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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2016年7月号

列島縦断ネットワーキング【青森】

祝!障害者差別解消法施行CIL青森の集い
~2016.4.1 HAPPY BIRTHDAY to JDA!

和田英人

全国がケーキで一つになったら何かが起きそう!

「HAPPY BIRTHDAY to JDA 2016.4.1」。私たちがケーキの中央にパワフルに書き入れてもらったこの文字は、この日、全国各地の自立生活センターでも多くの障がい者と同じ思いを持った仲間たちの笑顔に囲まれ、パーティーやパレード、フォーラムなどでエネルギッシュにお祝いされ、大きな喜びと期待に包まれて輝いていたと思います。

昨年12月に、福岡で開催された全国自立生活センター協議会(JIL)全国セミナーで、茨城県のつくば自立生活センターほにゃらの斉藤慎吾さんがケーキの帽子をかぶり、壇上で「来年4月1日に合わせて、全国各地のCILでバースデーケーキを発注してください。ケーキに付けるメッセージプレートには“HAPPY BIRTHDAY to JDA”と書いてください。Facebookで全国で障害者差別解消法の施行を祝う画像を流しましょう!」と突拍子もないことを飄々(ひょうひょう)と言ってのけたことで、全国の自立生活センターではそれぞれの取り組みを始めました。

私はこのとき、頭の中に「?」が浮かびながら、心の中では「全国128か所の全CILが一斉にパーティーやったら面白いだろうなぁ」とワクワク感が入り交じり、自分が自立をするときに憧れたADAの日本版でJDAと名づけた呼び名に、単純にも感動していたことを思い出します。ケーキなら簡単だし、楽しいし、おいしいし、もし、全部のCILがやらなくても青森は仲間とこのイベントをやるぞ!と決めました。

食卓と枕元をつなげて差別とは何かを考えたい

記念の日の2016年4月1日には「祝!障害者差別解消法施行 CIL青森の集い~HAPPY BIRTHDAY to JDA 2016.4.1!!」と称し、昼の12時から18時まで、センター全部を開放し、当会員31人のうち27人の仲間と子どもたちの総勢30人でケーキを囲み、おいしいものを食べながらお酒を交わし合い、祝いの宴を開催しました。

障がい者も健常者も、福祉の何かをやってる人もそうでない人にも「障害者差別解消法」が今日から始まったこと、障がい者が社会で暮らす人としての権利を守るための法律がこの日本にもやっとできたことを知ってほしくて、施設で暮らす寝たきりの仲間や、親兄弟と一緒に食卓を囲む在宅の仲間にも届くように、青森全県民の目と耳に触れるよう新聞やテレビを通して広く伝えることにしました。

ねらいは広く、深く、面白く

報道関係は地方紙2社の取材が決まり、テレビは朝日放送で、今回のイベントの取材と障害者差別解消法をテーマにした取材を2種類に分けて放送することになりました。新聞1社の取材は、前日の朝刊の市民欄に掲載され、当日の取材は翌日の社説に掲載されました。もう1社は、4月下旬の朝刊トップに掲載されました。地方紙ですが、みんなの目には入ったはずです。

当日はお昼のパーティーから始まりました。超特大のバースデーケーキを前に囲んで、乾杯の場面を記念撮影し会食!仲間が持ち込んでくれた食材で作った鍋に、カレーに、お刺身等々とても豪華なパーティーになりました。

午後は引き続き会食をしながら、障害者差別解消法についての勉強会を行いました。最初に、前日から当日にかけて行われた東京や茨城、沖縄をはじめとする全国10数か所の自立生活センターが中心となったパレードの情報をみんなで共有し、障害者差別解消法についてみんなで勉強しました。

