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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2016年3月号

大田区自立支援協議会防災部会における取り組みについて

長谷川正

1 防災部会の概要

大田区自立支援協議会は(以下、「協議会」という)、障がい者及び障がい児が地域で自立した生活を送れるよう支援するため、平成20年度に区が設置しました。以降、相談支援事業をはじめ、地域の障がい福祉課題について具体的な検討を行なってきました。防災部会は、協議会において専門的な調査検討を行うために設置した5つの専門部会の1つで、平成22年度に設置しました。

この部会の構成の特徴として、種別が異なる多くの障がい当事者が委員として参加していること、ご家族、特別支援学校、福祉避難所に指定されている事業所、消防、警察など多様な構成となっていることが挙げられます。どの専門部会においても当事者参加は必要ですが、特に、災害への備えや災害時の避難等を検討するためには、さまざまな障がい特性に応じた個別具体的なご意見、さまざまな機関の各々の立場での意見を踏まえることが重要です。このため、委員の選出にあたっては、希望だけでなく、他の委員から専門的検討に適材であるとして推薦された方にもお願いするという方法を取り入れました。

2 これまでの取り組み

防災部会は、大きく2つの活動に力を注いできました。

1つ目が、ヘルプカードとヘルプマークの理解啓発の取り組みです。

まず設立年度に、障がいのある方が災害時に自分の身を守る取り組みの一環として「たすけてねカード」を検討・作成したことから始まります。

「たすけてねカード」とは、氏名や住所、連絡先、困ったときに手伝ってほしいこと等を記入できる用紙です。東日本大震災の発生を受けてその必要性が再認識され、手引の作成や普及方法などを防災部会で話し合い、さらに改良しました。

その後、東京都が同様の意義を持つ「ヘルプカード」の作成促進事業を開始し、都内で統一的に活用できるよう標準様式を定めたため、たすけてねカードのデザイン等を標準様式に合わせて一新し、ホルダーにカードを入れるタイプの今日の形に至りました。区内地域福祉課や特別出張所などで、障がい者に限らず支援の必要な方に配布しており、災害時や外出時に活用いただいています。

併せて、ヘルプマークの啓発も進めています。防災部会での議論を反映し、ヘルプマーク入りの福祉避難所周知用のぼり旗やステッカーを作成し、福祉避難所へ配布・掲出しています。また、地域の防災訓練において委員と区が協働してブースを設置し、ヘルプカードとヘルプマークの、当事者や関係者、地域住民への配布や広報を行なっています。

2つ目が、防災訓練への参加・協力です。約70万人の区民が暮らす大田区では、区を4つの地域に分けて、地域ごとに大田区総合防災訓練を毎年実施しています。委員はこの総合防災訓練や自治会町会主催の避難訓練などに、積極的に参加してきました。このうち、大田区の中央部に位置する新井宿地区の総合防災訓練においては、同地区の福祉避難所である大田区立障がい者総合サポートセンターにおける避難所開設運営訓練を、防災部会として提案しました。その結果実施された、地域の中学生等による学校避難所からの誘導訓練や福祉避難所の受け入れ、避難スペースや備蓄物品の公開等は、要配慮者支援のための大きな第一歩となりました。

3 今後の展望について

今後、防災部会においては、引き続き、災害時の自助・共助・公助を意識して活動していきたいと考えています。

自助には、ヘルプカードやヘルプマークの周知・理解の促進、必要な方への配布が必要です。それらを発信していくための工夫を検討していきます。

共助には、訓練等への参加を通し、地域住民に障がい特性とその支援方法について知ってもらうことが重要です。しかし、委員だけでの訓練参加には限界があり、地域で暮らす当事者の参加を促すツールや環境整備について、一緒に考えていく必要性を感じています。

最後に公助ですが、福祉避難所の体制整備を図ることが課題となります。訓練等を通して課題を抽出し、一つ一つ具体的な解決策を積み上げていくことを目指していきます。

首都直下地震などの大災害が予測されている現在、障がい当事者やその支援者、関係者が自主的・主体的に工夫して取り組みを進める防災部会が果たす役割はますます大きくなると考えています。これからも、障がいのある人が住み慣れた地域で、安全・安心に暮らせる大田区を目指して、行政と自立支援協議会が協働し元気に活動していきます。

(はせがわただし 東京都大田区福祉部障害福祉課長)