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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2014年10月号

大学、短期大学及び高等専門学校における障害のある学生の修学支援に関する状況
~平成25年度実態調査から~

独立行政法人日本学生支援機構学生生活部障害学生支援課

1 調査目的等について

日本学生支援機構では障害のある学生(「身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳及び療育手帳」を有している学生または「健康診断等において障害があることが明らかになった学生」)(以下、障害学生という)の修学支援の充実に資するため、全国の大学、短期大学及び高等専門学校における障害学生の状況及び支援状況について、「大学(大学院、大学院大学及び専攻科を含む)、短期大学(大学内に短期大学部を有している場合を含む。専攻科を含む)及び高等専門学校(専攻科を含む)(以下、大学等という)」を対象に、悉皆統計調査を実施している。平成17年度から毎年実施しており、各大学等のご協力によりほぼ100%という高い回収率を維持していることから、調査結果の引用や問い合わせ等も多く、一定の信頼を得ていると考えている。平成25年度についても調査対象の1,190校すべてから回答をいただいた。

2 調査結果の概要

(1)障害学生数と障害学生在籍学校数

平成25年5月1日現在、大学等に在籍する障害学生は13,449人で、内訳は、視覚障害732人、聴覚・言語障害1,609人、肢体不自由2,451人、病弱・虚弱3,005人(心臓、腎臓、呼吸器、ぼうこうまたは直腸、小腸、肝臓等の機能障害、ヒト免疫不全ウィルスによる免疫機能障害、神経疾患、悪性新生物等、及び身体虚弱の状態が継続して生活規制を必要とするものを含む)、重複329人、発達障害(診断書有)2,393人、その他2,930人(知的障害、精神障害、精神疾患等を含む。内訳:精神疾患・精神障害2,637人、慢性疾患・機能障害245人、知的障害31人、それ以外17人)であった。

当該調査において、大学等に在籍する学生数全体は3,213,518人であり、障害学生の数は全体の0.42%となっている。学校種別にみると、大学は全学生数2,991,385人に対し障害学生数12,488人(0.42%)、短期大学は全学生数164,33人に対し障害学生数515人(0.31%)、高等専門学校は全学生数58,000人に対し障害学生数446人(0.77%)で、高等専門学校において障害学生在籍率が高い傾向にある。

また、障害学生が1人以上在籍していると回答のあった学校は811校で、全学校に占める障害学生在籍学校の割合は68.2%であった。在籍人数別の学校数は図1右の円グラフのとおりとなっている。

【図1参照】

図1
図1拡大図・テキスト

(2)支援障害学生数と支援障害学生在籍学校数

この調査では、学生から学校に支援の申し出があり、それに対して、学校が何らかの支援を行なっている障害学生(当該年度中の支援予定を含む)を「支援障害学生」としている。支援障害学生の総数は7,046人であり、障害種別の内訳は図2左の円グラフのとおりとなっている。

全体の在籍学生数からみた支援障害学生在籍率は0.22%で、障害学生支援率(障害学生数のうち支援障害学生数が占める割合)は52.4%となる。学校種別にみると、大学は支援障害学生数6,596人で支援障害学生在籍率0.22%、障害学生支援率52.8%、短期大学は支援障害学生数232人で支援障害学生在籍率0.14%、障害学生支援率45.0%、高等専門学校は支援障害学生数218人で支援障害学生在籍率0.38%、障害学生支援率48.9%となっている。

支援障害学生が在籍している学校は664校で、全学校に占める割合は55.8%である。在籍人数別の学校数は、図2右の円グラフのとおりであった。

【図2参照】

図2
図2拡大図・テキスト

(3)授業に関する支援の実施状況

障害学生への授業に関する支援を実施している学校は621校で、学校種別の内訳は大学491校、短期大学90校、高等専門学校40校である。授業支援実施状況を障害種別にみると、多い順に、肢体不自由351校、発達障害280校(診断書の無い学生への支援を含む)、聴覚・言語障害276校、その他207校、視覚障害171校、病弱・虚弱145校、重複88校となっている。

