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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2014年5月号

1000字提言

「つながり」

福島龍三郎

平成22年に一般財団法人「全国若手福祉従事者ネットワーク」が実施したアンケートがある。この「若手福祉従事者の現状と将来の展望」というアンケートによると、福祉現場で働く若手職員の70%ほどが今の仕事に不安を抱いているという。しかし、「福祉の仕事を続けたいか?」という問いには85%以上の人が「ぜひ続けたい」「できれば続けたい」と回答している。そこに見えるのは、福祉の仕事に魅力ややりがいを感じているにもかかわらず、福祉職に対する不安を強く抱いているという現状である。

不安の一番大きな要因は、処遇や労働環境に関することであるが、次いで大きな要因は「職場が掲げる理念に向かって業務を進めることができない」「働く前の福祉のイメージと実際に働いている福祉現場にギャップがある」などであり、そこに垣間見えるのは、若い職員が多忙な業務のなかで孤立して自らの仕事の意義を見失いがちな姿である。

このような現状のなか、平成25年12月に佐賀県鳥栖市において「九州ネットワークフォーラム」を開催したが、フォーラムには九州各地より300人を超える参加者が集まり、フォーラムを通じて、研修もさることながら、多くの福祉従事者が想いや悩みを共有する機会となった。アンケートの感想からも、多くの参加者が自分の職場を超えた「つながり」を求めていることをうかがうことができる。

最近は、全国各地で「つながり」を創りだすフォーラムが開催されている。それらの取り組みが、これからの福祉を担う若い職員にとって、支援や職場での悩みを共有し、そもそも持っているやる気を持続させていくこと、そして、お互いに切磋琢磨して自分たちのスキルを上げていくことにつながっていくだろう。

「つながり」が必要なのは、若い職員だけでなく経験年数の長い中間管理職や経営者も同じである。管理職は管理職の、経営者は経営者の、大変さや悩みがあるが、それらの悩みは自らの法人の中ではなかなか共有できないことも多い。同じ立場だからこそ相談し合えることや共有できることがあるが、そのためには自らの法人を超えた同職位の「つながり」を持つことが必要である。

地域の福祉力を高めていくことを考えたとき、福祉サービスを整備していくことも必要であるが、きっとそれだけでは十分でない。福祉という仕事に魅力を感じ、前向きに日々の業務に励んでいる人たちが、長く継続的に福祉職に従事し、そのやる気と能力を発揮しつづけるためにも、「つながり」を紡いでいくことが必要である。

そして、その「つながり」がネットワークとなり、障がいのある人の地域生活を支えていくうえでの原動力となるだろう。


【プロフィール】

ふくしまりゅうさぶろう。平成14年、佐賀市に「福祉作業所ハル」開設。現在、NPO法人ライフサポートはる理事長。NPO法人全国地域生活支援ネットワーク監事。障がいのある方たちが、地域と共に生涯を通して幸せに暮らしてもらうことを目指して活動中。