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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2014年10月号

列島縦断ネットワーキング【東京】

仲間たちとの出会いや交流を支援
~未来空間ぽむぽむの活動

佐和佳江・大谷良美・花房いづみ

1 ぽむぽむの設立までの経緯

(1)「たまり場」をつくろう

2000年当時、それぞれの職場で障害のある人たちと関わっていた数人の仲間は、作業所に通所したり、一般就労している人たちの生活に何かが足りないのではないかと感じていました。自宅と職場の往復のため家族との関係でストレスを爆発させ、行き場がなく、役所の相談窓口に毎日立ち寄って話をして帰る。あるいは、職場で人間関係がうまくいかず、孤独感を深め離職を繰り返すという状態でした。

彼らの生活には「仲間がいない、楽しみが少ない、ストレスを発散させる場がないのでは」と考え、まずは集まって思いを共有しようと公的施設を借り「ゲームとおしゃべりの会」を始めました。資金確保のためのバザーや、みんなで楽しむ食事会を何回か開催するうちに、単発ではなく、余暇活動は継続させなければ意味がない、彼らのつながりを継続させる取り組みをするため「いつでも立ち寄れるたまり場がほしい」と考えるようになりました。

初めは民家の離れを借りて、火曜日の夕方と日曜日に「たまり場」活動を始めました。10人足らずの支援スタッフが2人ずつたまり場に詰めて、障害のある方を迎えて、食事を作ったりトランプをしたり、お茶を飲んで他愛ないおしゃべりに盛り上がったりしました。障害のある方たちだけでなく、スタッフ自身もたまり場で楽しみ、励まされることを実感していきました。次第に、障害のある方の余暇活動に関心を持つ親や支援者たちも顔を出してくれるようになりました。

「障害のある人もない人も、人として出会い、知り合い、語り合い、励ましあうそんな当たりまえの空間をつくりたい(設立趣旨書より)」は、「たまり場」活動から生まれたのです。スタッフは、ボランティア団体として細々と活動をしていくのか、活動を広げ余暇活動の支援に大きく踏み出すのか、何度も議論を重ねた結果、運営基盤の確立と活動の継続性を目標に法人化への意思を固め準備を開始。2003年10月、NPO法人未来空間“ぽむぽむ”として認可され、「たまり場」の活動を本格的に開始することになりました。

2 たまり場活動

(1)金曜日の食事会は楽しい!

毎月1回、いろいろなお店を探し場所を変えて実施しています。18時~20時の2時間の食事会ですが、毎回20人以上の方が参加しています。仲間の紹介や近況報告、スタッフからは情報提供など、食べておしゃべりをして楽しんでいます。

(2)自立のためのスキルアップ

何を作って食べようか!から始まる「体験宿泊」は、金曜日夜から土曜日に事務所のスペースを使い、男女各3人ずつが1か月交代で始めました。自己紹介、買い物、調理、銭湯体験などをしながら、人との関係づくり、買い物の仕方や計算などを学び楽しみながら自立への意欲を高めることを目指しています。回を重ね現在は、1泊旅行へと発展しています。

(3)お楽しみ行事

納涼会、バスハイクやお出かけ食事会は毎年の恒例行事です。特に約300人が参加する納涼会は、親の会や区内の障害者施設の協賛、地域の方々のご協力を得て行なっています。

3 たまり場活動から自主活動支援事業へ

2008年7月に、葛飾区から障害者通所施設の自主生産品を販売するお店「ぷらすちょいす」を受託し、あわせて喫茶コーナーを開設しました。「ぷらすちょいす」の閉店後をたまり場活動として利用して、翌年に葛飾区との協働事業「自主活動支援事業」をスタートさせました。

平日は18時~20時、日曜日は11時30分~15時30分にオープンし、次のような企画で実施しています。

(月曜日)おしゃべりとカラオケ

(火曜日)ペン習字

(水曜日)就労支援センターと協力して、就労者の支援や交流、月1回は絵を描く会

(木曜日)第2・歌う会、第3・手話とおしゃべりの会、第4・パソコンとなかよく

(金曜日)ワンコイン食事会(500円で夕食をみんなで作り食べる)