支援を実施する際、教職員により行う、あるいは学生・外部に依頼して行う場合があるが、その支援者別で見た授業支援実施状況については次のとおりである。

まず教職員による授業支援は188校で、最も多いのが視覚障害の110校、次いで聴覚・言語障害の58校である。学生に依頼している授業支援は227校で、最も多いのが聴覚・言語障害の164校、次いで視覚障害の74校、外部に委託している授業支援は126校で、最も多いのが聴覚・言語障害の82校、次いで視覚障害の41校となっている。

授業支援の内容別に実施校数をみると、「教室内座席配慮」が最も多く、次いで「実技・実習配慮」、「使用教室配慮」となっている。

【図3参照】

図3 授業支援実施校数
図3 授業支援実施校数拡大図・テキスト

(4)障害学生支援に関する体制等

大学等における障害学生修学支援の体制については次のとおりであった。

・委員会の設置状況

「専門委員会を設置」203校と「他の委員会が対応」637校を合わせた840校(全学校の70.6%)で組織的な対応をしている。

・障害学生支援担当部署の設置状況

「専門部署・機関を設置」101校と「他の部署・機関が対応」943校を合わせた1,044校(全学校の87.7%)で組織的な対応をしている。

・障害学生支援に関する規程等の整備状況

198校が「規程等がある」と回答しており、全学校の16.6%である。

・障害学生支援担当者の配置状況

「専任のスタッフを配置」109校、「兼任のスタッフを配置」863校を合わせた972校(全学校の81.7%)で配置されている。障害学生支援担当者の職種については、専任スタッフでは最も多いのが「職員」51校で、次いで「コーディネーター」45校、「カウンセラー」27校、「教員」16校、「支援技術を持つ教職員」12校、「医師」6校の順で、兼任スタッフでは最も多いのが「職員」812校、次いで「教員」477校、「カウンセラー」350校、「医師」175校、「コーディネーター」80校、「支援技術を持つ教職員」28校の順となっている。

また、障害学生支援担当者を外部に委託していると回答した大学等は462校であったが(専任あるいは兼任スタッフを配置している大学等を含む)、その中で最も多いのが「医師・カウンセラー等」404校、次いで「専門技能者」(手話通訳・点字翻訳者等)61校の順であった。

3 障害学生数の経年推移

前述の平成25年度障害学生数(13,449人)について、平成20年度は6,235人であった。障害学生数は年々増加してきたが、5年前からほぼ倍増している背景には、病弱・虚弱、発達障害、その他(精神疾患等)の急激な増加がある。平成20年度→平成25年度の比較を示すと、視覚障害は646人→732人、聴覚・言語障害は1,435人→1,609人、肢体不自由は2,231人→2,451人と比較的ゆるやかな増加なのに対し、病弱・虚弱は1,063人→3,005人とほぼ3倍、発達障害は299人→2,393人とほぼ8倍、その他は422人→2,930人とほぼ7倍の増となっている。

【図4参照】

図4 障害学生数の推移(障害種別)
図4 障害学生数の推移(障害種別)拡大図・テキスト

4 今後の課題等

本機構では、本調査の結果をとりまとめた冊子を各大学等、関係機関に送付しているほか、ウェブサイトにおいても過去の調査結果を含めダウンロードできるようにしている。
(URL : http://www.jasso.go.jp

また、これまで調査結果について統計的に処理したもののみを公表してきたが、平成26年度に本調査の分析協力者会議を立ち上げ、専門家による分析を進めているところであり、結果については前述の本機構ウェブサイトにて公表する予定である。

本年2月に障害者権利条約がわが国において発効となり、また昨年6月には障害者差別解消法が公布され、平成28年4月に合理的配慮規定等が施行される。本機構では、こうした動向を踏まえ、大学等における障害学生支援の体制整備等を支援するため、本年度において、「体制整備支援セミナー」、「専門テーマ別障害学生支援セミナー」等の各種セミナー、「障害学生支援ワークショップ」、「障害学生支援実務者育成研修会」を実施(日程等の詳細は本機構ウェブサイトに掲載)し、また、合理的配慮の提供の参考としていただくために、本年7月実施の調査で収集した各大学等における障害学生への支援・配慮事例等を今年度末に改訂する「教職員のための障害学生修学支援ガイド」に掲載する予定である。

本機構では今後も引き続き、障害のある学生等、固有のニーズのある学生の支援に資するための情報の収集・分析・提供を行うとともに、障害学生支援の体制整備の促進や先進的な事例の収集・分析・提供等を図って参りたいと考えている。