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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2016年3月号

平成28年度障害保健福祉関係予算(案)について

厚生労働省障害保健福祉部企画課

平成28年度障害保健福祉関係予算案については、対前年度5.7%増の1兆6,375億円を計上している。予算案の主な内容は、次のとおりである。

1 障害福祉サービスの確保、地域生活支援などの障害児・障害者支援の推進 1兆6,375億円

(1)良質な障害福祉サービス等の確保 9,701億円

障害児・障害者が地域や住み慣れた場所で暮らすために必要な障害福祉サービスを総合的に確保する。

(2)地域における障害児支援の推進 1,458億円(うち障害福祉サービス関係費は1,395億円)

障害のある児童が、できるだけ身近な地域で、障害の特性に応じた療育などの支援を受けられるよう、それに係る必要な経費を確保する。

(3)地域生活支援事業の着実な実施【一部新規】 464億円

意思疎通支援や移動支援など障害児・障害者の地域生活を支援する事業について、必要額を確保しつつ、障害支援区分認定等事務等の一般財源化を図るとともに、事業の着実な実施を図る。

(4)障害児・障害者への福祉サービス提供体制の基盤整備 70億円

一億総活躍社会の実現に向けて障害児・者が地域で安心して生活し、それぞれの能力を発揮できるよう、就労移行支援、就労継続支援事業等を行う日中活動系事業所やグループホーム等の整備促進を図るとともに、障害児支援の充実を図るため、地域の障害児支援の拠点となる児童発達支援センター等の整備やきめ細やかな支援を行うための小規模な形態による体制の整備を推進する。

(参考)【平成27年度補正予算】

○障害福祉サービス事業所等の基盤整備 60億円

障害児・者が地域で安心して生活できるよう障害福祉サービス事業所等の整備について補助を行う。

(5)障害児・障害者への良質かつ適切な医療の提供 2,301億円

心身の障害の状態の軽減を図る自立支援医療(精神通院医療、身体障害者のための更生医療、身体障害児のための育成医療)を提供する。

また、自立支援医療の利用者負担のあり方については、引き続き検討する。

(6)特別児童扶養手当、特別障害者手当等 1,603億円

特別児童扶養手当(1,213億円)、特別障害者手当等(390億円)。

(7)障害児・障害者虐待防止などに関する総合的な施策の推進

1.障害者虐待防止の推進 地域生活支援事業(464億円)の内数

都道府県や市町村で障害児・障害者虐待の未然防止や早期発見、迅速な対応、その後の適切な支援を行うため、地域の関係機関の協力体制の整備、家庭訪問、関係機関職員への研修等を実施するとともに、障害児・障害者虐待の通報義務等の制度の周知を図ることにより、支援体制の強化を図る。

2.障害児・障害者虐待防止・権利擁護に関する人材養成の推進【一部新規】 14百万円

国において、障害児・障害者の虐待防止や権利擁護に関して各都道府県で指導的役割を担う者を養成するための研修等を実施する。

(8)重度訪問介護等の利用促進に係る市町村支援 11億円

重度障害者の地域生活を支援するため、重度障害者の割合が著しく高いこと等により訪問系サービスの給付額が国庫負担基準を超えている市町村に対する補助事業について、小規模な市町村に重点を置いた財政支援を行う。

(9)強度行動障害を有する者の支援を行う職員の育成 地域生活支援事業(464億円)の内数

強度行動障害を有する者等に対し、適切な支援を行う職員の人材育成を進めるため、都道府県による強度行動障害支援者養成研修(基礎研修及び実践研修)を実施する。

(10)障害者自立支援機器の開発の促進【一部新規】 1.6億円

筋電義手などのロボット技術を活用した障害者向けの自立支援機器などの開発(実用的製品化)の促進を図る。

(11)芸術文化活動の支援の推進【一部新規】 1.5億円

芸術文化活動を通した障害者の社会参加を一層推進するため、障害者の芸術文化活動への支援方法や著作権の権利保護等に関する相談支援などを行うモデル事業の実施、障害者の芸術・文化祭の充実を図る。