(日曜日)第3・手芸、第4・お花を生ける

他にも散歩、自主計画による外出、ゲーム、昼食やおやつ作りなどをしています。平日は自分たちの興味や時間的都合、または保護者、支援者の勧めで、仕事や施設での作業が終わった後に立ち寄っています。時に利用者同士のトラブルもあります。お互いに譲り合えない時はスタッフが話を聞いて、一緒に解決の道を探します。また、手話とおしゃべりの会は利用者のリーダーを中心に自主的に進められており、スタッフは見守りながら必要に応じてアドバイスをします。

日曜日には「行きたいところに行こうよ」を実行しています。ただし条件があり、1.リーダーを決める、2.リーダーがスタッフと共に計画を作り参加を呼びかける、3.リーダーを中心に行動すること、です。今までにたくさんの計画が実行されてきましたが、終了するまでには、いろいろな課題がリーダーにふりかかってきます。リーダーは我慢をしたり、責任の重さから投げ出したくなる時もありますが、スタッフも見守りながら、「失敗することも大切な経験」ということを一緒に学んでいます。

4 さらなる広がりに向けて

(1)10周年記念行事

2012年11月に設立10周年記念行事を行いました。テーマは「夢に向かって」です。利用会員一人ひとりが自分の想いや夢を文章にしました。それをもとに一つの創作劇を作り、平日の夜や日曜日に集まり練習をしました。本番当日は身体いっぱいで表現し、一人ひとりの夢を語り、みんなで歌い、仲間としての絆がより強くなった瞬間でした。たくさんの方々が応援に来てくださり、スタッフ一同さらに前進していこうと気持ちを新たにしました。

(2)就労継続支援A型事業所設立

余暇活動の支援をしていく中で、「仕事がしたくても就職先が見つからない」「通所施設は理由があって通所できない」「仕事に見合った賃金をもらいたい」など悩んでいる人が多くいることに気がつきました。その人らしく生活していくにはどうしたらいいのか、スタッフで「必要な時に必要なかたちで」支援していこうと話し合い、2010年に、就労継続支援A型事業所「ぽむの樹」がスタートしました。

5 現状と課題

行事には多くのスタッフが必要です。特に、週6日実施している自主活動支援事業のスタッフが不足しています。

たまり場活動へ参加する利用者とその保護者の思いや願いはさまざまです。「職場では話す相手がいないため、習慣的に無口になってしまった」「友達がいないので、仲間がほしい」「いろんなことに挑戦してみたい」と自主活動に参加希望の方や自分から手芸や文字の学習、パソコンを習いたいと参加する人もいます。

いつも参加する人は仕事や通所施設が終わってから、仲間やスタッフとのおしゃべりや相談をしたくて集まってきます。そんな「たまり場」に継続的な支援ができるスタッフは重要です。熱意のあるスタッフの確保、育成が課題の一つです。

また利用者、その家族も年齢が高くなり先行き不安という声が届きます。身体の動きが悪くなり、一人で出歩くのは心配、施設が休みの日などはどのように過ごしたらよいか、退職後の過ごし方、高齢の方の生きがいなども大きな課題です。

6 今後の展開(豊かな人生を)

“ぽむぽむ”がスタートして10年が過ぎました。障がいのある人の余暇に対する取り組みは、確実に広がりを見せています。これからも「障がいのある人もない人も、ともにくつろげる仲間や支援者がいる場所」作りをしていきます。そのために、今後の活動として、余暇を支援するガイドヘルパー、相談支援事業、宿泊体験旅行、自主活動の支援に力を注いでいきたいと考えています。そして、一人ひとりの人生が豊かなものになるようにさらに余暇活動を支援していきたいと思います。

(さわよしえ・おおたによしみ・はなふさいづみ NPO法人未来空間ぽむぽむ)