勉強会では、内閣府の障害者差別解消法リーフレットを使い、「不当な差別的取り扱いをしないでね!」と「合理的な配慮をしましょう!」という項目で、体験談も交えてその概要を説明し、障がいを理由にしたさまざまな差別や、障がいのある人が障がいのない人と同じサービスを受けられるようにするための配慮に加えて、どうしてもそれができない時にはどうしなければならないか、自分たち当事者はどうされたいかを掘り下げ、もし本当に差別をされたら、これからはどうすればいいのか、青森の現状と照らし合わせながら考えてみることをしました。

Q&Aでは、全国自立生活センター協議会のセミナーで使われた事例検討資料を用いて、どのような取り扱いが何の差別になるのか、さらに、それにアニメのキャラクターやヒーローなどを入れ込んでみたらどうなるか、時代が違ったり架空の世界だったりしたら差別はどうなるか等々、みんなが想像力を膨らませて考えられるよう工夫しました。

後半は、沖縄の条例づくりのテレビドキュメンタリー“障害者魂”や、障害者の差別や権利に関するDVDをみんなで視聴しました。最後に、この法律の落とし穴とも言える、「事業者の場合は差別に値するバリアがあったとしても、その解消に過重な負担がある場合は努力することで済まされてしまう」点や、個人の差別は対象にならない点などの注意点を共有しました。差別を受けた私たちが常に声を上げ、差別は何かを鋭く指摘していき、この法律が“絵に描いた餅”にならないようにしよう!と一致団結し、中締めとしました。さらに夜は二次会、夕食飲み会と丸1日、JDAをさかなに酔いしれた1日となりました。

参加者の感想、意識を自分から持つことが大事

・DVD鑑賞では、障害者差別解消法ができた歴史と、沖縄の自立生活センター・イルカ代表の長位鈴子さんのパワフルな運動が分かりました。和田代表の講座で分かったことは、自治体と民間企業では合理的配慮などで法律に違いがあること。個人は法律に当てはまらないことです。Q&A形式でドラえもんが出てきたりと笑って学んだ時間でした。

越後智子さん(障がい者スタッフ)

・障害者差別解消法ができたことで、自分たち障がい者が生きていく上でいろんな可能性が生まれると思いました。

中村一生さん(当センター会員)

今回、このイベントをやってみて強く思ったことは、当事者である障がい者の運動団体であっても、意外と今回の勉強会で初めて知ったという人が多かったことです。何か漠然としている、そんな感じを受けました。この法律が本当にどんな効果をもたらすのか、法律ができたけど、実際に差別を受けたらどうすればいいのか、が分かりづらい一面もあることが分かりました。

法律や制度などは、世間一般の人たちや、地域で暮らす障がいのある当事者でも知らない人も少なくなく、意外と意識もしていない人の方が多いのかもしれません。そうであればこそ、社会を変えようと運動している障がいのある私たちが、先頭を切って意識し取り組んでいかなければならないと実感しました。

本来、誰のための差別解消なのか、妥協せず課題に取り組む

差別解消法は差別を受けた人が、その差別に対して、差別であり、徹底した改善を求めることに声を上げなければ何も変えることができません。その基準となる各自治体が作らければならない対応要領があります。これは行政が公の者として、障がい者への差別を撤廃するもので、どのように作らなければならないか、障がいのある私たち当事者の意見を入れ込んでいかなければなりません。

青森市は年内中に、当事者がどんな差別を受けたことがあるかのアンケート結果を元に対応要領を作成すると言っています。今後、作成をする側に重度障がいのある当事者を入れるよう働きかけていき、障害者差別解消支援地域協議会の設置と、青森市の障害者の差別に関する条例作成委員にも重度障がいのある当事者を入れるよう強く働きかけていきます。

この法律は、障がいのある人に継続したサービスを提供する立場にある人たちの接遇に関した差別を対象にしたもので、個人からの差別は対象になっていないところは今後の要注意点です。みんなで妥協なく考えていく必要性が高い点です。このような課題も含めて、今後もみんなで差別について考える機会をつくっていきたいと思います。

(わだひでと 自立生活センター青森代表)