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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2015年12月号

私のファッション哲学

私とファッション

伊藤ホサナ

私は生まれつき、ろう者です。小学校の頃は、雑誌で好きなモデルさんを眺めるのが好きでしたが、肝心のファッションについては特に興味がなく、流行も気にしていませんでした。学年があがるにつれ、人間関係や授業についていけないなど悩みも増え、いつの間にか黒や深緑など暗い色の服ばかり着ていました。そして中学生になると、母と一緒に出かける機会が増え、母の服をよく借りていました。姉妹のおさがりならぬ母のおさがりです。

母が何年も大事にクローゼットにしまっていた衣服を見て、良い服は時代が変わっても魅力的だと感じたことを今でも覚えています。母が若い時に着ていた英国系の服に、私も興味を持ち始め、母の服ばかり着るようになりました。そのせいか、私は流行に捉われずに自分に似合うものを選んで着る傾向があると思います。「えっ、これエプロンなの?ワンピースかと思った!」というような珍しい服やオリジナリティーのある服が好きで、自分が「これだ!」と思ったものしか買いません。

ところで、ファッションと耳にどんな関係があるの?と思う方もいらっしゃると思いますが、日常生活でたびたびあります。

たとえば、一人で買い物する時、商品をじっくり見たいのに、店員さんがやたらと話しかけてくることがあります。何を言っているのか分からないので適当に流すこともありました。何を言われたのか分からないままお店の中を見て回るのは、何となく居心地が悪くなるものです。

現在は、夫と買い物することが多いので、2人で手話していると気の利く店員さんは察して自ら紙を持ってきて、「何がございましたら言ってくださいね」と渡してくださることもあります。ろう者は見かけでは聞こえないことが分かりにくいので、2人以上で買い物をすると気が楽だと思います。

また、最近はインスタグラムでモデルさんたちが気軽に写真をよくアップしているので、参考にしています。これからもオリジナリティーのある個性的な服を求め続けてファッションを楽しみたいと思います。

(いとうほさな サインウイズミー勤務、NHK「みんなの手話」講師アシスタント)