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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2016年2月号

家族からの意見

障がいのある人の“きょうだい”の悩みと思い
~求める福祉的支援と社会の変革~

田部井恒雄

“きょうだい”(障がいのある人の「きょうだい」を、“”で囲んで表現)の願いは、自分も障がいのある人も共に心豊かに暮らしていくことである。

子どもの頃、親は障害のある子どもにかかりきりになり“きょうだい”はいつも後回しにされて、寂しい思いをするのが一般的である。親の愛情を疑うこともある。学校ではいじめられることもあり、障害のあるきょうだいのことを友達に話せず、孤立感を深め、その影響が大人になってからも残ることがある。将来への不安も大きい。大人になり、きょうだいの会に来て仲間と話し、気持ちが開放されたという人が多い。親や関係者の“きょうだい”に対する理解、そして子どもの“きょうだい”のための活動が必要である。親が障害のある子どもへの対応に努力せず、親自身がそこから逃げようとすれば家族は崩壊する。まずは親への支援が重要である。

先日“きょうだい”の仲間が「最近は子どもを事業者に預け過ぎて子育てをしていないのではないか。自分としてはいろいろあっても障害のあるきょうだいと過ごした時間は大切だった。それが自分を成長させた」と言っていた。もちろん皆がこのように考えられる訳ではないが、家族が家族らしさを保つことができる支援が不可欠である。

障害のある人の自立は“きょうだい”にとっても重要である。しばしば親は障害のある子どもを甘やかす。親が高齢になると、逆に親が障害のある子どもに依存することも少なくない。その親が亡くなると、“きょうだい”だけでなく障がいのある人も困る。若いうちから、自立に向けた本人と親への支援が重要である。今は制度は整ってきたが、実態は不十分である。特に、自立の基となる意思決定支援は障害の程度にかかわらず不十分である。また、自立は制度だけで支えることはできない。地域の人たちに見守られて育ち生きていける地域の再構築が必要である。子どもからお年寄り、障害のある人が地域の中で支え合う支援がそれを可能にすると考えている。障害への偏見の解消にも通じ、“きょうだい”の結婚への障害を軽減することにもなる。しかし、それは福祉の視点だけでは実現できない。両親が働きつつ家族との時間を大切にし、地域にも関わることができる働き方の政策が不可欠である。それが、障害の有無に係(かか)わりなく真に豊かな社会の実現に通じるはずである。

(たべいつねお 全国障害者とともに歩む兄弟姉妹の会(略称:全国きょうだいの会)会長)