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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2014年9月号

あらゆる障害者、高齢者や子どもにも快適で利用しやすい富山市の「富山ライトレール」

八木勝自

全国の鉄道ファンにも人気のある、あらゆる人々に快適で利用しやすい「富山ライトレール」は、赤、青、黄、紺、紫、緑、オレンジ色の各7色ボディで、「スマートポッチャリ」のかわいい電車です。

本誌から「障害者やあらゆる人たちが安全で快適で乗りやすく利用しやすい富山ライトレールのことを地元の人が書いてください」との依頼がありましたが、日常的に仕事や遊びに利用しているので、あまり意識したことがなくて思わず、「一体、何を書こうかなぁ」と思ってしまいました。

まず、このライトレールは富山市の海岸の岩瀬浜駅電停から、現在のJR富山駅北口のすぐ近くまでの7.6キロを25分で結んでいる市電に近い電車です。電停は現在13か所あり、すべての電停はホームまでの階段や段差が無く、緩やかなスロープで、ホームと車両の段差もすべてフラット(平ら)で、乗降口も広くて、ホームと電車の入口の隙間(すきま)も全くと言ってよいほどありません。私のような車いす障害者や歩行器やベビーカーも前輪などを引っかけることもなくスムーズに乗り降りできます。また、視覚障害者や一般の人、子どもや高齢者もホームとの段差や隙間が無いので、誤って足を引っかけることもなく誰もが安全に利用できます。

また、ライトレールの後ろと前と真ん中の間口も大変広く、これも利用しやすい点の一つです。もとの岩瀬港線の線路を使っているところは多少振動があるところはありますが、それ以外は乗っていて振動もなく、これまでの市電や電車に比べて走っていても騒音も少なく、乗った電停から降りる電停まで、ちょうど横に動くエレベーターに乗っているようだと感じるのは私だけではないと思います。

しかし、問題がないわけではありません。一つは、できるだけ多くのお客さんが座れるように座席が多くあるため車内の通路が狭く、幅62センチの普通型の車いすでも通路はギリギリ通れる程度です。私のような車いす障害者が乗る時は、運転手さんは乗り降りしやすく、車いすスペースがある運転席の方に来てほしいと誘導します。確かに車いす障害者のことを考えて、親切心や安全面を考えて誘導してくれることは分かるのですが、私のような電車の後ろに乗って電車がカーブする感覚が好きな「ひねくれ者」もいるので、もう少し考えてほしいと思っています。が、もちろん車いす3台で乗る時は、運転手さんも後ろに乗ることを認めていますから、あくまで「ひねくれ者」の意見や考え方かなぁと思ったりしています。

その他、各電停には点字ブロックが整備されています。通勤ラッシュ時の朝夕は10分に1本、それ以外は15分に1本、20時から23時台の最終電車までは30分に1本運行しているライトレールが今どこを走っていて、後どれくらいで到着するのかも、音声と電光掲示板で知らせてくれるので、視覚障害者、聴覚障害者や一般の人にも利用しやすい市電型電車です。

そもそもこのライトレールは、JR富山駅から岩瀬浜を結ぶ岩瀬港線の廃止が決定した時に、昔から大変、市電に愛着がある富山市の森市長が北欧などを視察して、これまでまち中の家並みを走っていた岩瀬港線を途中の奥田中学校前で切りました。その後に、奥田中学校前からJR富山駅北口までの1.1キロに線路を敷き詰めて、現在の7両の車両を購入し、富山港線の各駅舎を廃止して現在の13電停を新しく作ったのです。設備や車両、信号などの整備は富山市が行なって、運営は富山地方鉄道などで作る第三セクターが、運行は2006年4月29日(天皇誕生日)に開業したもので、富山市の森市長の決定や英断でできたものです。

将来、現在の富山駅に北陸新幹線が来年の3月から開通開業し、富山駅が高架橋で立体化した際は、南口の市電の路面と相乗りして結ぶ予定もあって、JR富山駅から少し離れた富山市の繁華街の西町などにもライトレールで行き来ができるようになります。

「富山ライトレール」のような車両が日本で初めて走り出したのは、2002年の岡山電気軌道の路面電車「MOMO」ですが、全線であらゆる人々が乗りやすくなった市電では「富山ライトレール」が初めてです。

このように、障害者を含むあらゆる人々が快適で利用しやすいライトレールが延びて、富山市でもまた全国でも増えてくれることを願い期待し、本稿を終わります。

富山市に来た時は、私の書いていることが本当かどうか、実際に富山ライトレールに乗ってみてくださいね。

(やぎかつじ NPO法人文福(ぶんぷく)理事長)