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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2014年11月号

見直しに向けた提案

地方自治体からの課題と提案

浜松市健康福祉部障害保健福祉課

障害者総合支援法(以下、総合支援法)の見直しについて、支援の実施主体であるとともに、事業者の指定および指導を行なっている自治体の立場から課題等について述べさせていただきます。

平成17年に障害者自立支援法が施行されて9年になりますが、この間、自治体全体の予算が厳しいなかにあって、関連予算は突出した伸びを示しています。この伸びがいつまで続くのかは、自治体にとって大きな関心事となっており、今回の見直しにあわせて10年後、20年後の障害者福祉のあるべき姿が描き出されることを期待しています。

以下、5つの課題について述べたいと思います。

(1)居宅介護

居宅介護については国、都道府県の負担が全給付実績を対象としたものとなっておりません。各自治体では、国庫負担額算定の基準とされている障害支援区分等によるガイドラインを超えて支給決定しているケースが多く、自治体の負担が増大していく懸念があります。

今後、さらに施設・病院からの地域移行、地域定着を進めていくのであれば、居宅介護の充実は施策の要であり、支援が必要な人に必要な支援をしていくためには、居宅介護に対する国庫負担等も他の介護給付事業と同じく給付実績を基準とすべきと考えます。

(2)介護保険制度との適用関係

次に、介護保険制度との適用関係についてです。総合支援法における介護給付等は、障害のある人が65歳になれば、原則として介護保険制度に移行することとされています。

しかし、総合支援法と介護保険制度においては利用者負担および支援内容に大きな差があり、利用者負担については、介護保険制度に移行することにより負担が増える方が大多数で、本市の窓口でも説明に苦慮しています。

また、支援に関しては、介護保険制度で不足する分については、総合支援法の中でカバーできる制度になっていますが、介護保険制度で利用可能な量と同程度の支給が必要と判断し、支給決定しているケースもあります。

見直しの中で、総合支援法と介護保険制度の適用関係について再検証し、高齢者の負担や支援において不公平感が生まれないよう、適切な調整が必要であると考えます。

(3)就労継続支援A型事業

次に、就労継続支援A型事業についてです。当事業は、就労が継続しにくい人、就労に結びつきにくい人にとっては有意義な事業であると考えていますが、事業者の資質、支援内容等について、各方面から多くの意見が寄せられ、事業者を指定および指導する立場として対応を求められているところです。

そこで、今回の見直しの中で自治体の声、利用者等の声をよく聞いた上で検証し、たとえば、支援の質の面について、当事者団体・相談支援機関・労働部局などからなる評価委員会のようなものを設置して、その評価により、事業指定更新の可否の判断ができるような検討も必要かと考えています。

(4)児童福祉法に定めるサービス

次に、児童福祉法に定めるサービスについてです。本市では、児童発達支援および放課後等デイサービス事業が大幅に伸びています。

これは、児童の早期療育、保護者の就労等にとっては好ましいことであるという認識でおりますが、他方、障害のある子どもが地域の子どもたちと過ごすことの大切さや、支援の質に対するご意見をいただくこともあります。

障害のある子どもにとっての望ましい支援とは何か、という視点で放課後児童会とのすみ分けや、支援員に必要な資格なども検討していくべきと考えます。

(5)地域生活支援事業

最後に、地域生活支援事業についてです。この事業は多くのメニューがあり、個人に対する給付、人材の育成、居場所の確保、日常生活用具の購入費補助など多岐にわたっています。

人材の育成や居場所の確保、安心して地域で生活するための相談支援などは、この事業として継続すべきものと考えます。しかし、個別の給付である移動支援や日中一時支援などは、介護給付に含めることも検討すべきであると考えます。また、日常生活用具のストーマ装具は、人工肛門等造設者にとっては日常生活に不可欠なことから、補装具に位置づけるべきものと考えています。

必須事業の考え方も含め、事業全体の再編が必要であると考えます。

以上のことを含め、多様な視点から検証がなされ、見直されることを期待するものです。