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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2015年8月号

被爆70周年記念事業・2015マーガレットコンサート
~障害者と広響とのジョイントコンサート~

広島市健康福祉局障害福祉部障害福祉課

平成27年7月12日(日)、広島国際会議場フェニックスホールにおいて「被爆70周年記念事業・2015マーガレットコンサート」を開催しました。このコンサートは、障害者とプロのオーケストラである広島交響楽団(以下「広響」という)のジョイントコンサートで、障害者の積極的な社会参加を促進することを目的として、平成17年から広島市が主催しています。11回目の開催となる今回は、広島市の「被爆70周年記念事業」のひとつとして位置づけ、平和との関連性を持たせた特別企画を行い、障害者をはじめすべての人にやさしい平和都市としての求心力の向上を目指した特別公演として開催しました。

今回のコンサートは、第1部を広響の単独演奏と、和太鼓と広響の共演(「祈りと再生」)、第2部を特別ゲストと合唱団と広響の共演(「未来への希望」)の2部構成としました。また、被爆70周年記念事業の特別企画として、平和に関連する楽曲の演奏や、特別ゲストの井上あずみさんの招聘、障害のある出演者による平和メッセージの発信(演奏中に舞台上のスクリーンへ出演者の写真と平和メッセージを投影)を行なったほか、同じ被爆都市である長崎市在住の障害者にも出演していただきました。障害のある出演者は、和太鼓36人・合唱133人の合計169人で、障害種別も知的障害や聴覚障害、視覚障害、肢体不自由などさまざまです。今回は出演者の中から視覚障害のある方の感想をご紹介します。

被爆70周年記念事業・2015マーガレットコンサートを終えて

私は毎年このマーガレットコンサートに参加しており、今回の「被爆70周年記念事業・2015マーガレットコンサート」にも広島市視覚障害者福祉協会グリーンコーラスの仲間と共に参加しました。5月から約2か月間、日曜日の練習に出席しました。今年のコンサートでは、「青い空は」・「折り鶴」・「さんぽ」(「となりのトトロ」より)・アンコール曲の「ひろしま平和の歌」の4曲を合唱しました。練習中、合唱指導の先生から、「ただ歌うだけではなく、歌詞の意味をイメージするように」と指導があり、常にそのことを意識していると、楽曲から「命の重み」を強く感じるようになりました。また、特別企画の平和メッセージを考える過程で、当時の様子を想像することができました。

戦時中、父も母も兄弟たちも、皆亡くなってしまい、たった一人ぼっちになってしまった自分。周りの建物がなくなり、何もない真っ暗な空間で寒さに震える自分。それを想像すると本当に寂しくて怖くて耐え難い気持ちになりました。同時に「今、毎日を幸せに生きている」という事実はとても貴重で有難いことなのだと強く思いました。

マーガレットコンサートの本番では、長崎市から来られた方も一緒になって、私たちは気持ちを一つに、平和への感謝と祈り、そして未来への明るい希望をもって歌うことができたと感じました。そしてその気持ちは、会場に来てくださったたくさんのお客さんにも届いただろうと確信しています。私たちが歌った後に司会者の内海さんが「次の時代に平和な世界を繋げたい」と仰いましたが、私もまさにその気持ちでいっぱいです。

今までの私は、「平和」、「戦争」、「原爆」といったことから少し逃げていたように思います。しかし、今回のマーガレットコンサートは、今まで逃げていたことに向き合うきっかけを私に与えてくれました。この機会を与えてくださった市役所の皆さんや、広島交響楽団の皆さん、合唱指導の先生、関係者の皆さんに感謝します。そしてこれからの日々を、感謝の心で一生懸命に生きていきたいと思います。

グリーンコーラス 志々田哲美


コンサートを終えて、参加者や来場者の皆さんからたくさんの声をいただきました。その多くは、「今を幸せだ」と感じると同時に、もっと「平和」について考えたいというものでした。多くの方々にとってこのコンサートが「平和」や「未来」について考えるきっかけとなれば、主催者として大変うれしく思います。