(12)障害児・障害者の社会参加の促進 27億円

視覚障害者に対する点字情報等の提供、手話通訳技術の向上、盲ろう者向け通訳者養成等を支援し、障害児・障害者の社会参加の促進を図る。

障害福祉サービス等予算の推移
棒グラフ 障害福祉サービス等予算の推移拡大図・テキスト

平成28年度障害保健福祉部予算案の概要拡大図・テキスト

2 地域移行・地域定着支援などの精神障害者施策の推進 204億円(※地域生活支援事業計上分を除く)

(1)長期入院の精神障害者の地域移行・地域定着支援の推進 80百万円 及び地域生活支援事業(464億円)の内数

「入院医療中心から地域生活中心へ」という基本理念に基づき、都道府県において、精神障害者の地域移行支援に係る体制整備のための広域調整及び関係機関との連携等を図る。

さらに、「長期入院精神障害者の地域移行に向けた具体的方策に係る検討会」取りまとめで提示された精神障害者の地域移行方策及び病院の構造改革に係る取組を総合的に実施し、その効果について検証することにより、精神障害者の退院促進や地域定着を支援する。

また、難治性患者に対して専門的な治療を実施するために、医療機関間のネットワークの構築等による支援体制のモデル事業を行う。

(2)精神科救急医療体制の整備 14億円

精神疾患のある救急患者や、精神疾患と身体疾患を合併している救急患者が、地域で適切に救急医療を受けられるよう、引き続き体制を整備する。

(3)地域で生活する精神障害者へのアウトリーチ(多職種チームによる訪問支援)体制の整備 地域生活支援事業(464億円)の内数

精神障害者の地域移行・地域生活支援の一環として、保健所等において、ひきこもり等の精神障害者を医療へつなげるための支援や関係機関との調整を行うなど、アウトリーチ(多職種チームによる訪問支援)を円滑に実施するための支援体制を確保する。

(4)摂食障害治療体制の整備 13百万円

「摂食障害治療支援センター」を試行的に設置し、急性期の摂食障害患者への適切な対応や医療機関等との連携を図るなど、摂食障害治療の支援体制モデルの確立を目指す。

(5)災害時心のケア支援体制の整備【一部新規】 31百万円 及び地域生活支援事業(464億円)の内数

大規模自然災害・事故等による被災者への心のケアの対策を推進するため、各都道府県で災害派遣精神医療チーム(DPAT)の定期的な連絡会議を開催するなど、日常的な相談体制の強化や災害等発生時の緊急対応体制の強化を図る。

また、災害等発生時の心のケア対応として、DPAT派遣に係る連絡調整業務や心のケア活動への技術的指導を行うとともに、被災者の心のケアに関する調査・分析を行い、東日本大震災や今後発生する災害等による被災者の支援に資する情報を提供する。

(6)心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者に関する医療提供体制の整備の推進【一部新規】 185億円

心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の社会復帰の促進を図るため、心神喪失者等医療観察法を円滑に運用するとともに、指定入院医療機関の確保や通院医療を含む継続的な医療提供体制を整備する。

また、指定医療機関の医療従事者等を対象とした研修や指定医療機関相互の技術交流等により、医療の質の向上を図るほか、新たに、地方厚生局単位で指定医療機関と関係機関による検討会を開催し、地域連携体制の更なる強化を図る。

(7)てんかんの地域診療連携体制の整備 9百万円

てんかんの治療を専門的に行っている医療機関を「てんかん診療拠点機関」として指定し、関係機関との連携・調整等を試行的に実施するとともに、各拠点機関で集積した知見の評価・検討を行う「てんかん診療全国拠点機関」を設置し、てんかんについての支援体制モデルの確立を目指す。

(8)相談支援事業所等(地域援助事業者)における退院支援体制確保 地域生活支援事業(464億円)の内数

医療保護入院者の地域生活への移行を促進する観点から、相談支援事業所等における退院支援の体制整備を支援する。

3 発達障害児・発達障害者の支援施策の推進 2.0億円(※地域生活支援事業計上分を除く)

(1)発達障害児・発達障害者の地域支援機能の強化 地域生活支援事業(464億円)の内数

乳幼児期から成人期までの一貫した発達障害に係る支援体制の整備や、困難ケースへの対応、適切な医療の提供に資するため、地域の中核である発達障害者支援センター等に発達障害者地域支援マネジャーを配置し、市町村や事業所等への支援、医療機関との連携強化を図る。

