も明確でないため、基礎的な議論を経て真に障害のある本人の意思や思いに沿った支援の方法を確立し、相談支援や各分野での支援に活かされるよう期待している。

第5小委員会の公共的施設のバリアフリー化、住宅の確保に関して、特に都市部における単身生活者に対する住宅手当など一般住宅での生活の実現に向けた検討を期待する。

障害者政策委員会での検討において、基本計画が数値を掲げての計画となり、障害のある人が共生社会の下、さらに安心して豊かな生活が送れることを大いに期待する。

(くぼあつこ 全日本手をつなぐ育成会副理事長)