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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2013年7月号

知り隊おしえ隊

大阪はええとこだっせ!

赤尾広明

銀座の屈辱!?

『五体不満足』の著者で知られる乙武洋匡さんが銀座の有名イタリアンで入店を拒否されるという、ある意味では衝撃的な“事件”が発生しました。お店側の対応等の悪さを乙武さんが自身のTwitterで一方的に批判したものだから、この事件は瞬く間に拡散し、賛否両論さまざまな意見が飛び交いましたが、個人的には「心のバリアフリー」を訴え続けてきた乙武さんらしくない振る舞いだったように思えてなりません。

お店側の事情を考えると、予約した段階で「車いすでも大丈夫ですか?」「階段は抱えてもらえますか?」等、事前に確認しておいた方が良かったんじゃないかな。ま、どうあれ、障害者差別解消法が議論される中で、何が差別で、どのような場合に合理的配慮が適用されるのか?とても分かりやすい事例になりました。

折しも広島で開催されていた「お菓子博覧会」では、電動車いす使用者の入場が拒否されるという前代未聞の大事件があったばかりですが、僕がただ単純に思うのは、せっかくの楽しいデートも入店を断られてしまったら雰囲気も台無しになるということ。だから、お客としてもできるだけ事前にお店側の情報を収集し、「○○をしてほしい」など個別性の高い要望があるなら、そのこともあらかじめ相談しておけば、お店側も知恵と工夫で何とかしてくれることもあるんですよね。

お店側はホスピタリティの精神で料理を楽しんでもらおうとするし、お客としてはおいしい料理を食べて気持ちよくお店を後にしたい。そのためにはどちらかが一方的に何かを求めるのではなく、お互いの心がバリアフリーであることが必要なんじゃないでしょうか。バリアフリーは障害者だけの問題ではなく、すべての人にとって必要なこと。今回の騒動がバリアフリーに無関心な人たちの意識の喚起につながるといいのですが…。

進化する大阪

前置きが長くなってしまいましたが、ここからは、どんどん進化していく大阪の最新情報をお届けします。

まず、大阪ではここ数年で“キタ”と呼ばれている梅田周辺エリアは大きく変貌を遂げました。うめだ阪急本店の全面的なリニューアルをはじめ、西梅田はブリーゼブリーゼという商業施設がオープン。茶屋町には、売り場面積日本最大のMARUZEN&ジュンク堂書店が入ったチャスカ茶屋町がオープンし、JR大阪駅は、大阪ステーションシティという名称で三越伊勢丹やルクア、映画館の入った大型商業施設が駅ターミナルと直結するカタチでオープンしました。

最新のトレンドが、今年4月末にオープンした、グランフロント大阪という最先端の技術を取り入れた施設です。うめだ阪急の改修とステーションシティ、グランフロントの完成によって周辺の交通アクセスが円滑となり、とても便利になりました。

そして今、最も大きな注目を集めているのは天王寺です。2014年春にあべのハルカスがグランドオープンの予定で、地上60階は横浜ランドマークタワーを超えて日本一高いビルとなりますし、近鉄百貨店の床面積は百貨店として日本最大となります。この春に完成した阿倍野歩道橋はエレベーターが設置され、JR天王寺駅や天王寺MIOプラザ館、あべのハルカス、Q'sMALLと接続しているので、利便性が高まりました。

ホスピタリティ精神あふれるお店

冒頭に書いた乙武さんの入店拒否事件は、実はそんなに珍しいことではないと僕は思っています。なぜなら、いかんともしがたい物理的な構造であれば、心のバリアフリーをもってしても対応が難しいことはどこかで認めざるを得ないと思うからです。それでも、お客である私たちが不快に感じないようなおもてなしをしてくれるお店もあります。

これは僕の経験ですが、たとえば、入り口に高めの段差があって入店が困難なイタリアンでは、お店の前の駐車場にイスとテーブルを持ってきてそこで食事をさせてくれました。また、スロープ替わりの板状の物を必死で探してくれたところもありました。厨房のスタッフ全員が手を止め、車いすを抱えて段差を乗り越えたこともあったし、次回からは、気軽に来店できるようにとスロープを作ってくれたお店もありました。車いすでは、狭くて動きにくいお店では、テーブルで食事中のお客さんをイスごといったん外に出てもらい僕が通れるようにしてもらったこともあります。車いすというだけで門前払い的に入店拒否するのは差別的な扱いで不快ですが、でも、世の中そんなお店ばかりではありません。

