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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2013年12月号

参加者の報告

開発への当事者参加

小林昌之

「障害と開発」研究の業務の一環で、国連のハイレベル会合を傍聴する機会を得た。聴覚障害当事者である同僚と一緒の参加だったので、自然と情報アクセスと障害当事者の参加にアンテナが向かった。

「障害と開発」をテーマとするハイレベル会合だけあって、情報アクセシビリティに力を入れていることは目に見えた。傍聴者用のオーバーフロー会場に設置された巨大スクリーンには、本会場の討議の様子がリアルタイムで映し出された。そこには、聴覚障害者の情報保障のために、国際手話の通訳が画面の6分の1ほどを占める四角いワイプで挿入され、画面下4分の1を区切って英語のキャプション(3行)が流された。

その画面をとおして目を引いたのは、中国代表のスピーチであった。報告者は中国障害者連合会トップの張海迪主席であった。ほとんどの国のスピーチが非障害者によってなされるなか、障害当事者に大役を担わせた中国は、会議のポイントを押さえた外交上手だと感心させられた。米国も同様に、世界銀行と国務省の顧問を務めたジュディ・ヒューマン氏を傍らに座らせ、障害当事者の参加をアピールしていた。

そうした意味では、日本政府がタイ政府などと共催したサイドイベントにおいて、障害当事者を日本の報告者として出した意義は大きい。サイドイベントそのものも、国会議員、国連特別報告者、研究者などとして第一線で活躍する障害当事者を前面に打ち出すものであり、当事者参加の重要性を少なからず各国に示すことができていたように思える。

(こばやしまさゆき アジア経済研究所主任調査研究員)