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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2013年12月号

ワールドナウ

タイ・チョンブリ県自閉症保護者の会センターの活動

アラヤー・デンセーン

私の名前はアラヤー・デンセーン、チョンブリ県自閉症保護者会とチョンブリ県自閉症保護者の会センターの代表を務めています。

息子は自閉症と両耳重度難聴の重複障害者です。息子は感情障害もあり、話す聞く等の簡単なコミュケーションすら難しく育児は大変困難でした。子育ては障害児を持つ保護者同士で相談したり、問題や経験の情報交換や共有をして乗り越えてきました。このような状況は障害児を抱えるどのご家庭も同じだと思います。

私たちの家庭の場合は、小学校の時は聾唖学校に自閉症児の受け入れ実績がないことから、個人的に先生を雇用することを条件に受け入れていただきました。しかし、中学校からは近くに自閉症児を受け入れてくれる学校や教育機関が無かったことから、障害者のための職業訓練学校を持つ財団や、自宅から140キロも離れたバンコクの自閉症財団に何とか1年間努力しながら通いましたが、経済的にも体力的にも限界を感じ、通学をあきらめた経緯があります。

タイにも障害者のための学校はあります。しかしその数は十分ではなく、就学したくてもできない障害児が数多くいます。現在、チョンブリ県自閉症保護者会に登録している自閉症児133人も受け入れ先のない子どもたちです。私たち夫婦がそうであったように、子どもに教育の機会を与えたいと思っても、受け入れてくれる施設が無いことで、未来への希望を失うことは少なくありません。友人を含めた他の家庭も同じ問題を抱えている状況から、通える範囲内に障害児の受け入れ施設を作ろうと、センター設立を決意しました。

2004年に、政府が自閉症児や発達の遅れた子どもを持つ保護者のために、タイ全国を12エリアに分けた、特別教育地区12を発足し、エリア別の障害児者教育の推進と政府機関窓口が明確になりました。そして、全国自閉症保護者の会や全国自閉症財団からの協力もあり、チョンブリ県自閉症保護者の会センター設立に至りました。

センターの方針は、学校を含めて、支援サービスや受け入れてくれる施設機関が無く、自閉症と発達障害をもつ経済的に恵まれない家庭の子どもを優先することにしました。子どもが自分の力で最大限に生活できるように生活スキルの向上と、保護者が自閉症の子どものさまざまな問題に対応できるような研修指導や支援も行うことにしました。費用は無償とし、2012年4月1日にセンターがオープンしました。

当初、センターは約30平方メートルの建物をチョンブリ県シーラチャー郡に借りてスタートしましたが、子どもが増えたので、2013年4月に同県内のアンシラー郡に120平方メートルの建物を借りて移転し、現在に至っています。首都バンコクからは130キロほどの場所です。

センターは私立ですが、費用は無償のため、保護者には組織や運営に携わってもらっています。公的機関への登録と今後の支援をいただくためにISOも取得しました。活動日は、月曜から金曜日までの朝9時から午後3時までです。受け入れにあたっては、子どもの障害内容の認知と能力レベルを査定した上で、子どもと保護者にふさわしい研修や指導方針の設定をしています。

支援サービスの内容

1.日常生活に必要な最低限のスキルの開発。たとえば、コミュニケーション、食事、筋力の向上、社会的モラルの理解等

2.仕事にふさわしいスキルの開発。たとえば、調理、チーム作業等

3.社会活動の準備。たとえば、お金の使い方、買い物とお釣りのもらい方、命令指示の聞き方、礼儀とマナー

センターでは、日常生活におけるスキルの開発、教育指導や教育方法の開発、各種リハビリ、絵画教室、テコンドー教室を開いています。それ以外に、野外活動として毎週水曜日の乗馬セラピーと、今年10月からスタートした毎週木曜日の水牛セラピー、年間行事として果樹園等への遠足、軍施設へのキャンプ、センター内で制作したグッズ販売等を複数回行なっています。

絵画教室、リハビリテーション運動療法、テコンドー教室は、外部ボランティアの協力を得ています。乗馬セラピー、水牛セラピー等の野外活動は、タイ国軍の基地施設の無償サポートによって成り立っています。特に、水曜日のチョンブリ県軍施設での乗馬セラピーは、児童や保護者共にリフレッシュできる人気のイベント行事として定着しています。

現在、登録している子どもは4歳から23歳までの42人ですが、今も増加中です。しかし、毎日通って来る子どもは20人前後と半数にとどまっています。多くが収入の少ない貧しい家庭であること、障害をもつ子どもが理由で離婚した家庭が多いこと、家が遠くで通学費が負担であること、保護者同行でないと通学することができないこと、子どもに教育の機会を与えたくても生活のために仕事を優先しなければならない等が主な理由です。

センターでは運営費用に充てるため、子どもの手作りグッズをイベント等で販売しています。ハンドバッグや帽子、ワイヤーワークス(アルミ線を曲げて、車やバイクを作った物)やキーホルダー等の販売と液体洗剤の製造販売です。この収益の一部は保護者と児童に還元しています。

また行事によっては、県や国に申請し、予算の援助や各企業からの寄付もいただいて活動しています。2013年1月には、日本の(公財)損保ジャパン記念財団から、各養護学校とセンターの合同乗馬セラピー活動に対して海外助成金をいただくことができました。しかし、十分に賄える状況ではありません。

現在、シリキット王妃の水牛セラピープロジェクトで、チョンブリ県の軍内の施設への転居の案件があります。私立から国のプロジェクトに参加できることは大変ありがたいことです。しかし4月に転居したばかりで、保護者の通学費の負担がさらに大きくなるので、センターでも過半数の保護者の反対があります。長期的に見ると、大変好条件の話ですが、回答を保留している状況です。通学援助支援が目下の大きな課題の一つです。

またタイでは、養護学校や施設、各障害者団体、役所、病院などとの連携や情報の共有がないので、ネットワークづくりも今後の課題です。

将来的には、センターで障害児のショートステイや保護者が生活の糧を優先できるように、子どもの長期の預かりができる環境を整えていきたいと考えています。

タイ全国で、自閉症のセンターは20か所と言われています。私たちのセンターも設立して2年弱ですが、センターも活動が認められ、光栄にも2013年8月、ウボンラット王女より表彰状を授与され、テレビの皇室ニュースでも放映されました。ウボンラット王女のご子息は障害者で、プーケット島での津波事件で亡くなられた経緯もあり、福祉に積極的な王女様です。

今後ともセンターは、障害者とその保護者の支援を継続していきます。タイにお越しの際は、ぜひとも当センターのご見学をお願い申し上げます。

センターとの協力支援機関

1.チョンブリ国立病院

身体障害者の認定、知識の共有と障害者のセンターへの紹介と、スキルアップのリハビリ奨励

2.ブラパー国立大学所属病院

3.チョンブリ県の社会開発局

・各活動や行事への予算支給

・チョンブリ県身体障害者の生活開発促進の小委員会との連携

・障害者手帳の発行

4.全国健康保険事務局

・各活動や行事への予算支給

5.チョンブリ県厚生局

○本稿は、アラヤー・デンセーンさんのご主人(清水誠治さん)が日本語訳をしてくださいました。

○日本語での活動紹介は、清水さんの会社のWEBサイトhttp://gw.kohbyo.com/indexssan.htmlをご参照ください。