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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2013年9月号

WAM助成の役割とこれから

WAM(独立行政法人福祉医療機構)

WAM(独立行政法人福祉医療機構)は、社会福祉施設や医療機関などの建築資金を融資する政府系の機関が統合し、昭和60年に設立された旧社会福祉・医療事業団を前身として、平成15年度から独立行政法人としてスタートした厚生労働省所管の法人です。

融資事業に加え、平成2年度に政府出資の基金による助成事業が創設されて以来、20年以上にわたり、民間団体が行う福祉活動に対して助成金による支援を行なってきました。平成22年度に、新たにWAM助成(社会福祉振興助成事業)に生まれ変わり、助成金の財源も基金の運用益から国の一般会計となったことで、助成対象テーマをより喫緊な福祉課題に絞り、メリハリのある支援を行うよう努めています。

障害分野への支援

基金の運用益を財源に助成を行なっていた時期には、高齢者福祉、子育て支援などとともに、障害者プランなどの国の施策動向を踏まえた在宅福祉等の推進、スポーツを通した障害者の社会参加の促進などに支援してきました。また、平成16年度には福祉医療機構法を改正して基金の一部を取り崩し、日本におけるスペシャルオリンピックスの開催など、障害者スポーツ国際大会の開催・選手派遣に関する活動について、特に必要な助成なども行いました。旧長寿・子育て・障害者基金事業で支援した各地の助成事業は、20年間で約11,000事業、実に640億円あまりに及びます。

平成22年度に新たな助成制度となった後は、特に孤立防止、貧困・格差対策、虐待防止などの課題に重点を置いて助成をしていますが、たとえば、障害のある方が地域の中で孤立しないようNPOやボランティアなどが民間の温かみのある活動で支える事業、軽度の発達障害のある方や医療的ケアが必要な方々とその家族など、既存の制度ではどうしても十分な支援が行き届かない皆さんを、民間の創意工夫ある活動で支える事業などに積極的に助成しています(表を参照)。

WAM助成における障害分野の代表的な助成テーマ

  • 配食や買い物、移動支援、見守り、居場所づくり、心のケアなどにより、高齢者・障害者などの社会からの孤立を防止する事業
  • 障害の特性に応じた日常生活及び社会生活の支援に関する事業
  • 高齢者・障害者の特性に応じた就労支援に関する事業
  • 虐待や消費者被害の防止、成年後見等高齢者・障害者の権利擁護に関する事業
  • 病院や施設を退院・退所する高齢者や障害者の在宅・地域移行支援事業
  • 成育過程において支援を受けられなかった発達障害者(成人)に対する支援事業
  • 引きこもり青年や軽度の発達障害者等の自立生活に向けた就労前の支援に関する事業
  • 難病や終末期医療等の重度な状態にある者とその家族の支援に関する事業
  • たんの吸引等医療的ケアの必要な障害児・者とその家族の支援に関する事業
  • 障害者スポーツの育成・強化に関する事業
  • スポーツを通じた障害者の社会参加等を促進する事業

また、東日本大震災の発生に伴い、これらの事業を被災された方々の支援のために実施される場合も重点的に助成しています。大規模な災害においては、子ども、高齢者とならんで、障害のある方々も特に個別性の高い、温かみのある支援が必要となります。

WAM助成では、こうしたNPO、ボランティア団体などによる民間の福祉活動に積極的に支援することとし、平成25年度は286事業、総額約15億円の事業に対して助成することとしています。

民間の活動と連携の重要性

高齢化や少子化などの社会的、経済的な環境変化が急速に進行し、地域における福祉ニーズも複雑化、深刻化する状況にあっては、単独の機関や団体が課題を解決していくことはもはや不可能となりつつあります。

行政、福祉施設、医療機関などのほか、NPO、ボランティア、自治会などの住民組織、企業、商店街、教育機関、そして当事者の皆さんなど、さまざまな地域の主体が個別に活動するのではなく、それぞれの役割や特徴を活(い)かして協働、連携していく中で、相乗的に地域全体の福祉力の再生や向上を図っていくことが求められています。特に、障害のある方々が地域で安心して生活していくためには、障害関係諸施策の充実はもとより、時には制度や機関の壁を越えた支援が求められ、民間の柔軟な活動に期待が寄せられていきます。

WAM助成では、政策の下支えや後押しとなるような柔軟な活動に対して積極的に助成することとあわせて、地域の中の福祉課題やニーズを身近な生活の中で捉え、それを社会化し、協働につなげ、問題解決に向かう、NPOなどをはじめとした民間の活動を大きく推進させる役割が求められていると考えています。

WAM助成の特色を活かした支援を

一方で、国の財政状況が厳しくなるなか、WAM助成の予算額についても年々減少しています。限られた助成金の効果を最大化するためにも、WAM助成では前述のような多様な担い手と連携して助成事業を実施することを推奨しており、複数の団体と連携して、事業効果を高める事業計画でご応募いただく助成区分を設定しています。

また、助成事業の事業評価を実施し、助成の効果を検証しています。特に、注目すべき事業についてはヒアリングによる評価を実施することで、助成事業の具体的な成果・効果とともに、現場の抱える課題をつぶさに把握することとしています。評価結果については、ヒアリングを受けた助成先団体にもフィードバックすることで、以後の活動や団体運営に活かしていただくこととしています。

このように、単に助成金を配分するだけにとどまらず、助成先団体の皆さまをはじめとした実際の地域、現場の声をお聞きして、助成制度のPDCAや国への提案に反映していくという、WAM助成ならではの位置づけや特色を活かし、より一層お役に立つ助成制度を目指してまいります。