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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2013年6月号

今後の検討に期待すること

今後の障害者総合支援法の見直しに向けた課題について

中島進

1 はじめに

平成25年4月1日に「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(以下、障害者総合支援法という)」が施行されました。障害者総合支援法では、「制度の谷間」を埋めるべく障がい者の範囲に「難病患者等」を加える等の見直しが行われるとともに、平成26年4月には、障がい支援区分の創設、重度訪問介護の対象者拡大、ケアホームのグループホームへの一元化、地域移行支援の対象者拡大等の施行が予定されています。

さらに、施行後3年を目途として、常時介護を要する障がい者等への支援、移動の支援等の障がい福祉サービスの在り方、障がい支援区分の認定を含めた支給決定の在り方、意思疎通の支援の在り方等の項目について検討し、その結果に基づいて所要の措置を講ずることとされており、まだまだ課題が多く残されています。今後、国において検討が進められていくことになりますが、大阪市の取り組み状況を踏まえ、現時点での主な課題は次のとおりと考えます。

2 検討項目に関する課題について

障害者自立支援法の成立以降、多数の事業所が参入し、身近な地域で福祉サービスを受ける環境が整いつつありますが、重症心身障がい者や強度行動障がい者等、いわゆる最重度の障がい者が利用できる事業所は極めて限られており、依然として必要なサービスが確保されているとは言い難い状況です。常時介護を要する障がい者等に対する支援の在り方については、重度訪問介護をはじめ、生活介護等の日中系サービス、ショートステイやケアホーム等の障がい福祉サービスが、個々の生活課題に即して柔軟に利用できることや、相談支援も含め各支援機関が連携して支援を行う体制強化が必要と考えます。

次に、移動の支援についてですが、大阪市では、社会生活に必要不可欠な外出や余暇活動等の社会参加を促進するため、全身性障がい者や知的障がい者、盲ろう者等への外出支援を先駆的に行なってきました。外出は、日常生活を送る上で重要な支援であり、社会経験を豊かにすることに繋(つな)がっています。大阪市内ではバリアフリー化が進み、障がい者が利用できる施設も増えてきており、外出の機会が増えることで支援のニーズはますます増加しています。現行の障がい福祉サービスでは重度訪問介護や行動援護、同行援護は個別給付化されていますが、支援を必要とするすべての障がい者が生活実態に応じて利用できるよう、移動支援事業についても個別給付化が必要と考えます。

障がい支援区分の認定を含めた支給決定の在り方については、現行の障がい程度区分の審査では、特に知的障がい者および精神障がい者について、2次判定で変更される事例が多いことから、今後の障がい支援区分の判定にあたっては、各障がいの特性を反映した客観的な指標が必要と考えています。また、平成24年度から3年を目途に、サービスを利用するすべての障がい者を対象にサービス等利用計画案を作成するよう定められています。障がい福祉サービスの利用者が増える一方で、相談支援専門員の確保が困難なこと等から、事業者の参入が進んでいない現状にあり、事業者確保のため、人材確保等の方策が必要と考えます。

さらには、平成26年4月に、ケアホームのグループホームへの一元化が施行されます。グループホーム等は居住の場として地域での自立生活を支援するとともに、入所施設や精神科病院からの地域移行をより一層進めるために重要な制度であり設置が望まれます。この一元化により、現行のケアホームの支援水準が低下しないような報酬単価の設定や、より一層の設置促進策を講じる必要があります。

就労支援については、今年4月から民間企業の法定雇用率が1.8%から2%に引き上げられたことや、いわゆる「障害者優先調達推進法」が施行され、障がい者の就労や雇用をより一層促進することが必要です。そのためにも、就労移行支援事業の充実や障がい者の支援する関係機関が連携して就労や雇用に繋げていくための方策が必要と考えます。

意思決定にあたっては、情報やコミュニケーション支援が必要であり、手話通訳等の意思疎通支援についても、必要な支援が利用できるよう支援内容の充実や通訳者等の人材を確保するための方策が必要です。

今後、各事項を検討するにあたっては、障がい者やその家族、また支援者等、さらには各自治体の意見を集約し、施策に十分に反映する必要があると考えます。また、制度の見直しにあたっては周知期間や自治体の準備期間も考慮し、早急に具体的な検討方法やタイムスケジュールを示していただきたいと考えます。

3 最後に

障害者自立支援法以降、居宅介護をはじめ各障がい福祉サービスの利用者が増加し、障がい者の自立に繋がってきていますが、これに伴い、自治体の財政負担も年々増加しています。制度の見直しにあたっては、各自治体の負担が生じないよう国の責任において十分な財源措置を講じていただく必要があります。

大阪市としては、障がい者の自立と社会参加に向け、必要なサービスが十分利用できるような制度となるよう、国の検討状況を注視し、必要な要望を行なっていきたいと考えます。

(なかじますすむ 大阪市福祉局障がい者施策部障がい福祉課長)