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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2016年7月号

当事者からの声

ろう高齢者も「人」として生き、安心して暮らしたい、それが当たり前の望み!

廣田しづえ

全国ろうあヘルパー連絡協議会は、全国の訪問介護、地域活動支援センター等で活動しているろうヘルパーや手話関係者150人が加入している。ろう高齢者の社会資源がない地域で、ボランティアの形で「手話で語り合える」場づくりを目指して活動をしている。

ろう高齢者の現状の例をいくつか挙げる。

聴こえる高齢者に比べて80代以上のろう高齢者のほとんどは義務教育を十分受けられず、言葉が十分身についていない。また、聞こえないが故に社会的偏見や障害者差別を受けたり、兄弟、親族からも関係を切られてしまったケースも多くあった。いざ介護となると、その意味が分からず否定する。社会背景からみて、手話で話せる地域での環境整備が乏しく、「人」らしく生きることがなかったためと考えられる。

そして80代以上の多くは、障害基礎年金のみで生計を立てている。また、意思疎通のずれや情報獲得の幅が狭いこともあり、薬の正しい使用方法が分からず、誤った服用で症状が悪化してしまったり、食材の使い方が分からず栄養が偏ったり、近所とのトラブルなどの例がある。

介護保険サービスの認定調査は、ろう高齢者は身体上は要介護度が軽くても、コミュニケーション支援や生活能力に欠けており、調査項目に矛盾がある。結局、要支援1と2のろう高齢者は介護保険サービスから外され、2017年4月から完全実施される総合事業により、要介護1と2のろう高齢者はホームヘルプやデイサービスが利用できなくなるということで、支援の幅がさらに狭まれてしまう。

65歳になると介護保険優先の利用が前提だが、介護保険サービスを利用できないなら、福祉サービスを利用しようと思っても、市町村の裁量によって、利用できないことがある。

その中で、福祉サービスは日常生活用具申請や交通機関の割引、手話通訳派遣依頼以外は、手話で話すことができ利用できる地域での社会資源がほとんどない。一つの区域ではろう高齢者が少人数であるため、圏域でろう高齢者が利用できる社会資源を増やし、福祉サービスの選択肢も広げたら、それこそ、いきいきと過ごせられる。

「手話」はろう者の生きる命、生きる言葉である。いつでも、どこでも、「手話」で話せる、そのような環境整備に取り組み、次世代を担う人々に伝えつつ、常に前進していきたい。

(ひろたしづえ 全国ろうあヘルパー連絡協議会会長)