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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2014年2月号

知り隊おしえ隊

目や耳の不自由な友だちともいっしょに楽しめる共遊(きょうゆう)玩具

高橋玲子

「見えない者にとっては、おもちゃといってもその形や動きを確認したり想像したりできる貴重な教材です。年をとっても私はジャンボジェットやクレーン車などをおもちゃで確認しています。スカイツリーもパズルで確認しました。そんなおもちゃをつくってほしいです。」

筆者が働くタカラトミーグループに、視覚障害のある初老の男性から、こんなご要望をいただいた。

「おもちゃ」は子どもたちが楽しむものであると同時に、視覚障害のある人にとっては、さわれない世界を知るための大切なツールでもある。

「日本玩具協会」では、目または耳の不自由な子どもたちにも楽しく遊べるおもちゃで、一般市場向けに作られ販売されているものを「共遊玩具」と名づけ、「スイッチのONの側に突起を付けること」、「電池ボックスを開けるためのねじ穴の周囲にリング状の突起をつけ、触覚でも他のねじ穴と区別できるようにすること」、「識別が必要な色の違いをざらざら・つるつるなどさわっても区別できるようにすること」、「さわっても崩れてしまわないように工夫すること」、「おもちゃの印刷面に貼る点字(触図)シールを提供すること」、「光や振動も駆使して音が聞こえなくても楽しめる工夫をすること」など、緩いガイドラインを作成し、この20年余、その開発促進を試みてきた。

共遊玩具は識別しやすいように、可能なかぎり、そのパッケージに、目の不自由な友だちともいっしょに楽しめるおもちゃには「盲導犬マーク」、耳の不自由な友だちともいっしょに楽しめるおもちゃには「うさぎマーク」を表示することになっていて、日本玩具協会が、年1回、メーカーの枠を越えたカタログを発行し、希望者に配布している。2013年度は19社の玩具メーカーが「協力メーカー」としてこの活動に参加し、カタログには185点(シリーズ)のおもちゃが掲載されている。

共遊玩具は一般向けに売るおもちゃであり、一メーカーで働く全盲の筆者の眼から見ると、圧倒的に少数である障害のある子どもたちの存在を踏まえて手の込んだ工夫や配慮をすることは、コスト面で非常に難しいというのが現状である。しかし、そのような状況下でもこの活動に関心を寄せるメーカーは少なくない。協力メーカーから「共遊できるのでは?」と提案されたおもちゃについて、視覚や聴覚に障害のある子どもたちにもほぼ問題なく楽しめるか、日本玩具協会がモニター審査をし、合格したおもちゃが「共遊玩具」に認定される。

機能に工夫があるものだけでなく、さわってしっかりと形がわかる、アニメなどのキャラクターやアイテム玩具、乗り物や建物、動物や食べ物や生活用具などを模した玩具も、普段なかなかきちんとは触れられない世界を知ることのできる共遊玩具として「盲導犬マーク」に認定される。また、筆談などによる「コミュニケーション」を助ける、あるいは楽しくするおもちゃは、「うさぎマーク」に認定されている。

目の見えない人にとって、「スイッチのON側に突起」が付いていたり、「電池ボックスの開け方がわかりやすく」なっていれば、それだけそのおもちゃが「扱いやすくなる」可能性は高いと言える。しかし、おもちゃは「扱う」ものではなく「楽しむ」ものなので、そのおもちゃが一般向けに提示している目的(遊び方)を、視力を使わなくてもおおよそ果たせるようになっていなければ、それを「共遊玩具」と呼ぶことはできない。

近年は、液晶ゲームやタブレットなどの普及も手伝って、遊びの世界も視覚化が著しく、また低価格化、低コスト化も激しくて、多くのおもちゃにとって、全盲でも楽しめるようにするための「工夫」はいっそう困難になっている。

一方、耳の聞こえない人は、市販されているおもちゃの大部分を楽しむことができる。しかし、ゲームの「スタート」や「結果」が音で知らされるなど、音が遊びの重要な要素となっている場合や、音声による言葉で遊びが進行するような場合には、それを補う何らかの「工夫」が必要であり、現在はそのような視点から、音が聞こえなくても楽しいちょっとした仕掛けのあるおもちゃが「うさぎマーク」対象玩具となっている。

