音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

  

「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2015年6月号

列島縦断ネットワーキング【大阪】

ろう者・難聴者が楽しく自立生活を送れるための場を提供
~デフサポートおおさかの活動~

森本菜穂子

1 活動の経過

1997年に立ち上げた旧小規模作業所から出発して、障害者総合支援法に基づく地域活動支援センター事業を基本に据えながら、ろう者・難聴者への差別をなくし、自立を支援するとともに、手話に関する啓発活動を行うNPO法人として2006年に立ち上げ、今日に至っています。私たちの活動は、ろう者・難聴者が中心に運営を行なっていくことを大切にしています。当事者の抱えるさまざまな課題に取り組み、その方々が持っている力を発揮できる場としてさまざまな事業を展開しています。

活動の発端は、阪神・淡路大震災において、災害状況の情報が入らず不安に陥ったり、被災者への支援情報が伝わらずに孤立する聴覚障害者が多かったことです。災害時も含めて、生活のさまざまな場面で、もっとろう者・難聴者に役立つ事業ができないかと考えながら事業を展開してきました。

2 デフサポートおおさかの活動

1.デフカフェ「手話楽々」

地域活動支援センター事業を大阪市から受託しているために、その事業の利用者であるメンバーは、大阪市在住のろう者・難聴者となっています。主に、民間事業者からハンカチや手ぬぐいなどの袋詰め作業を請け負う一方、喫茶コーナーを作り、デフカフェ「手話楽々」の営業と運営に取り組んでいます。手話で交流できる場として、ろう者はもちろんのこと、手話を学ぶ方々が実際に生き生きとした手話コミュニケーションを行える場として活用していただいています。時に、お客様は他府県からも噂を聞いて来られます。外国のお客様も珍しくありません。メンバーは接客や調理なども担当し、時には、お客様の手話のコミュニケーションのお相手として対応したり大活躍です。自然な手話の会話が交わされて、手話教室では味わえない楽しさを感じていただいています。

月に一度は、時間を延長してナイトカフェを開催しています。喫茶コーナーだけでは入りきれないので、事務所や作業場なども開放して40人前後のお客様を受け入れています。普段、勤務でデフカフェに来られない方々が手話で思う存分近況を語り合ったり、イベントの情報交換などを行なっています。何年ぶりかの再会を喜び合ったりする方もおられて、手話を通じてさまざまな関係の輪が広がっていくようで、メンバーもスタッフもやりがいを感じています。

デフカフェの看板
図 デフカフェの看板拡大図・テキスト

2.手話通訳派遣と生活相談

いろいろな団体からの要請に応じて研修会や集会、催し物などの手話通訳者の派遣を有料で行なっています。

また、ろう者・難聴者が社会生活上で直面するさまざまな相談にのり、関係機関と連携して解決にあたったり、手話通訳の同行派遣を行なっています。特に、高齢のろう者は福祉サービスを受けるにあたって、内容がわからないまま契約を結んでしまうこともあります。反対に、サービスの内容が十分に理解できないまま、サービスを拒否してしまうこともあります。誰でも当たり前に受けられるサービスで不利益を被らないように行政、医療、福祉などの関係機関との橋渡し的な支援を行なっています。

3.手話教室や情報提供、交流に関する事業

手話を習いたいという方のために手話教室を開講して、月2回「初級手話講座」を実施しています。公立学校や専門学校、企業などにも手話講師の派遣を行なっており、手話の普及に努めています。また、ろう者に通じる手話を学ぶための「日本手話講座」を開講しています。現在は修了生を対象に、自主サークル「フェニックス・デフ」を立ち上げ、活動を支援しています。大阪市営地下鉄の運転士グループ「チームもぐら」と交通バリアフリーの取り組みも行い、その中で駅名の手話作りを行なっています。

また、聞こえないことから来る情報不足を補うために情報誌を発行したり、ろう者・難聴者の啓発につながる問題や時事問題、健康問題についての学習会をわかりやすく解説しながら行なっています。

1年に1回、ろう者同士や手話学習者との親睦や交流を深めるために、研修旅行やハイキングなども実施しており、心待ちにしている方がかなりおられます。毎月第2、第4金曜日の夜には囲碁教室を行なっており、聞こえない方の趣味・生きがい活動を応援しています。こうしたろう者・難聴者と聴者との交流を通して、当事者の自己実現に結びつく活動を応援しています。

4.教育サポート事業

聴覚障害をもつ児童・生徒に対しては、教育サポート事業として「ぼちぼちEdu」という学びの場を運営しています。今年で6年目になりますが、デジタルテクノロジー(ICT)を活用して、聴覚障害児が楽しくわくわくしながら、教科学習や社会問題などについて深く豊かな学びをしながら、自分を高めていく場となっています。

なお、「ぼちぼちEdu」は、大阪市の下水処理場の方々と「下水道の手話」作りに取り組んできましたが、そのデジタルテクノロジーを活用したコラボレーションの取り組みがアメリカのマイクロソフト社に大きく評価され、昨年、マイクロソフト社の取材を受け、私たちの取り組みの様子が同社の教育サイトで全世界に公開されました。日本のいちNPO法人の障害児が学ぶ様子を、マイクロソフトという名の通った世界企業が取り上げるのは、今までに例がなかったことです。

※この動画は日本語版も公開中です。

「日本マイクロソフト教育機関」→導入事例→大阪府立生野聴覚支援学校 でご覧ください。

以上、簡単に私たちの活動を紹介しました。私たちの活動は、事務局だけでは運営ができません。多くのボランティアや協力者の方々に支えられています。その方々に感謝しつつ、もっと多くの方々が交流できて、手話が社会に違和感のないように広がっていき、さまざまな場面でろう者・難聴者への配慮がなされるように、その一助となれるような活動を続けていきたいと思っています。

(もりもとなほこ 特定非営利活動法人デフサポートおおさか理事長)