また、都道府県等において、ペアレント・プログラム(※1)等を通じた家族支援体制の整備や発達障害特有のアセスメントツール(※2)の導入を促進する研修等を実施する。

※1 ペアレント・プログラム:親が、自分の子どもの行動を観察して発達障害の特性を理解したり、適切な対応をするための知識や方法を学ぶための簡易なプログラム。

※2 アセスメントツール:発達障害を早期発見し、その後の経過を評価するための確認票のこと。

(2)発達障害児・発達障害者の支援手法の開発や支援に携わる人材の育成など

1.支援手法の開発、人材の育成【一部新規】 1.3億円

発達障害者等を支援するための支援手法の開発、関係する分野との協働による支援、切れ目のない支援等を整備するためのモデル事業を実施する。その際、新たに、地域で暮らす発達障害者に困り事が生じた時に発達障害者の特性を理解した上で地域や関係機関において適切な対応が行われるよう支援手法の開発を行う。

また、国立障害者リハビリテーションセンター等で、発達障害者の就労支援に関する支援を行うとともに、発達障害者等支援の地域マネジメントに携わる者や強度行動障害者支援に携わる者に対する研修を行い、人材の専門性の向上に取り組む。

さらに、発達障害における早期発見・早期支援の重要性に鑑み、かかりつけ医等の医療従事者に対して、対応力向上研修を実施し、どの地域においても一定水準の発達障害の診療、対応が可能となるよう医療従事者の育成に取り組む。

2.発達障害に関する理解の促進【一部拡充】 53百万円

全国の発達障害者支援センターの中核拠点としての役割を担う、国立障害者リハビリテーションセンターに設置されている「発達障害情報・支援センター」で、発達障害に関する各種情報を発信し、支援手法の普及や国民の理解の促進を図る。さらに、「発達障害情報・支援センター」の機能強化を図るとともに、新たに専門家等と連携を図りつつ、自治体等に対して地域における支援体制構築に向けた指導、助言を行う。

また、「世界自閉症啓発デー」(毎年4月2日)などを通じて、自閉症をはじめとする発達障害に関する正しい理解と知識の普及啓発を行う。

(3)発達障害の早期支援 地域生活支援事業(464億円)の内数

市町村で、発達障害等に関して知識を有する専門員が保育所等を巡回し、施設のスタッフや親に対し、障害の早期発見・早期対応のための助言等の支援を行う。

4 障害者に対する就労支援の推進 10.9億円(※地域生活支援事業計上分を除く)

(1)工賃向上のための取組の推進 2.3億円

一般就労が困難な障害者の自立した生活を支援する観点から、就労継続支援B型事業所などに対し、経営改善や商品開発、市場開拓等に対する支援を行うとともに、様々な分野で活躍する専門家の技術指導による障害者のスキルアップを図るためのモデル事業を実施することにより、利用者の工賃向上を図る。

また、共同受注窓口の体制整備や、企業等と障害者就労施設等との受発注のマッチングを促進することにより、障害者就労施設等に対する官公需や民需の増進を図る。

(2)障害者就業・生活支援センター事業の推進 7.5億円

就業に伴う日常生活の支援を必要とする障害者に対し、窓口での相談や職場・家庭訪問等による生活面の支援などを実施する。

また、就労継続支援事業の利用から一般就労への移行や、加齢や重度化による一般就労から就労継続支援事業の利用への移行など障害者の能力に応じた就労の場に移行できるようにするための支援を行う。

(3)農福連携による障害者の就農促進【新規】 1.1億円

農業分野での障害者の就労を支援し、障害者の職域拡大や収入拡大を図るとともに、農業の担い手不足解消につなげるため、障害者就労施設へ農業の専門家の派遣、農業に取り組む障害者就労施設によるマルシェの開催等の支援を実施する。

(4)就労支援の充実強化 地域生活支援事業(464億円)の内数

就労支援を行う事業所のノウハウの充実を図り、企業等での就労を希望する障害者への支援を強化するとともに、企業等で働く障害者のための交流や生活面の相談支援の場の提供等により障害者の就労支援を推進する。

5 自殺対策等の推進 32億円(※地域生活支援事業計上分を除く)

6 薬物などの依存症対策の推進 1.1億円

7 東日本大震災からの復興への支援 30億円