「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2014年10月号
1000字提言
暇死の危険性
福田暁子
うさぎでしたよね、たしか……さびしいと死んじゃうのは。
のりピーが復帰したらしいとどこかで聞きましたが、その後、どうしているのでしょうね。のりピーの碧いうさぎは、とっくに死んじゃったのでしょうか。私が確信をもって言えることは、人間は、暇だと死んじゃうということです。
専門的な分析、解説が必要な場合は、おそらく、「廃用症候群の精神面に与える影響」や、「孤立のゆくえ」など検索してみてください。しかし、ここで、私がいわんとしていることとはちょっと違いますが、まあ似ているでしょう。
何も刺激なく、情報なく、ひとりぼっちのまま、ひたすら寝ている、けど死んではいない……という状況が続くと、物事に対して思いを寄せることや感じることがなくなっていき、感情の起伏が平坦になってきます。何も感じないように、そのほうが心は楽だから、マヒしてしまって、ついには気持ちを表すことができなくなって……生きる「しかばね」になってしまいます。
つい最近、体調が悪化し、死にたいを超えて、そのような心理状態を体験したばかりです。
私のように、視覚情報も聴覚情報もない盲ろうで、寝っぱなしという状況下では、なおさらこの状況に陥りやすくて、身体がもっと回復すれば、車いすに座れて外出できるようになると思います。それが分かっていても、心がマヒしてしまいそうのです。
でも……そういう人は多いと思います。ほかの人とつながる術(すべ)がなかったら、外とつながることがなかったら、手足を動かすことができても、きっと、孤独の中で、盲ろう者は死んでしまうと思います。
精神的な孤独死。孤独死、というとなんか響きがどよ~んとなるので、「暇死(ひまし)」ということにしましょう……暇すぎて死んでしまうのですね。この、暇死の犠牲者を増やしてはいけない!……というわけで、暇死予防・撲滅法案の早期可決が求められます。骨子の作成委員会を立ち上げましょう。
まず、暇死のリスクが高い人には、積極的な危機介入が必要です。そして、暇死に陥っている人が生き返るためにも、積極的な危機介入が必要です。これらには、専門的な知識と技術が求められます。暇死に陥っていっている人にどのようにアプローチするか、一人で悩まないでいいようにしたいですね。
まずは……朝を知り起きる、夜を知り寝る、これが基本かな、と思います。私の暇死を助けてくれている、みなさまに感謝。
日増しに暇死の危険が高まっている人が増えています。日本社会がアブナイ。
【プロフィール】
ふくだあきこ。1977年生まれ。全盲ろうをはじめとする重度重複障害。現在は、いくつかのバイトをかけもちしながら東京都内で一人暮らしをしている。