音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

  

「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2013年3月号

1000字提言

日本は「優しい人」がいっぱいいる

萱嶋陸明

先進国の中で社会的信頼度が最も低いのが日本であるとの統計があり、日本では他者を信頼することが容易でない社会となっていると言われています。私は、この統計は正しくないと信じています。

10年前、高次脳機能障害者の大分県家族会を「会が在るだけでいい」程度の軽い気持ちで立ち上げ、知人宛に50通の文書を郵送して、1回限りだったのですが、会費千円の賛助会員を募集しました。勝手に輪が広がり、半年で422人の入会者がありました。うち、300人以上は私とは全く面識がなく、高次脳機能障害とも関係ない人だったので心から驚きました。どうして他人のために支援してくれるのか、そのような優しさをしたことがなかったので、過去の自分の生き方をものすごく反省し、家族会の運営を続けることが苦にならなくなったと思います。同様に、日本は心優しい人が間違いなく多いと感じている出来事が現在も続いています。

昨年3月に、新築移転したJR大分駅構内にオープンした食専門「市場」の中心に、高次脳機能障害者家族会の「一坪の店」が同時にスタートしました。以前から計画していたわけではなく、「市場」に出店した会社が社会貢献に役立てたいとの思いから、敷地の一部と設備を家族会に無償供与したいとのお話が突然ありました。会社勤めの身では運営が不可能との判断で悩みましたが、善意に報いたいとの思いもあり、1.家族会の店として、高次脳機能障害に関する無料相談と啓発活動を行う。2.当事者が作る革製品の販売を行う。3.店番は全員ボランティアとする。の三方針を決め、何も準備のないまま見切り発車させました。ところが、初日から、次々と応募があり、1か月後には50人のボランティア登録がありました。

これら一連の支援に感謝し、商品売上による家族会の収益をゼロとすることを宣言した活動となりました。朝日新聞、毎日新聞、大分合同新聞およびTOS大分テレビ各社の飛び込み取材を受け、大きな記事として報道されたため、来店するお客様も優しい心遣いの会話となり、励ましを受け、商品購入も積極的に協力してくれました。「一坪の店」を中心にみんなが助け合い、優しさに包まれた夢の共生社会が実現していると感じています。

このように、日本では昔から「困っている人の役に立ちたい」と思っている人が本当にたくさんいるのに、最近の調査でも、社会的信頼度が低い結果がでている理由は、政治面なのか教育面なのか分かりませんが、どこかの時点で間違った方向に向かったからだと思います。このことに早く気付き、誰もが共生社会を目指すことの大切さを理解してもらいたいと願っています。

(かやしまむつあき 脳外傷友の会「おおいた」)