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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2014年10月号

時代を読む60

社会就労センター SELPとは
~「授産施設」から「SELP」へ~

「社会就労センター」は、唯一社会経済活動を行なっている社会福祉施設・事業所であり、働く意欲がありながら障害等の理由により、一般就労が困難な人々および一般就労を希望する人々の社会的就労の場である。利用者である障害のある方々のニーズを踏まえ、社会資源や地域のネットワーク等を活用しながら、就労支援、生活支援などのサービスを提供し、利用者の“働く・くらす”を支援している。

旧名称を「授産施設」としていたが、なぜこのような名称に変更されたのか、紹介したい。時代は平成4年に遡(さかのぼ)る。この年、厚生省(現在の厚生労働省)では、「授産事業のあり方検討委員会」(委員長・京極高宣氏)を設置して、授産施設の将来像について検討を行なっていた。授産施設関係者からの意見もあり、後に委員会がとりまとめた「提言」の中の、「授産という名称について、国民の中になじみにくいとの指摘もあるので、この名称の検討を行うことが必要である」との指摘に端を発している。

そもそも「授産」という名称は、明治初期以来使われてきた恩恵的、慈善的なものであり、社会福祉の根底にある人権やノーマライゼーションの思想から見ると、前時代的な感は否めなかった。このことから、この指摘を名称変更の好機ととらえ、全国社会就労センター協議会(当時は全国社会福祉協議会・授産施設協議会)は、名称にとどまらず、授産施設の事業振興と体質改善を図る「CI戦略」として変革に着手した。

この間の議論の記録によると「授産」の名称に愛着を持っている協議員からの率直な反対もあった。一方、「社会の中で授産施設の存在は認識されていない」「業界内での共通のアイデンティティが確立されていない」等の意見も併せてあり、議論は、「授産施設」に変わる制度名称の確立と、それによって関係施設が社会の中で存在する意義(アイデンティティ)の明確化を図りたいという方向に収斂(しゅうれん)されていった。そのような紆余曲折の後、「授産施設」に変わる新名称として「社会就労センター」が、また、コミュニケーション名称として「SELP」が決定され、それに伴い組織名を全国社会就労センター協議会(セルプ協)と改称した(「SELP」とは、SelfHelp「自助自立」から作られた造語で、社会就労センター関係者の熱い願いが込められており、Support(支援)、Employment(雇用)、Living(生活)、Participation(参加)、を意味している)。

このように、セルプ協の「CI戦略」は、単に名称変更にとどまらず、セルプ協の内部的には意識改革を推進し事業振興を図り、環境改善を図ること、外部的には地域・社会や行政を巻き込んでのセルプの存在価値を訴える運動として取り組まれ、今日に至っている。

(全国社会福祉協議会 全国社会就労センター協議会)