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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2015年5月号

工夫いろいろエンジョイライフ

実用編●多穴バインダーと製本作戦!?、他●

提案者:頼尊恒信 イラスト:はんだみちこ

頼尊恒信(よりたかつねのぶ)さん

1979年大阪生まれ。35歳。脳性麻痺(アテトーゼ型)。小中高校と地域の学校で育つ。京都の大学に合格後、大学の寮生活を経て、1人暮らしを始める。京都で10年生活し、熊本へ移住。その後、現職に就くために滋賀へ移住する。社会福祉士。博士(社会福祉学)。現在、NPO法人CILだんない事務局長、真宗大谷派聞称寺副住職、和歌山赤十字看護専門学校非常勤講師ほか。


多穴バインダーと製本作戦!?

私は、不随意運動があるため、ホチキス綴じの書類を扱う時に、ホチキスで、綴(と)じている部分から破ってしまうことがよくあります。そんな時、日頃からよく目を通す書類の多くは、製本屋さんに製本してもらいます。また、製本までは必要ない書類については、多穴パンチで穴を開け、バインダーに綴じて閲覧します。このようにすると、綴じ目を破ってしまう率が格段に少なくなります。

でも、人間がすることだから製本にしてもバインダーにしても、よく読む物はやはり綴じ目から裂けてきます。何度も同じ本を再製本するために、製本屋に持って行った経験もあります。そんな時は本の、横のサイズが少しずつ短くなるので、本棚にしまうと他の本より奥へ入ってしまい取り出しにくくなります。最近は本のPDF化がはやっていますが、私は綴じ目の問題はあるものの、どうしても紙媒体でマーキングしながら読みたいと思ってしまうのです。


調理の味へのこだわり

自立生活の醍醐味のひとつに食事の調理があります。私は、介助者に調理をしてもらうのですが、やはり人それぞれに好みの味というものがあります。私は、けっこう薄味が好きなのですが、薄味には微妙なさじ加減がつきものです。

私は、初めかなり薄味で味付けをし、身振り手振りを交えながら、ちょっとずつ調味料を足していきます。そのさじ加減を介助者に伝えるのは時間がかかります。でも、自分で調達してきた新鮮な食材を自分の味で調理し、食べるということは私の喜びのひとつです。介助者とやりとりをしながら調理をする時間は、私にとって「至福のとき」と言えます。

仕事がだんだん忙しくなってきて、どうしても調理が後回しになって、調理すること自体を止めていた時期がありました。最近、調理生活を復活させることができ、改めて調理生活の良さを身に染みて感じています。仕事中でも「何を作って食べようか」と考えてしまい、仕事がお留守になっている時があります。「あっ、仕事、仕事」と思い、意識を仕事へと戻す日々が続いています。


指示は大胆に、そして細かく

脳性麻痺の二次障害の悪化に伴って、介助者に介助を頼む機会がかなり増えました。また、以前より発音することに困難を感じるようになってきました。それと時を同じくして、自分の思いや考えていることを周囲の人々に伝える時、言語障害が原因で十分に伝わっていないと感じることが多くなりました。

そんな時、私の大の友人が「指示は大胆に、そして細かく」とむかし言っていたことを思い出しました。そして、私自身もあいまいな言い方を避け、白黒が分かりやすいように表現し、身振り手振りを交えて指示してみたところ、これが実に上手く伝わることを実感し、それ以来、自分のモットーにしようと心がけています。

ただ、最近は「大胆」が「大げさ」になりつつある傾向があるので、自分でも要注意だと感じています。また、細かい物事を伝えようと、たとえ話を用いることがよくあり、そのたとえ話が余計に話を難しくしてしまうことがあって、「もっと、もっと、話の修行が必要やな」と日々深く感じています。

めざせ話の達人!!