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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2013年7月号

1000字提言

ボランティアはさせてもらうもの

萱嶋陸明

昨年3月に大分駅の高架化が完成し、唯一の改札口の正面に食専門の「豊後にわさき市場」が設置されました。その中心となる店舗の一角一坪を無償提供したいとのお話がありました。年間休みなし、一日12時間営業を守る必要があります。悩みましたが、代表をしている大分県の高次脳機能障害者家族会で利用することにしました。目的は高次脳機能障害への啓発活動と無料相談、そして、当事者手作りの革製品の販売です。

問題は、店番のボランティアの確保でした。一日3交代、年間延べ1,095人が必要です。不可能と思っていたのですが、オープン初日から、次々と応募者があり、一度も穴を空けることなく現在も続いています。

特に元気をもらい、支えてくれたのは、大分大学教育科学部福祉学科の女子学生8人でした。マスコミ取材があった時に、後藤優実さんが「…このようなボランティアをする機会を与えてくれた家族会に心から感謝しています」と答えているのを聞いて目頭が熱くなりました。ボランティアされる側がボランティアしている側から感謝されるなんて聞いたこともない出来事でした。全員が4年生で、今年3月が卒業でした。

卒業式当日に、8人全員で真っ先に大分駅の店に立ち寄ってくれて、お礼の言葉をみなさんからいただきました。1年間、何かを犠牲にしてボランティアに参加してくれたことに感謝することばかりだったので、言葉もないほど感動してしまいました。彼女たちの優しさはどこで育まれたのか、他のボランティアの方々にも大きな影響を残してくれたと思います。

卒業を前に、担任の工藤修一先生に全員が店番したことの感想をメールしたのを転送してもらい読ませていただきました。勝部紗子さんが「…違う障害をもつ人が、自分自身の話をしてくれたり、障害の説明を聞いてもらえたりで本当にやりがいがありました。ボランティアは「やってあげるもの」ではなく、「やらせてもらうもの」だと気付いたことが最高の経験になりました」とすごいことを書いてあることに驚きと感動、そして感謝の気持ちで一杯になりました。

障害をもつ当事者家族になってから、苦しいことも多いのですが、それ以上に、それまでの人生で出会うこともなかった多くの優しい人々と交流することができて、最高の生き方をしていると感じています。

若い学生が「ボランティアはさせてもらうもの」と言ったことに私も教えられました。これからも家族会活動を継続する大きな礎になったと思います。

(かやしまむつあき 脳外傷友の会「おおいた」)