音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へナビメニューへ

「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2014年8月号

選手・関係者からの声

パラリンピック:2020年東京開催に向けて
~スポーツ用義足の現状と課題~

沖野敦郎

2020年東京オリンピック・パラリンピック開催に向けて、スポーツを取り巻く環境は大きく変化している。パラリンピックにも大きな関心が寄せられている。パラリンピック参加を目指して競技生活を送っている選手の場合、各々の障がいに応じて競技ごとに必要な器具を用いるため、器具に多額の出費を伴う。

私は普段は義足・義手・装具を製作しているが、今回は義足に関して話をする。義足はユーザーの断端(切断部)に適合させるため、オーダーメイドで製作する。ユーザーの生活様式を考慮して、さまざまな部品を組み合わせ、世界で唯一の義足を作り上げる。基本的に日常用義足には、国や自治体が支給を認めた場合は補助がある。しかし、スポーツやレクリエーション時に使用するスポーツ用義足(写真1)に対する補助は認められていない。「走る」ということはいかなるスポーツにおいても基本となる動作である。日常用義足では気軽に走ることは困難であり、スポーツ用義足はすべてユーザーの自己負担となるため、義足ユーザーはスポーツを行うまでに至らないケースが多い。
※掲載者注:写真の著作権等の関係で写真1はウェブには掲載しておりません。

スポーツ基本法の基本理念では、「スポーツは、障害者が自主的かつ積極的にスポーツを行うことができるよう、障害の種類及び程度に応じ必要な配慮をしつつ推進されなければならない。」とある。

思春期で多感な時期の学生義足ユーザーは、学校の授業や部活動において義足が理由で他の生徒と同じ運動が行えないことが多い。まずは学生に対して、スポーツ用義足(写真2)の補助制度があれば、学生義足ユーザーの活動範囲は広がるだろう。それにより、スポーツのみならずさまざまな場面で積極的に社会参加することができるだろう。また、2020年に向けて選手育成の視点からも、スポーツ用義足に対する補助制度があれば、選手層の拡大、さらには日本の障がい者スポーツの競技力向上の扶助になるだろう。
※掲載者注:写真の著作権等の関係で写真2はウェブには掲載しておりません。

そして、2020年の東京パラリンピック時には、義足ユーザーがスポーツ用義足で走ることは決して特別なことではなく、老若男女すべての義足ユーザーが手軽に走る、スポーツを行える環境になっていることを熱望する。

(おきのあつお (公財)鉄道弘済会義肢装具サポートセンター義肢装具士)