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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2015年10月号

工夫いろいろエンジョイライフ

実用編●身振りで伝える、他●

提案者:長野留美子 イラスト:はんだみちこ

長野留美子(ながのるみこ)さん

ろう・難聴女性グループLifestyles of Deaf Women代表。先天性ろう。大学在学中より聴覚障害学生支援活動に携わる。大学卒業後、米国留学や会社勤務を経て、2006年当事者女性グループを設立。現在、ろう・難聴女性の社会参加に向けて「キャリア」と「子育て」のテーマに取り組んでいる。


身振りで伝える

海外旅行の時、言葉が通じなくても身振りで伝えあえた経験を持つ人は多いと思いますが、聴覚障害のある人とのコミュニケーションにも通じるものがあります。

先日、街を歩いていた時、見知らぬおばさんに肩をたたかれました。私が落とし物をしたので呼び止めたようですが、振り向かないため、追いかけてきて身振りで教えてくれました。

このように、街の中で話しかけた時に反応がなかったり、補聴器をつけていることに気づいた時は、もう一度身振りで話しかけたり、相手の視野に入るようにして動いたりとアプローチ方法を変えると、聴覚障害のある人は反応します。

よく日本人はボディランゲージが苦手と言われますが、伝えたいものを指差したり、紙に書く仕草など、日常的に行なっている動作を示すだけでも伝わりやすくなります。


口話は大きく口をあけて

聴覚障害のある人の中には、失聴時期や障害の程度の差はあれ、読唇(口の動きで言葉を読み取る)や口話(自らも声を出して話す)が可能な人がいますので、顔を向けて、口を大きく開けてゆっくり話すと伝わりやすくなります。

読唇だけだと、「たまご」と「タバコ」のように口の形が似ていて間違えやすいので、その時は、身振りや筆談も加えるとより読み取りやすくなります。

一方で多い誤解には、補聴器を装用すれば、一般の人と同じように聞こえると思われることがあります。私自身も、老人性難聴の人に対するのと同じように耳元で大声で話されたり、マスクをしたまま話されたりして、口の動きが読み取れずに困った経験があります。

補聴器を通して伝わる音は、周囲の雑音も拾って増幅されるために壊れたラジオのように聞こえて、一般の人と同じように聞こえるわけではないのです。


筆談は要点を簡潔に読みやすく

私たちは、職場をはじめ公共施設や病院、銀行などでさまざまなやりとりをしながら生活しています。

聞こえない私が困るのは、こうしたさまざまな場面での音声言語による煩雑なやりとりです。

たとえば、銀行や役所などの窓口での煩雑な内容のやりとりを読唇(口の動き)だけで読み取るのは、非常に骨が折れ、場合によっては、ところどころの言葉しか読み取れません。

そんな時、私はいつも持ち歩いているメモ帳や筆談ボードを利用して、筆談をしてくれるようにお願いしています。筆談の際、人によっては、敬語や丁寧語まで書くために時間がかかり過ぎたり、逆に文章が短すぎて内容がつかめなかったりすることがあります。要点を簡潔に伝えつつ、読みやすい文章で書いてくれるとわかりやすいです。

また、聴覚障害のある人の中には、わからないことがあっても躊躇(ちゅうちょ)して聞き返せない人もいるので、相手に伝わっているかどうか確認することも大切です。