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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2016年3月号

当事者からの提案

福祉避難所の機能総点検を

高山孝信

茨城県では昨年9月10日に台風18号の影響で、常総市において大きな洪水災害を受けました。この洪水災害を受け、県自閉症協会では避難指示区域内会員の安否確認調査を実施し、全員無事を確認しましたが、1軒の会員ご家族が避難しました。迫りくる濁流から間一髪で避難され、また奇跡的に無傷であったご自宅に翌日に戻られ、幸いにも短期間で日常の生活に戻られたようです。

しかし、避難の時の状況をお聞きしたところ、自閉症をはじめとする災害時要援護者への配慮が極めて不十分だったことが分かりました。避難した際のご家族の状況を以下に記します。

自閉症のお子さんと一緒に緊急避難するにあたり、お母様はお子さんが少しでも安心して過ごせる場所と考え、卒業したA特別支援学校に、避難所になっているか確認の電話を入れたそうです。しかし、支援学校学区内で大きな災害が発生しているにもかかわらず、自治体からの要請が無かったため避難所には設定されていなかったそうです。次いで、隣市の指定されていたB小学校の一般避難所に避難しました。しかし、初めての不慣れな場所でお子さんが落ち着くことができず、大きな不安を感じたそうです。幸いにも、ご友人と連絡がつながり、そのお宅に泊めていただいたそうです。

2011年の東日本大震災では、避難所で場にそぐわない言動もあったためか、一般の方から自閉症児を連れたご家族にひどい暴言が浴びせられたことがありました。また、そういった事態を予想し、避難が必要だったご家族のうち、半分以上のご家族が避難所に行かない判断をして自家用車や危険な状態の自宅で過ごしたりしました。

そのようなことから、自閉症者・家族が安心して過ごすことができる福祉避難所の設置を行政や社会に強く働きかけてきました。震災以降、多くの福祉避難所の指定契約が進められました。しかし、実際に機能しなければ意味がありません。たとえば、福祉避難所は一般避難所以上に早い段階で設置し周知していただく必要があります。

いま一度、全国の自治体で福祉避難所の機能を総点検していただくとともに、実際に福祉避難所を利用された方々から意見を集約し、障害特性からくる考慮していただきたいことや改善案を協会として自治体に提案していきたいと思います。

(たかやまたかのぶ 茨城県自閉症協会)