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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2014年9月号

列島縦断ネットワーキング【東京】

患者の声を医療政策に反映するために

患者の声協議会

設立の経緯

患者の声協議会は通常、病気の種類ごとに単独で活動し、孤独になりがちな患者会のサポートシステムを構築するため、患者会の有志らが集まって結成した任意団体です。

結成のきっかけは、2006年に東京大学医療政策人材養成講座(HSP)の研究グループの「患者の声をいかに医療政策決定プロセスに反映させるか」という論文を読んで賛同した患者会の有志が立ち上げました。個別の病気ごとに行政に対して個別課題をバラバラに要求する患者団体から、各患者団体に共通の課題に対して政策提言できる患者会になることを目指しています。

できるだけ多くの患者会の皆さんと、医療政策に関わる情報を共有して、それぞれの患者会の目線に立った医療政策の実現を目指して活動を始めました。

日本の医療はいま、高齢社会の到来や財源不足などにより、医療費は抑制され、医療現場の人手不足が慢性化するなど、深刻な事態に差し掛かっています。

そうした中で、さまざまな病気を抱える私たち患者・家族は、それにどう対応し、どのような医療政策を望むのか、自ら勉強して行動を起こさなければならないと考え、第一歩を踏み出しました。

2008年にスタートし勉強会を重ねてきましたが、これらの勉強会の結果、到達した結論の一つが、わが国の医療政策決定プロセスに患者・市民の参画が法定化されていないことが問題であるとの結論に至りました。医療政策に関係する厚生労働省の審議会等はたくさんありますが、国レベルの審議会に、患者・患者支援団体の参画が法定化されているのは「がん対策基本法」だけです。このことから、医療政策の基本方針を法定化する「医療基本法」の制定と、その基本法の中に、患者・市民の参画を明記することを働きかけていく活動が重要だとして取り組んできました。また、今後も取り組んでいく必要があります。

構成団体

正会員団体は、公益社団法人日本リウマチ友の会、埼玉県膠原病友の会、NPO法人腎臓サポート協会、認定NPO法人日本アレルギー友の会、NPO法人日本せきずい基金、社会福祉法人はばたき福祉事業団、NPO法人PAHの会、NPO法人ブーゲンビリア、社会福祉法人復生あせび会、NPO法人日本慢性疾患セルフマネジメント協会の10団体と、NPO法人ひょうごセルフヘルプ支援センターをはじめとする患者支援3団体の合計13団体です。この他に賛助団体会員、個人賛助会員の方々で構成されています。

今年度の活動計画の基本方針

現在、政府も関係団体も2025年を見据えた「医療と介護の提供体制」をどのように構築するかが最重要課題となっています。2014年度は「医療介護総合確保推進法」が成立し、その具体化への取り組みが始まる初年度となります。

「医療介護総合確保推進法」の目指すところは、2025年に向けた医療提供体制の再構築です。2025年の地域の状況を予測し、それに合わせて、現在の医療・介護の提供体制を変えていくのが目的です。そのための具体的な課題として、「地域医療計画」への取り組みがこれまでになく重要なテーマとなります。

そのような観点から、当協議会の本年度の取り組みの基本方針は、次のとおりです。

(1)勉強会、シンポジウム等の開催

1.2025年を見据えた地域医療計画を充実させるため患者・市民としての視点から取り組む。

2.これまで取り組んできた「医療基本法」制定に向けて、引き続き関係団体と協力する。

3.医療の質、介護の質の格差解消と均てん化に患者の視点から取り組む。

以上の3つの観点から、勉強会の開催、他関係団体との共催シンポジウム、メンバー個人による講演等を行なっていきます。

(2)要望書の提出等の政策提言の活動

勉強会での成果を取りまとめ、要望書の提出または政策提言として発表していきます。

医療基本法については、これまでも政党アンケートを実施して発表してきましたが、今後も医療基本法制定に向けて、超党派の議連での立法を働きかけていきます。

第26回勉強会(7月26日)の概要

「こんなに大きい医療格差~患者視線の均てん化目指して」をテーマに、東京・市ヶ谷アルカディアにおいて第26回勉強会を開催しました。

基調報告では、日本リウマチ友の会会長の長谷川三枝子(当協議会代表世話人)氏が「リウマチ医療における格差~患者団体にできる現状把握と政策提言~」と題して発表。ミニ報告では「周産期医療の格差の現況~各種指標の都道府県格差など」を医療政策実践コミュニティー3期生・日本看護協会の中村奈央氏から、「がん医療の格差の現況」をNPO法人ブーゲンビリア理事長の内田絵子氏からお話しいただきました。全国訪問看護事業協会理事長(当協議会副代表世話人)の伊藤雅治氏からは「在宅ケアの現況~訪問看護と在宅看取り率など」、国民健康保険中央会常勤参与の鎌形喜代実氏による「健康医療格差とデータヘルスの現況」と続けて発表いただきました。

その後、「格差の全体像と今後の対策マップ~求められる戦略と工程」と題して、東京大学公共政策大学院特任教授(当協議会世話人)埴岡健一氏による解説と、濃密な発表が続きました。発表者と会場との質疑応答、ディスカッションが続き、2時間半では時間が足りず、次回以降、改めて「格差」をテーマに行うこととしました。

次回の第27回勉強会は、テーマを「医療連携」を患者視点から切るーとして、9月13日(土)中野サンプラザにおいて開催します。

現在、政府が進めている医療政策の「地域医療連携」は、高度な技術・設備のある地域の中核病院と患者の身近にある「かかりつけ医」が役割分担し、適切な医療の提供を目指すものです。医療機関と在宅介護施設との医療連携も進行しています。こうした医療連携が、患者自身にはどんなメリットをもたらしているか、どんな点が不十分なのか、事例報告として、日本難病・疾病団体協議会の伊藤たてお氏など3団体の代表にお話しいただき、参加者と一緒にディスカッションを行います。

今後の展開

2025年を見据えた日本の医療政策・介護政策の基本方針が、今回の「医療介護総合確保推進法」の制定で示されました。今後はこの基本方針に沿って、細部の制度設計、政策具体化が図られることになります。このような大きな制度改革に対して、患者・市民の視点で、どのように関わっていくのかがますます重要になります。患者の声協議会としては、これらの動きをフォローし取り組むべき課題を整理し、具体的な活動方針を明確にして取り組んでいきます。