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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2013年11月号

当事者からの声

軽度外傷性脳損傷の課題

斎藤洋太郎

交通事故やスポーツ事故などの際、受傷後の意識障害が軽度でも、外傷性脳損傷(TBI)が起きる。WHOは2004年に、軽度TBI(MTBI)の定義をつくり、TBIの予防を呼びかけている。

軽度とは、受傷後の意識喪失30分以内、外傷後健忘、意識の変容などを指す。受傷後の意識障害が軽度でも「軽症」とは限らない。MTBIの中に、重症のMTBIが含まれ、労務困難なため、生活保護を受けている被災者もいる。

TBIにより精神面では、高次脳機能障害やてんかんなどが起きる。また、TBIによる身体性機能障害としては、運動まひ・知覚まひ・膀胱まひ・脳神経まひが起きる。

MTBIは、画像に見える場合と、そうでない場合とがある。他方、現行の精神・神経系統の労災障害基準が画像偏重であるため、MTBIのため働けなくとも、障害等級第十四級(通常労務可能に相当)とされてしまう。交通事故被害救済も、労災基準に準拠する。

そこで、友の会としては、画像に見えない場合の判定方法について、次のように要望している。

1.体系的・他覚的な神経学的検査によって、末梢神経損傷では起こりえない、複雑多岐にわたる異常所見が把握されれば、中枢性の器質的障害にほかならないから、TBIと診断すること(画像に見えずとも、身体性機能障害をはじめとする異常所見が把握されれば、TBIと診断できるし、「末梢損傷」では誤診である)。

2.1を前提として、受傷後に、WHOのMTBI定義を満たす軽度の意識障害が発症したなら、その事故とTBIの因果関係を認めること。

国会と地方議会(東京都議会と多くの区議会、神戸市議会など)からの働きかけを受け、厚生労働省は2013年6月に通知を出した。その内容は、WHOの定義を有用とし、画像に見えずとも障害等級第十四級を超える可能性があるとする厚生労働科学研究を踏まえ、該当事案を本省協議するというものである。

友の会はさらに、前記1・2に沿った本省協議事案の認定、ひいては1・2の方法を取り入れ、労災基準を改正することを求めている。

また、交通事故被害の医療については、国民皆保険の趣旨に反する現状があると考え、治療期間や、障害認定などの判定を国が行うべきだと考えている。

(さいとうようたろう 軽度外傷性脳損傷友の会事務局長)