日本玩具協会では、2008年に創設した「日本おもちゃ大賞」に「共遊玩具部門」を設け、応募玩具の中から優れた共遊玩具を毎年5点ずつ表彰し、その周知や開発促進に努めている。

また、タカラトミーのお客様相談室では、共遊玩具にも認定されているミニカー「トミカ」の中から、普段なかなか実物にはさわれない特殊車両を10台ずつセットにし、視覚障害のある人を対象に貸し出しサービスを行なっている。それぞれの車についての簡単な解説を点字・CD・墨字で同梱し、幅広い年齢の方にご利用いただいている。

保育園や幼稚園、学校などで障害のある子どもとない子どもが共に学ぶ機会が増えてきた今、共に楽しめるように工夫された「共遊玩具」へのニーズはこれまで以上に高まっていくと思われる。流行に乗るおもちゃを一つでも多く共に楽しめるようにすることで、あるいは、みんなが大好きなアニメキャラの姿や乗り物の動きなどをおもちゃを通して共有することによって、障害のある子どもとない子ども、障害を越えたあらゆる年齢層の人同士の活発なコミュニケーションを助けることができれば…と願っている。

○日本玩具協会
TEL:03―3829―2513
FAX:03―3829―2510
ホームページ:http://www.toys.or.jp

おすすめの共遊玩具

■ぴたポケ シリーズ■

半球型の土台に、吸盤の付いたポケモンフィギュアや、小物をくっつけて遊びます。ポケモンのキャラクターと情景小物は小さくても形がはっきりしていて、しっかりと安定して土台にくっつけられるのでポケモンの世界観を触って楽しめます。

◇タカラトミー 各630円~

■アニア シリーズ■

動物の形や質感をリアルに表現した、手のひらサイズのフィギュアです。口や頭・尻尾など、特徴的な部分が動くようになっていたり、ポーズの違う二体がセットになっているものもあります。それぞれの動物の、さわれる「点字・足あとシール」を、ご希望の方に差し上げます。

◇タカラトミー 各630円
(日本おもちゃ大賞2013年共遊玩具部門大賞)

■トミカ 全140種類■

手で動かして遊べるミニチュアカーです。普段なかなかさわることのできない車の形を知ることができます。パトロールカー、消防車、オートバイ、建設車等、さまざまな車があります。

◇タカラトミー トミカ 各472円
トミカ(ロングタイプ) 各945円

※「トミカ貸し出しサービス」に関するお問い合わせは、タカラトミーお客様相談室、電話0570―041031(平日の月曜から金曜、午前10時から午後5時)まで。

■どこでもハト時計 全3種■

ボタンを押すと、三角屋根の家の窓からハトが出てきて、かわいい声で時間を知らせる手のひらサイズの音声時計です。毎正時にもハトが鳴いて時間を知らせてくれます。ハトは時間に合った楽しいおしゃべりもします。時刻や目覚ましの設定も音声を聞きながらすることができます。

◇タカラトミーアーツ 各3150円

■ゲームロボット50■

全盲のゲームファンが開発スタッフに加わってつくられた電子ゲームです。光と音を手がかりに、音感・記憶力・判断力・推理力・瞬発力・計算力を磨きます。50種類内蔵されているゲームのうち34種類で全盲の視覚障害者も遊ぶことができ、取扱説明書が音声CDとインターネット上で提供されています。

◇ハナヤマ 4179円
(日本おもちゃ大賞2013年共遊玩具部門優秀賞)

■的中ニャンコ 生き物バージョン■

掌サイズのニャンコが、あなたと会話をしながら、あなたが頭の中で考えている生き物を言い当てます。ニャンコの質問に対して「はい」、「いいえ」で答えていくと、350種類以上の動物や魚、昆虫の中から、正解の生き物をニャンコが言い当ててしまいます。

◇ハピネット 2079円
(日本おもちゃ大賞2013年共遊玩具部門優秀賞)

■バーチャルマスターズリアル 全2種■

魚が餌にくらいつく手ごたえや引っ張られる感覚、釣り上げる際の重さなどを、音ではなく体で感じることができます。

◇タカラトミーアーツ 各6279円

(たかはしれいこ (株)タカラトミー 社長室共用品推進課(日本玩具協会共遊玩具推進部会))