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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2014年12月号

時代を読む62

視覚障害者の読書を支える日本点字図書館

日本点字図書館は、「本を読みたい」「さまざまな情報を知りたい」という視覚障害者の情報へのアクセスを支援する図書館である。

1940(昭和15)年11月10日、本間一夫によって日本盲人図書館(現日本点字図書館)は創立された。本間は、1915(大正4)年10月7日、北海道の増毛に生まれた。5歳で脳膜炎により失明した。読み聞かせてもらった『日本児童文庫』や『少年倶楽部』によって読書の喜びを知ることとなった。本間は成長し点字に出合うとともに、イギリスのロンドンにある点字図書館の存在を知る。当時、日本にこのような施設は無く、点字図書の不足を嘆いていた本間は、点字図書館づくりを自らのライフワークにすることを決意した。

発足当初は点字図書が僅(わず)か700冊であったが、今日では点字図書・録音図書をそれぞれ約2万数千タイトル保有し、年間約15万タイトルの図書を貸し出すわが国最大の点字図書館となった。しかし、当館は一民間施設である。その運営資金の確保は常に厳しい状況にあり、最大の悩みでもある。事業費の内訳は、国や都からの公的支援が22%、企業・団体からの助成が17%である。残り約60%は、個人の篤志家からの寄付金と事業収入で賄っている。

事業内容は、点字、録音図書の貸出サービスのほか、専門図書の対面リーディングサービス、中途視覚障害者のための点字教室、パソコン教室、視覚障害者用生活用具の開発と販売など大変多岐にわたる。さらに近年は、社会インフラのユニバーサルデザイン化の中で、その推進と普及の観点から、点字サインや触知案内図などの製作や監修を行うなど、視覚障害者に関わるさまざまな事業を行なっている。

また、2010年1月施行の改正著作権法によって、対象範囲が「視覚障害者」から「視覚障害者その他視覚による表現の認識に障害のある者」と拡大された。改正は、視覚障害者以外に活字を読むことが困難な障害者の存在を社会的に明らかにしたと同時に、点字図書館にそうした障害をもつ方々への読書支援の役割を促すこととなった。

2013年3月、点字図書館を取り巻く環境の変化に対応した、これからの日本点字図書館の使命や情報提供のあり方について検討を行い、当館の使命を、「見ること・読むことが困難な人々の情報へのアクセスを支援すること」と定義し、「多様なニーズ(障害者)への対応」、「迅速な情報提供」、そして「アクセシブルな電子書籍の積極的活用」を柱とした方針をまとめた。

当館は、これからもわが国の30万人余の視覚障害者への情報提供の拠点としての役割を果たしていくことは勿論(もちろん)であるが、肢体不自由者や発達障害者(ADHD、学習障害)の読書を可能にするアクセシブルな電子書籍の製作と提供もこれからの役割と考えている。

(天野繁隆(あまのしげたか) 社会福祉法人日本点字図書館館長)


http://www.nittento.or.jp/