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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2013年10月号

生活実態を踏まえた検証と修正の5年にしよう

日本障害者協議会(JD)

今回の「障害者基本計画」は第2次計画と比べて、内容面での差別禁止の強調、難病のある人への支援の具体化、策定過程面での当事者参加の一歩前進など、評価すべき点もある。しかし、障害者基本法、障害者権利条約、「総合福祉部会」の「骨格提言」、自立支援法訴訟団との「基本合意」などの基準に照らすと多くの問題点がある。JDは次のような点の改善を求めた。

1 政策・計画決定への障害当事者の参加の保障

改正障害者基本法第10条では施策策定における障害当事者意見の尊重が規定された。基本計画ではその具体化が求められる。

そこで、「知的障害者、精神障害者、発達障害者、失語症者、高次脳機能障害者などを含めた障害者が、国及び地方の審議会等に参加し、平等に意見を表明し貢献できるよう適切な情報保障その他の配慮の在り方を検討し、開発し、普及する。」とすべきである。

2 データの収集と活用

この点はこれまでの延長線上では済まず、全く新しい位置付けのもとで行われなければならない。障害者政策委員会も地方の類似機関も計画の実施状況を監視し、必要に応じて勧告をする責任がある。施策の評価・検証・監視がどれだけ進められるかが、新しい基本計画の5年間の最大の課題であろう。

これまでの評価は基本的には予算やサービス件数による評価で、ほぼ必ず「着実な前進を見た。」という総括がなされてきた。しかし監視には、予算・サービスのデータ以上に、アウトカム(効果・結果)のデータが必要とされ、障害者の生活実態の変化、障害のない市民との格差、その性・年齢・障害・地域別データが必要とされる。

そのために「生活のしづらさ調査」の活用、施設・病院の障害者調査の方針を含むデータ収集計画が必要とされる。

3 生活支援分野の補強

〈相談支援体制の構築〉

相談支援体制の拡充のために設置基準を定め、財政的な責任も担い、専門職が配置できるものとする。サービス利用計画の出来高払い制を見直し、事業所からの独立を図る。

〈在宅サービス等の充実〉

グループホームの開設には設置者負担が大きすぎる。またアパート利用者への家賃補助も必要。

〈障害児支援の充実〉

1.冒頭に、まだ詳細不明の「子ども・子育て支援法に基づく給付」等が記載されることは不適切。

2.児童発達支援センター(医療型を含む)の配置計画の明示を。

3.障害児通所支援には児童相談所の関与がなくなったので、市町村による相談支援の整備が特に必要。

4.平成24年4月に実施された新たな障害児支援体系の検証がまず必要。

5.「障害児療育施設」の職員体制の充実。特に、「医療型障害児療育施設」の地域医療センターとしての位置付けの明確化と(人口エリアを定めた)計画的な配置。

〈サービスの質の向上〉

国の基本指針は最低基準とする。

4 保健・医療分野の補強

〈精神保健・医療〉

1.精神病床の人員配置を一般病床と同等以上に引き上げる。

2.医療保護入院の際の権利擁護の仕組みの検討、家族の同意の廃止。

3.地域の支援者やピアサポーターが精神科病院に関与できる仕組みの創設。

4.精神病床を閉鎖していく計画を。

5.精神医療審査会に当事者・家族を構成員とする。

6.精神疾患の重要性を踏まえた基本法の検討。

7.退院後の地域生活を支える保健・福祉の訪問チームの実現。

〈障害の原因となる疾病等の予防・治療〉

乳幼児健康診査から保健指導の時期の事業(親子教室など)の法定化。

5 教育の財政措置

近年の特別な教育を求める児童生徒の増加により、教室不足など著しく悪化している教育環境の改善が求められる。また「災害発生時における利用等の観点」のみならず、共に学ぶための前提として学校施設のバリアフリー化が必要とされ、具体的数値目標の設定と財源措置の明記が求められる。

6 雇用・就業分野の補強

多様な就労の場の実態を把握・検証し今後の就労支援の在り方を検討すること、通勤支援や事業所内介護、就労移行支援事業による雇用継続支援期間の延長、ダブルカウント制度の再検討、などを求めた。

7 成年後見制度の見直しを含めた検討

8 障害の表記の継続的な検討

障害者基本法改正で、社会的障壁の関与を含めた障害理解が示された。これは第二次大戦後の日本の障害者施策史上の最大の障害(者)観の転換といえる。この認識を各国政府に求めた障害者権利条約がまもなく批准される。

このような今日の時点こそ、環境の重要性を含めた「障害とは何か」を全国民が問い直す絶好の機会であり、その国民的議論のきっかけを表記問題が生み出してくれる。政府はこの点の活発な議論を呼びかけるべきである。また、平等な表記の使用を保障した上で好まれる表記使用の動向を確認するために「碍」の常用漢字化を検討すべきである。


※詳細版をJDホームページで公開しているので、こちらもぜひお読みください。
http://www.jdnet.gr.jp/opinion/2013/130902.html