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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2014年9月号

1000字提言

「住まいの場」の充実を。

福島龍三郎

今、「住まいの場」の整備が急務となっている。

平成25年3月末の国保連データによるサービスの利用者数を見ると、就労系・日中活動系の主なサービスである就労継続支援(B型)事業利用者数は全国で166,361人、就労継続支援(A型)事業利用者数は27,404人、生活介護事業利用者数では245,221人であるのに対して、居住系のサービスであるグループホーム(ケアホーム)利用者数は81,729人となっている。生活介護事業の利用者の中には施設入所支援の利用者が含まれていることを勘案しても、地域において、いわゆる昼間に働く場所、活動する場所の設置数と、住む場所の設置数には実に数倍の開きがあるのだ。

地域生活支援が叫ばれて久しいが、地域での当たり前の暮らしを求めて在宅での生活を選択するご本人や家族がまず求めたのは、昼間に働く場所・活動する場所であった。それは、以前の小規模作業所の爆発的な増加にも伺えるが、事業所を設置する側としても日中系の事業は比較的運用しやすく、障害者自立支援法以降は安定した収入が確保されることもあり、次々と参入が相次いだ結果が、現在の日中系の事業所の数となっていると思われる。

しかし、地域での当たり前の生活を求めてきた世代の保護者がすでに高齢の域に差しかかり、また、障害のあるご本人には老化が早い方たちがいることを考えると、地域における日中系の事業所と居住系の事業所の設置数の差は、今の障害福祉の現状に大きな課題を投げかけている。

障がいのある人たちの地域での生活を保障するためには、このアンバランスをできるだけ早く解消(緩和)して、グループホームなどの居住系の事業所を増やしていくことが急務だ。併せて、重度の方たちのグループホームの利用についても、徐々に増えてはいるものの、中軽度の方たちの利用数の増加に比べると少ないことも課題である。

重度の方たちのグループホーム利用が増えるためには、当然のことながら、支援区分に応じた単価によって十分な支援体制を確保することが必要だが、これから青天井に障害福祉予算が増えていくことが見込めない現状を考えると、グループホームの規模の問題も真剣に議論することが重要である。

その人らしい生活を保障するためには、人数という要素だけでなく、それぞれのホームのロケーションやポリシーやシステム、支援者のスキルや質など、いろいろな要素が関わってくることを考えると、もっと広義にホームの在り方を考えることも必要かもしれない。

平成27年4月には報酬改定が予定されているが、これらの現状を踏まえて「住まいの場」を充実させていくための方向性を強く示すことが重要である。


【プロフィール】

ふくしまりゅうさぶろう。平成14年、佐賀市に「福祉作業所ハル」開設。現在、NPO法人ライフサポートはる理事長。NPO法人全国地域生活支援ネットワーク監事。障がいのある方たちが、地域と共に生涯を通して幸せに暮らしてもらうことを目指して活動中。