音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へナビメニューへ

「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2014年12月号

報告

第37回総合リハビリテーション研究大会

第37回総合リハビリテーション研究大会実行委員会

1 大会趣旨(今回の総合リハビリテーション研究大会で目指していること)

2014年10月11日(土)、12日(日)の二日間にわたり、仙台駅に隣接する仙台市情報・産業プラザ(AER)5階多目的ホールにて、第37回総合リハビリテーション研究大会が行われた。

第36回大会(2013年)から第38回大会(2015年)においては、「総合リハビリテーションの深化を求めて」という同一のテーマにより議論を深めており、第36回大会(2013年)のサブテーマ「当事者の主体性と専門家の専門性」を踏まえ、第37回大会(2014年)は、「当事者の『社会参加』向上と総合リハビリテーション」というサブテーマで開催した。

特に第36回大会(2013年)では、当事者主体の総合リハビリテーションのあり方について議論が行われたことから、第36回大会(2013年)を受けた第37回大会(2014年)は、専門家の視点からだけではなく当事者(高齢者・障害者・被災者等)の視点を重視したリハビリテーションについて再考するため、当事者主体の総合リハビリテーションが目指す「社会参加の向上」を図る上での課題を具体的な実践に基づきながら整理し、それらの課題解決に向けた方略について検討を行うことを趣旨として開催した。

2 プログラム内容

(1)一日目(10月11日)

一日目は、「障害者をめぐる動向」と題して、松井亮輔氏(公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会副会長・法政大学名誉教授)および藤井克徳氏(日本障害フォーラム幹事会議長)ならびに川又竹男氏(厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課長)を講師に迎え、ポスト2015開発目標の策定、障害者権利条約の批准と今後の制度改革、国の障害保健福祉施策と、内外の施策動向にかかる三講演が行われた。

その後、シンポジウム1「総合リハビリテーションに求めるもの―被災地からの発信」が行われた。桜井誠一氏(総務省地域力創造アドバイザー・日本パラリンピック委員会強化副委員長)、鈴木清隆氏(宮城県/仙台市復興事業局次長)、半谷克弘氏(福島県/双葉身体障がい者福祉会会長)、および元持幸子氏(岩手県/特定非営利活動法人つどい事務局長)をシンポジストに迎え、藤井克徳氏と上遠野純子氏(一般社団法人宮城県作業療法士会会長)の両座長により被災地の視点から意見交換をしていただいた。

続いて、第37回大会(2014年)は、東日本大震災後の宮城県で開催される大会であることから、阿部一彦氏(東北福祉大学教授・社会福祉法人日本身体障害者団体連合会副会長)より、「宮城県における障害者支援について」と題して、開催地・宮城県の障害者支援の状況や「第3回国連防災世界会議」(2015年3月14日~18日・仙台)など、災害に関連した動向にかかる基調講演が行われた。

(2)二日目(10月12日)

二日目は「『社会参加』向上に向けた総合リハビリテーションのあり方」をテーマとして、2部構成によるシンポジウム2を開催した。

第1部のシンポジウムにおいては、樫本修氏(宮城県リハビリテーション支援センター所長)、上遠野純子氏(一般社団法人宮城県作業療法士会会長)、渡部芳彦氏(東北福祉大学健康科学部医療経営管理学科准教授)、後藤美枝氏(仙台市障害者総合支援センター主査)、小関理氏(NPO法人宮城県患者・家族団体連絡協議会理事長)、阿部直子氏(NPO法人アイサポート仙台・仙台市中途視覚障害者支援センター社会福祉士)、島田福男氏(仙台市連合町内会長会副会長)、若生栄子氏(公益社団法人「認知症の人と家族の会」宮城県支部若年期認知症の方の集い「翼の会」)の計8人をシンポジストに迎え、渡邉好孝氏(一般社団法人宮城県理学療法士会会長)と矢本聡氏(仙台市泉区保健福祉センター障害高齢課障害者支援係長)の両座長の進行のもと、東北地域からの問題提起と議論が行われた。

続く第2部のシンポジウムにおいては、河合純一氏(一般社団法人日本パラリンピアンズ協会会長)、坂本洋一氏(株式会社ピュアスピリッツ顧問)、大嶋伸雄氏(首都大学東京健康福祉学部作業療法学科教授)、小田芳幸氏(社会福祉法人横浜市リハビリテーション事業団横浜市総合リハビリテーションセンター自立支援部長)、分藤賢之氏(文部科学省特別支援教育課特別支援教育調査官)といった、全国で活躍する多様な分野の専門家をシンポジストに迎え、木村伸也氏(愛知医科大学医学部教授)を座長として、さらに議論がなされた。

この二つのシンポジウムでは、当事者を「高齢者・障害者・被災者等」生活機能低下のある人というように広く捉えて、支援(=総合リハビリテーション)において、「なぜ、社会参加の向上なのか」、「社会参加の向上を阻害している要因は何か」、「阻害要因を促進要因へと変える具体的な方略は…」の三つの論点が取り上げられた。

最後に、次回開催地の第38回大会実行委員長の木村伸也氏(愛知医科大学教授)より挨拶があった。ぜひ名古屋でお待ちしておりますと、呼びかけられ、第37回大会を終了した。

3 総合リハビリテーション研究大会に関わり、大会を終えて感じたこと

第37回大会においては、医療、教育、職業、社会等の各分野にまたがるリハビリテーション従事者の横の連携と人的・知的交流を目指すという当初の開催趣旨のとおり、さまざまな分野で活躍する10人が実行委員として企画・運営を行なった。

また、サブテーマが「当事者の『社会参加』向上と総合リハビリテーション」であることから、障害当事者団体と協働して企画運営にあたるとともに、リハビリテーション専門家に加えて障害当事者や認知症の方の家族等を講師やシンポジストに迎え、専門家の視点からだけではなく当事者(高齢者・障害者・被災者等)の視点を重視したリハビリテーションについて再考することができた。

特に、二日目に行われたシンポジウム2の第1部においては、リハビリテーション従事者や当事者を受け入れる地域の立場から、島田福男氏がシンポジストの一人として発言されたことは今大会の特徴であった。

東日本大震災においては、当事者団体に参加して得られる絆の大切さや、地域の住民との関わりの重要性について、改めて強く認識されたところであるが、「『社会参加』向上に向けた総合リハビリテーションのあり方」を考える上においても、地域の視点を交えた議論がなされたことは、多様な立場の人が協働・連携しながら未来に“つなぐ”活動を展望することに繋がったものと考える。

最後に、今大会にご協力いただいた関係の皆様にこの場を借りて改めて謝意を表したい。

(文責 岡田聡子(おかださとこ)・社会福祉法人仙台市障害者福祉協会)