音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

  

「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2016年4月号

工夫いろいろエンジョイライフ

実用編●大好きなスヌーピーをトレードマークに、他●

提案者:中川美枝子 イラスト:はんだみちこ

中川美枝子(なかがわみえこ)さん

網膜芽細胞腫により10歳の時から全盲。現在、津田塾大学学芸学部国際関係学科3年に在籍。興味のある分野はドイツ語圏の文化や社会。学内の「インクルーシブ教育支援室」では教材のテキストデータ化等のサポートを受ける一方、アクセシビリティマップの作成といった活動にもメンバーとして参加している。


大好きなスヌーピーをトレードマークに

幼いころから、両親は私の持ち物に必ず名前を書いてくれたので、物を紛失したことはほとんどありませんでした。しかし大学生にもなると、「中川美枝子」と書かれた物を持ち歩くのはおしゃれやプライバシーの観点でちょっと抵抗があります。

そこで、私の大好きなスヌーピーを自分のトレードマークに決めて、持ち物のデザインをある程度統一するようにしています。こうすると、持ち物に名前を書いてもらう手間が省けますし、仮に置き忘れたとしても、探してもらう際の分かりやすい目印となります。スヌーピーは老若男女に愛されているキャラクターなので、デザインの選び方さえ気をつければ、たくさん持ち歩いていても子どもっぽく見えないところが気に入っています。

また、私の持ち物を見た人が「あっ、スヌーピーがお好きなんですね?」と声をかけてくれれば、話下手な私でも会話のチャンスが掴(つか)めるので、自己PRのツールとしても重宝しています。


白杖に鈴をつけて存在をアピール

視覚障害者の証しである白杖を持っていても、駅や道路で他の通行人とぶつかったり、杖につまずかれたりしてひやっとする経験は日常茶飯事です。

しかし、ふとした思いつきで杖に鈴をつけてからは、以前よりもそうしたことが減ったように思います。視覚的なアピールである白杖だけでなく、鈴の音という聴覚面でも自分の存在を周囲に知らせようという作戦です。

以来、晴眼者はもちろん、視覚障害者と点字ブロック上で衝突する回数も減少したのは嬉(うれ)しいことです。他にも大学のキャンパスや周辺で、鈴の音を聞きつけた教職員の方や友人が私のそばまで駆け寄ってきてくれることがあり、「みんなが見守ってくれている」と安心して歩けるようになりました。

私が愛用しているのは、継ぎ目のない丸い形と軽やかな音色が特徴的な宝来鈴という種類です。鈴の形や音は多種多様なので、みなさんもお気に入りを見つけて、外出時の相棒にしてはいかがでしょうか?


日本語を学ぶ ~言葉に対して敏感でありたい

ここ最近は、日本語に関する本を読むように心掛けています。大学に入学して以来、自分のハンディや必要なサポートについて説明する機会が増えたので、印象の良さと分かりやすさを持ち合わせた文章を書いたり話したりするためにも、言葉に対して敏感でありたいと思ったことがその理由です。

敬語の使い方、慣用句の誤用例、外国語との比較など、さまざまなテーマの本を手に取るように意識しています。特に、語源や漢字の成り立ちに関する本を読むことで、普段はパソコンのカーソルを文字に合わせて音声で読み上げさせること以外には、漢字の意味や読みを知る手段がない全盲の私でも、それらを具体的なエピソードと一緒に学べるため、文書を作成する際の誤変換を減らすことができました。

これらの書籍は点字で読むこともありますが、たいていはデイジー図書をインターネットからダウンロードして、通学の電車の中や就寝前の時間に聞きながら楽しんで勉強しています。