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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2014年11月号

見直しに向けた提案

障大連としての課題提起

細井清和

私たち障大連(障害者の自立と完全参加を目指す大阪連絡会議)は、大阪で、身体・知的・精神などすべての障害種別を越え、障害者の地域生活を支援する約90の団体が集まった連絡会議です。

私たちは地域生活を支援するために、当事者活動を基盤としながら、ヘルパーの派遣やグループホーム、日中活動、相談支援等に取り組みながら、毎年、大阪府や大阪府内のいくつかの市町村で行政に対する制度要求を行なっています。その中で、いつも問題となっている課題と結びつけて、今回の見直しについて課題提起していきたいと思います。

2016年度の見直し検討規定(注)の中には、「1.常時介護を要する障害者等に対する支援、障害者等の移動の支援、障害者の就労の支援その他の障害福祉サービスの在り方」および「2.障害支援区分の認定を含めた支給決定の在り方」がありますが、ぜひ制度の抜本的な改革を行うべきだと考えます。

「常時介護を要する障害者」に関しては、まず対象者が限定されていることが問題です。2014年度には行動障害だけが対象拡大となりましたが、全く不十分であり、対象者をさらに拡大することが必要です。知的・精神障害者で、行動障害が比較的少なくても地域生活を送っていくために長時間の介助が必要な人たちがいます。「地域での生活支援の必要の度合い」に基づいて対象者を規定すべきです。そして、視覚障害と聴覚障害を併せもつ「盲ろう者」の人たちについては、地域での日常生活・社会生活を行うためには長時間の介助が必要であり、コミュニケーションの方法がそれぞれ異なることからも「パーソナルアシスタント制度」が必要です。

そして「常時介護を要する障害者」にとって、行政との交渉でいつも問題となることがあります。骨格提言にも示されていますが、「通勤・通学・入院」の問題です。通勤・通学(大学など)は、まさに社会生活上、必要不可欠なサービスです。入院は、命に関わる問題ですが、障害者の中には、知的障害や介護が独特な人などについて、病院側から付き添いを条件にされる場合が実態としてあります。労働や教育や医療の制度がそれらの保障を行うべきであるというのなら、福祉制度(ヘルパー制度)との間で早急に調整が行われなければなりません。

また、重度訪問介護の算定に関する基準の中にある「通年かつ長期」というあいまいな、そして合理的な根拠のない規定があるために、これが拡大解釈され、習い事などさえ禁止される場合もあります。さらに、日中活動の送迎については車での送迎しか想定されておらず、個別での通所送迎については、事業所が持ち出しで行う状態となっている場合が多く見られます。

移動支援については、支給決定時間の問題(特に、児童や施設入所者)もありますが、市町村事業ということで、ほんとうにさまざまな不合理な規制が市町村ごとに行われています。「居酒屋に行ってはならない(行き先制限)」「日中活動から一旦家に帰ってから移動支援を使う(発着制限)」などなど市町村によってバラバラなルールが作られています。国の事業へと一本化して「他の者との平等」に基づく移動支援ルールを統一すべきです。

「長時間介護」については、市町村ごとに水準がまちまちであり、それぞれの市町村で「基準」が作られています。国庫補助基準による制約や、施設福祉が中心になっている地域などでは、その基準自体の問題もありますが、その基準に当てはまらない「非定型」の申請について、形骸化している場合が多くあります。実際には、それぞれの市町村の「基準」が「上限」となってしまっているのです。医療的ケアを必要とする人や2人介護が必要な人、あるいは重度の心身障害をもつ人などは、支給時間が足りないために地域生活そのものが困難になっている現状があります。その人の必要な介護について算定できる支給決定の仕組み(協議調整モデル)を作るべきです。

また、大阪では、地域生活支援の一環として、小規模のグループホームへの取り組みを積み重ねてきています。見直しにおいては、「福祉サービスの在り方」の見直しとして、グループホームについて、大規模化をさらに明確に禁止し、小規模での「住まい」として位置づけ、個別支援を基本とし、個別のホームヘルプサービスの利用を積極的に認めていくことがぜひ必要であると思います。

その他、「精神障害者及び高齢の障害者に対する支援の在り方」についても、「(精神障害者の)ヘルパーのキャンセル対応への評価」や「(高齢のために)日中活動を休んだ時のホームヘルプサービス」など、障害特性や独自のニーズを踏まえた制度の改革を進めることが必要であると思います。

(ほそいきよかず 障大連執行委員)


(注)障害者総合支援法の施行に関わる主な検討課題

【4.検討規定】

障害者施策を段階的に講じるため、法の施行後3年を目途として、以下について検討。

1.常時介護を要する障害者等に対する支援、障害者等の移動の支援、障害者の就労の支援その他の障害福祉サービスの在り方

2.障害支援区分の認定を含めた支給決定の在り方

3.障害者の意思決定支援の在り方、障害福祉サービスの利用の観点からの成年後見制度の利用促進の在り方

4.手話通訳等を行う者の派遣その他の聴覚、言語機能、音声機能その他の障害のため意思疎通を図ることに支障がある障害者等に対する支援の在り方

5.精神障害者及び高齢の障害者に対する支援の在り方

上記の検討に当たっては、障害者やその家族その他の関係者の意見を反映させる措置を講ずる。