大阪のオススメスポット

観光ガイド的な大阪のオススメスポットといえば、USJか海遊館くらいなのですが、大阪といえば食い倒れの街。もしUSJに行かれるなら、最寄り駅とUSJを結ぶユニバーサルシティーウォーク内のたこ焼きミュージアムにぜひ足を運んでみてください。老舗から創作まで個性豊かな大阪のたこ焼き屋が5店舗集まっていて、粉モン文化を堪能できますよ。
http://ucw.jp/otm/

もし海遊館に行かれるなら、その並びにある天保山マーケットプレイス内のなにわ食いしんぼ横丁もオススメ。ここにもカレーの自由軒やオムライスの北極星、イカ焼き、お好み焼き、どて焼きなど大阪の有名人気店がズラリ。食い倒れるにはうってつけのスポットです。ついでに大観覧車も車いす対応なので、海を見下ろす眺望はgood(ぐっど)。
http://www.kaiyukan.com/thv/marketplace/kuishinbo/index.html

いずれのスポットも車いすでは特に問題なく利用できますが、個人的にお気に入りのお店と場所をいくつかご紹介します。

・大阪ステーションシティ

5階には時空の広場というイベント空間、10階の和らぎの庭と11階の風の広場は、水と緑と自然があふれる都会の癒しスポットにもなっています。

・ラデュレ

フランスで150年近い歴史がある超有名パティスリーが大阪三越伊勢丹の2階に関西初登場。落ち着いた雰囲気でゆっくりとくつろげるし、マカロン発祥のお店として有名ですが、何といってもフレンチトーストが絶品。一食抜いてでも食べる価値ありますよ。

・ブルガリ イル・カフェ

うめだ阪急の5階にあるブルガリとイタリアンがコラボしたカフェはインストアとしては世界初。店内はモダンでシックな雰囲気で、チョコレートもデザートもお店のコンセプトどおり甘い。さすがはブルガリだけあって、ラグジュアリー感あふれる一時(ひととき)を過ごせます。

・“R” RIVERSIDE GRILL & BEER GARDEN

大阪市役所のすぐ近くにある中之島公園内の韓国料理店。中之島バラ園を見渡しながら、川のせせらぎを感じながら食事をするのは心が安らぎます。テラス席が多数あるので車いすでも大人数でも問題ありませんし、屋根つきの場所もあります。

・GARB weeks

同じく中之島公園内にあるイタリアン。こちらもテラス席が多数で、大人数で賑やかにBBQも楽しめるし、各種パーティーなどでも利用できます。ロケーション的にも都会のど真ん中で、オープンエアを感じながら開放的な気分にさせてくれます。
http://www.garbweeks.com/

水都と呼ばれる中之島界隈は一昔前に比べるとすっかりキレイになって、12月には光のルネッサンスと題したイルミネーションが施され、そんな光に彩られた空間での食事は最高にステキです。

・ガストハウス44

ここまで紹介してきた梅田界隈から離れますが、大阪市営地下鉄御堂筋線本町駅から徒歩5分ほどで、オリックス劇場(旧厚生年金会館)にも近い庶民的な本場のドイツ料理が味わえるお店です。ドイツ料理の定番であるザウアークラウトをはじめ、ベルリン名物のアイスバイン(豚すね肉の煮込み)、シュペーツレ(手打ちパスタ)、自家製無添加のベーコンやハム、ソーセージなど手作りにこだわる本格派でメニューは多彩。厳選されたビールやワインを堪能できます。お店の入り口に2段ほど段差がありますが、声をかければオーナー手作りのスロープを設置してくれます。残念ながら車いすで利用できるテーブルはテラスの1席のみですが、アンティークな内装に本格的なドイツ料理が見事にマッチしていて、ぜひオススメ。
http://www.gasthaus44.jp/

NEW SPOT coming soon

大阪の進化はまだまだ止まりません。特に今、大阪北部にある吹田市のまちづくりが急ピッチで進められています。2年後には、Jリーグのガンバ大阪の本拠地として、4万人収容のサッカー専用スタジアムが完成する予定だし、エキスポランドの跡地にはショッピングモールに水族館、映画館、大観覧車など大型複合施設が開業する予定です。これから新たに作られるものだから、ユニバーサルデザインの観点を基に、すべての人にとって利便性が高く、安心安全な施設となるように今から要望しています。

今回取り上げたお店は、車いすにとっては段差も階段もないバリアフリーなので、いずれもオススメですが、落ち着いた雰囲気で友人たちと楽しめる、語り合える空間をコンセプトにセレクトしました。入店は無理だと最初から諦(あきら)めずに、まずは店員さんに一声かけてみるのがベターだと思います。

ぜひ、いろんな場所へ足を運んでみてください。

(あかおひろあき 大阪頸髓損傷者連絡会)