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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2014年5月号

1000字提言

スポーツ始めましょう!

巴雅人

5月といえば、ここ仙台では新緑の季節です。街中では『杜の都仙台』を象徴する欅並木が、まばゆい日差しを浴びて、そのキラキラした木漏れ日を定禅寺通りや青葉通りへ映し出しています。

この清々しい季節に合わせて、毎週のようにイベントやスポーツ行事が開催されます。5月11日には1万2千人以上のランナーが参加する「仙台国際ハーフマラソン大会」が第24回目の開催となります。この大会の「車椅子部門」は、第11回(2001年)大会の8.1キロメートルから始まりました。その後、参加者や主催者の尽力で、第17回大会からは一般部門と同じコースと距離で競技ができるようになりました。

「ノーマライゼーション」の形のひとつがここにあると思います。これを具現化する「社会参加」は、障害当事者やその家族にとって大きな課題ではありますが、障害者スポーツはそのための導入手段として極めて有効であると思います。特に中途障害者にとっては、なんとか家庭に戻れてもその先の職場や学校復帰、あるいは地域社会への溶け込みは容易ではありません。入院期間の短縮された最近では「障害の受容」さえ満足にできていない状態で家庭に戻りますので、そこから先はより厳しい状況となります。

職場で前のように仕事ができるだろうか?同僚との付き合いができるだろうか?学校で勉強についていけるか?友達と遊べるのか?いじめられないだろうか?など「社会参加」には身体的、精神的に超えなくてはならない壁が生じます。

そこで、比較的その最初の壁が少なく、自分のペースを受け入れてくれるのが、障害者スポーツではないでしょうか!もちろんスポーツですので、ルールの理解や本人の努力は必要ですし、団体競技であれば対人関係の学びも必要となります。しかしながら、スポーツの仲間はほとんどが障害当事者としての先輩であり、社会人や学生も多く在籍します。その一員となることで、障害の受容やリハビリの方法、次のステップアップを「自然なピアカウンセリング」という形式で吸収していくことができます。

最後に私事で恐縮ですが、昨年から「ハンドバイク(サイクル)」に興味を持ち始めました。自前の車椅子に装置を付けて、自転車のようなペダルを手で回すもので、普通の車椅子よりは2~4倍位のスピードで進むことができ、抵抗も少ないので同じ距離移動でも車椅子より労力を使いません。何より気に入った点は、自転車と同じようにそれぞれの体力やペースに合わせた運動ができることです。もちろん健常者と一緒に走ることもできます。木漏れ日あふれる仙台市内や津波被災地をこれで走ってみようと思っています。


【プロフィール】

ともえまさと。1954年生まれ。福祉用具関係の(有)車座社長。20歳で交通事故により脊髄損傷となり、以来、車いすを味方にする。チェアスキー普及や地域活性化のボランティアや、バリアフリー啓蒙のため講演なども行なっている。