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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2013年9月号

時代を読む47

障害者基本法の成立(1993年)

今でこそ、精神障害者は障害者であると当たり前のように言われます。障害者総合支援法(2013年施行)・障害者虐待防止法(2012年施行)・障害者雇用促進法(2013年改正)にも、障害者の定義のなかに精神障害者が含まれています。この表記に先鞭をつけたのが、1993年成立の障害者基本法(正確に言えば、1970年成立の心身障害者対策基本法の改正です)で、精神障害者を身体障害者や知的障害者と並んで法の対象に位置づけました。かつての「肢体不自由、視覚障害、聴覚障害、平衡機能障害、音声機能障害若しくは言語機能障害、心臓機能障害、呼吸器機能障害等の固定的臓器機能障害又は精神薄弱等の精神的欠陥」という心身障害があるため、長期にわたり日常生活または社会生活に相当な制限を受ける者という障害者の定義を改めたのです。

また「障害者の自立と社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動への参加を促進すること」を法の目的とし、「すべて障害者は、社会を構成する一員として社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会を与えられるものとする」という基本理念が規定されました。

さらに、障害者施策を総合的かつ計画的に推進するために、国に障害者のための施策に関する障害者基本計画の策定を義務づけましたし(ただし、既存の計画を基本計画とするという附則がありました)、都道府県や市町村にも障害者計画策定の努力義務を課しました。

少し遡(さかのぼ)りますが、これらの改正背景には「完全参加と平等」がテーマである1981年の国際障害者年がありました。経済大国となった日本は、障害者問題の解決という課題を行わないと国際的信用問題になると判断して、国は、国際障害者年に障害者に関する施策の基本的事項の審議開始や国際障害者年推進本部の総理府(現内閣府)設置などを行いました。その課題の具体化が障害者基本法成立であったといえます。

障害者基本法成立は、その後の障害者施策推進の基盤となったため、さまざまな変化が生じる契機となりました。精神障害者関係では、精神保健福祉法(精神保健法改正)が成立(1995年施行)しましたが、そこには精神障害者の「社会復帰の促進及びその自立と社会経済活動への参加の促進のために必要な援助」という障害者基本法の基本理念と重なる内容が法の目的に加わりました。また、幾度かの障害者基本法改正によって、法の目的の見直し、精神障害に発達障害を含むという障害者定義の見直し、障害者計画の策定努力義務が策定義務に変わったこと、差別の禁止条文の追加等が行われました。

心身障害者対策基本法の時代とは隔世の感があります。

(住友雄資(すみともゆうじ) 福岡県立大学教授)