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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2013年8月号

アジアの仲間のパ和~!

内村恵美

9年前、私は初めて自立生活夢宙センター(以下、夢宙センター)に来て、自立生活センターや障害者運動のことを知った。夢宙センターに来る前の私は、障害の状態も軽く、一般企業で働いていたので、しんどいこともたくさんあったのに、それを差別やこの社会がおかしいと思うことなく過ごしていた。

夢宙センタースタッフになってもしばらくは、どうして施設がダメなのか、障害当事者が地域で生活する意味や大切さは何なのかということが、分からないでいた。

そんな時、夢宙センターの代表に「障害者がどんな暮らしをしているか見てくるか?」と言われ、名古屋にあるAJU自立の家のスタディーツアーinタイというイベントに参加させてもらった。

タイでは、村に住む頸椎損傷の女性のお宅に訪問させてもらった。家に入る前にため池があり、石のブロックの橋を渡って家へ入らないといけなかったが、ツアーに参加していた人が電動車いすで渡ろうとすると、石が割れてしまい、渡ることができなかった。

私は、少し歩くことができたので、歩いて石の橋を渡って家に入ると、病院で使う車いすがあったが片方の後輪がなく、ボロボロの車いすが置いてあった。

家の中では、その女性が板の間に薄いマットを敷いて座っていて、「夫は仕事へ行かないといけないから、一日中、ここで座って生活している」と泣きながら話してくれた。

私は、この時に日本とあまりにも違う生活にショックを受け、また悔しさが込み上げ、障害者運動の大切さや自身が障害をもって生まれてきたこと、今まで辛い経験をしてきたことの意味(障害者が生活しやすい社会に変えていく者であること)に気づき、夢宙センターでずっと活動していきたいと思った。

夢宙センターでは、兵庫県にあるメインストリーム協会、東大阪市にあるぱあとなぁと一緒にアジア支援を行い、ダスキン・アジア太平洋障害者リーダー育成事業の元研修生たち(韓国・台湾・モンゴル・カンボジア・ネパール・パキスタン)と「志(こころざし)ILインターナショナル」というネットワークを作り、アジアの仲間と一緒に活動をしている。

アジアには、日本のようにたくさんの自立生活センターはなく、活動する仲間も少ない、車いすも介助制度も年金もなく、外に出ることも難しい障害者がたくさんいる。私は、まだ韓国・台湾・モンゴルしか行ったことがないが、韓国・台湾では、野宿をしながら街を練り歩き、障害者の人権やバリアフリーを訴える旅「TRY」に参加した。

2007年韓国TRYでは、みんなと一緒に声を出して、歩きながらできるだけ多くの人に伝えなければと思いながら歩き、初めての経験がたくさんあって自信につながり、自分のためのTRYだったと思う。

2009年台湾TRYでは、日本の実行委員長をさせてもらい、準備から台湾へ行き、台湾の当事者の生活状況を聞いた。経験を奪われ自信のない当事者がたくさんいる中で、周りの人に伝えることも大切だけど、まず、当事者たちが自ら声を出して行動することが大切であることを当事者自身に気づいてもらうよう関わりながら歩くことが大切と思った。

また、ダスキンのアジアの研修生を毎年夢宙センターでは受け入れ、障害者運動や仲間の大切さ、障害者が楽しく生活する大切さなどを研修で行うが、私がアジアの当事者と関わる中でいつも思うことは、私には運動してきた先輩がいて、すでにたくさんの仲間がいることだ。

研修生たちは、帰国すると自身がリーダーとなり、仲間を集めて活動をする。それは、障害をもつ仲間を想い、勇気と強さと優しさがすごく必要なことだと思う。私は逆にいい刺激をもらい、研修生たちをすごい!と思っている。

アジアの当事者とつながり、互いに仲間であることを感じ合いながら、「諦(あきら)めることなく」障害者運動を共に活動していきたいと思う。


プロフィール(うちむらえみ)

障害はシャルコ・マリー・トゥース病。自立生活夢宙センターのスタッフとなり9年目。障害者の自立支援を中心に活動している。全国自立生活センター協議会のユースパワーネット(自立生活センターの若い障害当事者スタッフのグループ)のメンバーとしても全国の仲間と一緒に活動している。自立生活も8年目を迎え、介助者のサポートを受けながら、お菓子作りや旅行など自身の生活も楽しく過ごしている。