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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2013年9月号

工夫いろいろエンジョイライフ

実用編●分かりやすさの中にもさりげなく区別、他●

提案者:谷口真大 イラスト:はんだみちこ

谷口真大(たにぐちまさひろ)さん

23歳。筑波大学附属視覚特別支援学校の中学・高等部を経て、今春、奈良県立大学観光学科を卒業。好きなことは旅行と読書、そして走ること!現在は、今年4月にオープンした「ダイヤログ・イン・ザ・ダーク大阪」で働いています。

私たちが日常生活においてちょっとした工夫をする時、できるだけ特別なものを使わないということが、一つポイントになるのではないでしょうか。今回は「さりげなさ」や「考え方」のちょっとした工夫のあれこれをご紹介します。


分かりやすさの中にもさりげなく区別

視覚障害者が旅先でホテルなどに宿泊した際、自分の部屋の覚え方として、エレベーターから何番目か、などとドアの数を数えている方も多いのではないでしょうか。私もその方法はよく使いますが、ドアノブに輪ゴムをつけて目印にしています。ドアノブのくぼんだところにつければ目立つこともありませんし、他の人の目についたとしても何の疑問も感じさせません。輪ゴムは身の周りにあるアイテムです。貧乏性な私は、お弁当の輪ゴムを手首につけたまま、ということもしばしば。これはシャンプーや歯ブラシなど種類や他の人の物とさりげなく区別したい時に使えます。手間もかからず、何よりこの「さりげなさ」が、他の人の目に触れても何の違和感も感じさせないからこそ、動かしたり、取り外される心配がないのです。


視覚障害者同士での一味違った焼肉

「焼肉を楽しむ」と言えば、目の前で香ばしい香りを漂わせながらジュージューと音を立てて油をはじかせる楽しいひとときを想像される方が多いでしょう。しかし、視覚障害者だけで焼肉となると、ためらわれがちになります。他にも楽しいことがたくさんあるということはもちろんですが、やはり焼け具合や火傷を危惧して気が進まない人もいるようです。

しかし、そこに一つ工夫をすることで、仲間同士意思の疎通をしながら、視覚障害者だけで焼肉を楽しんでいる人もいます。

視覚障害者に物の位置などを説明する際に、時計の文字盤に見立てて行う「クロックポジション」という方法があります。それをそのまま応用するのみ。焼肉の鉄板を時計の文字盤に見立てて「12時にカルビ!」などという会話が飛び交うのです。複数の仲間でテーブルを囲んでいる時などは、どこを12時にするかさえ統一しておけば、後は肉を置いた人が逐一場所と種類を報告することによって、視覚障害者だけでの焼肉という、ちょっぴり未知でスリリングな楽しみ方もあるのです。


推測することでよりスムーズに、より快適な車内に

疲れているけれど、空いている座席を探すのも億劫だし…、という経験をされたことがある視覚障害者も多いと思います。外出先からの帰りや夕方のほどほどに混雑した電車で、ちらほらある空席を探す時が意外と悩む瞬間だったりします。電車の込み具合は音でおおよそ判断できますが、どこの席が空いているかまではなかなか分からないものです。だからと言って周囲の人に空席を尋ねるのも、それで無理に譲らせてしまってはという気持ちが先に立って、なかなか声をかけられなかったりします。

そこで、一つ考え方に工夫をしてみましょう。人が最後の最後まで座らない座席の場所に的を絞るのです。地下鉄のような横長の座席の場合、誰もいない状態から人はまず端に座ります。端が埋まるとスペースを一人分飛ばし、また一人分…というふうに、距離を空けた状態から徐々に埋まっていきます。逆を返せば、端から2番目の座席は最も最後に埋まるポイントなため、ある程度座席が埋まっていても、そこが空席である可能性が高いのです。それが確実かどうかは杖で探るまで分かりませんが、考え方の一つの基準としておくと、役に立つ時があるかもしれません。