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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2013年9月号

助成財団センターの活動

田中皓

1 設立の経緯

国際連合では1981年を「国際障害者年」と制定し、1982年には「障害者に関する世界行動計画」を決議、その計画の実施に向け1983~92年を「国連・障害者の十年」と位置づけ、各国が課題解決に取り組むことにより、障害者への認識や施策が大きく前進していくことになった。

時を同じく1983年頃、市民社会や障害者等に関する課題解決の一翼を担う、わが国の民間非営利活動(特に助成財団や助成団体(以下、助成財団等という))が欧米に比して著しく弱体であることが指摘され、一部の助成財団の間で研究活動が開始された。

一方、トヨタ財団を中心として、わが国には全く整備されていなかった助成財団等に関する資料を収集し公開することが重要との認識から、資料の公開センター設立構想も検討されていた。

このような背景のもと、1985年11月にトヨタ財団、三菱財団、日本生命財団等の13財団が発起人となり、任意団体として「助成財団資料センター」が設立され、助成財団等の情報に関する図書館的な機能を中心とした事業がスタートした。

その後、法人格を取得するため、60の助成財団(社会福祉系・障害者福祉系11財団を含む)や民間企業300社から、合計約5億円の寄附を受け、1988年4月1日に総理府の許可を得て「財団法人助成財団資料センター」が純民間組織として設立された。

1996年7月、法人名称から「資料」の文字を取り「助成財団センター」と改称し、助成財団の支援を積極化し社会ニーズに応え得る体制を整えた。2009年9月には、公益法人制度改革で制定された新しい法律に基づいた「公益財団法人」としての認定を受け、新たなスタートを切っている。

2 目的と事業

わが国の助成財団等は戦前から活動を行なってきているが、戦後はわが国の復興に伴い、企業が中心となった助成財団の設立が1990年頃のバブル崩壊まで続いた。社会福祉系の障害者支援を行う助成財団も1960年代から1980年代に設立された財団が多い。助成財団センターは、自ら助成事業に携わることはなく、助成財団等に関するわが国唯一の中間組織として、次の3事業を柱としている。

1.「情報センター」としての事業

全国の助成財団等に関するデータを集約・整理し、その情報をホームページや出版物を通して社会に提供し、助成金を必要とする側と助成金を提供する側の橋渡しの役割を担う。

2.「支援センター」としての事業

助成団体等の運営や事業に係る研修やセミナーを通して人材育成を図り、社会ニーズに応え得る助成財団としての量的・質的向上に努める。

3.「広報センター」としての事業

助成財団等の活動やその成果等に関する情報を社会に発信し、助成財団等による社会貢献の実情について広く理解の促進に努める。

以上により、助成事業全般の活性化を通してわが国の民間公益活動の発展、共生社会の実現に寄与していくことを目的として事業に取り組んでいる。

現在、助成財団センターが有している約1,600の助成財団等のデータの中で、障害者に係る助成を明確に掲げている助成財団等は約50法人と推定されるが、その内容は研究助成、当事者や支援者活動への助成、活動成果に対する褒賞、社会参画・就労支援等に対する助成、物品購入に対する助成等、多岐にわたっている。従って、助成を申請する場合には、個々の助成財団等が実施している助成事業の中身を見極めて申請することが大変重要となる。

3 助成事業の新たな展開

助成財団等による個別の団体や個人への活動助成、研究助成、褒賞等は大変重要な事業として、これまでにも大きな成果を上げてきており引き続き継続的かつ強力な取り組みが必要である。

一方、社会を大きく変革させるような長期的な取り組みや大型のプロジェクトに対する助成も社会ニーズとして顕在化しており、これらの大型テーマに対する助成に助成財団センターが果たす役割は大きくなってきている。

その一例として、助成財団センターが調整役となり、複数の助成財団による日本障害フォーラム(JDF)への大型共同助成は、今後の助成の新たな在り方を示すこととなった。

この助成は、国連の障害者権利条約の制定に向けたアドホック委員会に参加する外務省の代表団に、当事者として参加するJDFのメンバーの情報保障に必要な費用を助成したものである。わが国の障害者団体が大同団結したJDFの積極的な取り組みの重要性に鑑み、障害者分野に関心の強い、キリン福祉財団・損保ジャパン記念財団・トヨタ財団・三菱財団・ヤマト福祉財団の5財団が共同し、条約承認までの3年間にわたり継続的に助成を実施した。その後、キリン福祉財団・損保ジャパン記念財団・ヤマト福祉財団の3財団は、権利条約の批准に向けた国内における条約内容の広報・情宣活動に対しての助成を継続しており、通算10年間にも及ぶ助成事業となっている。

このような事例は珍しいが、個別財団では難しい、しかしながら、わが国の社会を大きく変革していくような取り組みや活動に対して、複数の助成財団が共同して助成する取り組みを調整していくのも助成財団センターの大きな役割となっている。

助成財団センターは、わが国における助成事業の活性化と質の向上への取り組みを通して、民間公益活動の発展、寄附文化の醸成を含む誰もが住みやすい共生社会の実現を目指し、これからも皆さまと一緒に事業を推進してまいります。

(たなかひろし 公益財団法人助成財団センター専務理事)