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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2014年8月号

選手・関係者からの声

世界中が楽しむパラリンピックを目指して

木村敬一

ロンドンパラリンピックで私が最も強く感じたことは、地元の人々がパラリンピックという「スポーツイベント」を、心から楽しんで、大会を盛り上げていたということです。ロンドンで感じた盛り上がりは、日本国内の大会だけでなく、他の国際大会でも感じたことがありませんでした。

水泳会場を連日埋め尽くした2万人の観客たちは、時に声援を送り、時に絶叫し、またある時はため息を漏らす。一つ一つの試合に一喜一憂する様子は、闘っている私たち選手の大きなモチベーションとなりました。

地元イギリス代表選手にはもちろん、他の国の選手たちにも大きな声援が送られます。正直、スタート前に自分の名前が会場にコールされた時、チームメートや日本から来てくれた友人たちの声が聞こえないほど、会場全体からの声援が大きかったことを覚えています。そのような中で競技をし、そして表彰台に上がってその歓声を全身で受ける。これほど気持ちの良い瞬間はありませんでした。

また会場の外でも、握手や写真撮影を求められ、激励されることが多々ありました。そのような些細(ささい)なことからも、国中の人々がパラリンピックをイギリスで開催していることを喜んでくれているのが伝わってきます。

2020年の東京パラリンピックでも、ロンドンと同等、あるいはそれ以上に大会が盛り上がることを期待しています。まずは日本国内で開催される小さな大会に、少しでも多くの方に足を運んでもらい、パラリンピックの魅力を感じてもらうところから始めなければなりません。四肢の機能を失った人類が、あるいは光を失った人類が、残された身体の機能を駆使すれば、これだけのパフォーマンスを見せることができる。そこには、競技力を競うことはもちろん、人間の無限の可能性を感じることができます。それこそが、パラリンピックの魅力であり価値であると私は思っています。

しかし、このような魅力は競技レベルが高くなければ生まれてきません。そこで、私たち選手には、何よりも高いレベルの競技をすることが求められると思います。世界のレベルで闘う選手たちは、勝負の面からみればライバルですが、大会を盛り上げるという面からみれば同士です。全員で強くなって、全員で最高の試合を見せること、それが選手の義務ではないでしょうか。その一員となれるよう、私も日々練習に打ち込んでいきたいと思います。そして東京で開催されるパラリンピックを、世界中が楽しんでくれることを願っています。

(きむらけいいち 東京ガス勤務)