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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2014年5月号

ユーザーの声

スマートフォンの活用と期待すること
―聴覚障害者の立場から―

橋爪由利

私は先天性の感音性難聴であり、両耳に補聴器をかけているが、耳から入ってくる情報が少ないため、日常生活の中では目で確認できる情報が必要となっている。会社勤めをしながら育児をしており、主にスマートフォンで通勤時間や外出先で、サイトやPCメールのチェックをする際に活用している。

今までは、天気予報もTVニュースを見ない時は傘を持たずに外出してしまうことが度々あったが、スマートフォンでは1日や1週間分の天気予報を表示するアプリがあるので、毎朝、確認することができ、保育園のお迎え時も傘を忘れて困るということが少なくなった。

外出中も、宅配便の不在配達の連絡もネットで行うことができ、便利である。家計簿のアプリもあるので、空き時間を利用して食費や光熱費などの記録もしている。TVもちょっと観たいと思った番組を字幕付きのワンセグで観られるので、家族とのチャンネル争いも避けられるようになった。

また、もう一つ活用しているのは、インスタントメッセンジャー(LINE)である。健聴者の夫や友人との連絡で、相手が読んだかどうかが分かり、ほぼリアルタイムでやりとりできるため、すぐ連絡を取りたい時に利用している。

子どもの病気で突然予定を変更しなければならない時や、電話での予約が必要な病院やお店への問い合わせもインスタントメッセンジャーを使って、代理電話をしてくれる電話リレーサービスの会社へ依頼することもある。TV電話で手話を使いながらの通話も可能だが、今のところはLINEで補えるので、まだ使用したことはない。

今後の機能やアプリに期待するのは、JRや地下鉄などが事故や災害で運行が遅れた場合、ホームや車内での放送内容がスマートフォンで詳細な文字情報が表示されるようになることである。

美術館などでもイヤホンを付けた音声ガイド機器の貸し出しサービスがあるが、聞こえない人に対しては、スマートフォンを活用して文字情報による解説ガイドにより、もっと鑑賞を楽しめるようになるのではないだろうか。

音声識別機能がより性能化されれば、音の種類(救急車のサイレン、やかんのお湯が沸く、インターフォンの呼び出し音など)を手元で確認するという使い方も可能ではないだろうか。

また、遠隔地での手話通訳やPC通訳についても、スマートフォンの画面で表示できるようになれば、職場の会議や学校での授業など情報保障面での利便性が高まり、聴覚障害者の生活や仕事の充実につながるものと期待している。

(はしづめゆり 会社員)