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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2016年8月号

障害児支援の動向

小島裕司

厚生労働省においては、障害児支援の在り方に関する検討会や、社会保障審議会障害者部会でまとめられた今後の取組に関する報告書などを踏まえながら、障害のある子どもへの支援の充実を図ることとしています。

1 平成24年の児童福祉法の改正

平成24年に施行された改正児童福祉法では、障害のある児童が身近な地域で適切な支援が受けられるようにするとともに、併せて、年齢や障害特性に応じた専門的な支援が提供されるよう質の確保を図ることを目的に、障害児支援の強化が図られています。

具体的には、1.従来の障害種別で分かれていた障害児施設を、通所による支援を「障害児通所支援(児童発達支援、放課後等デイサービス等)」、入所による支援を「障害児入所支援(福祉型・医療型障害児入所施設)」にそれぞれ一元化する。

2.通所サービスの実施主体を身近な市町村に変更する。これにより障害者総合支援法の居宅サービスと通所サービスの一体的な提供を可能とする。

3.学齢児を対象としたサービスを創設し、放課後支援を充実する。また、障害があっても保育所等の利用ができるように支援を行う訪問サービスを創設する。

4.18歳以上の障害児施設入所者に対し障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスを提供し、年齢に応じた適切な支援を提供する、などです。

2 「今後の障害児支援の在り方について~「発達支援」が必要な子どもの支援はどうあるべきか~」
(障害児支援の在り方に関する検討会報告書)

障害児支援の在り方に関する検討会は、平成27年4月にスタートする子ども・子育て支援新制度を踏まえつつ、平成27年度の報酬改定や障害者総合支援法施行3年後の見直しに併せて行う制度見直し等を視野に置いて、今後の障害児支援の在り方について検討するために開催されたもので、平成26年7月に報告書が取りまとめられました。

(1)基本理念

今後の障害児支援の在り方を考えるにあたっての基本理念として、「地域社会への参加・包容(インクルージョン)の推進と合理的配慮」、「障害児の地域社会への参加・包容を子育て支援において推進するための後方支援としての専門的役割の発揮」、「障害児本人の最善の利益の保障」、「家族支援の重視」が示されています。

この中の「障害児の地域社会への参加・包容を子育て支援において推進するための後方支援としての専門的役割の発揮」とは、保育所や放課後児童クラブ等の一般的な子育て支援施策における障害児の受け入れを進めることにあわせて、障害児支援を、施設・事業所等が持っている専門的な知識・経験に基づき一般的な子育て支援施策をバックアップする後方支援として位置づけ、保育所等訪問支援等を積極的に活用して保育所等の育ちの場における障害児の支援に協力できるような体制づくりを進めていくというものです。

(2)地域における「縦横連携」を進めるために

基本理念を踏まえ、障害児支援を子育て支援の一環として行う体制を作っていくためには、現在の障害児通所支援や障害児入所支援の枠にとどまらず、他制度との連携を積極的に図っていくことが極めて重要です。このため、ライフステージに応じた切れ目の無い支援(縦の連携)と、保健、医療、福祉、保育、教育、就労支援等とも連携した地域支援体制の確立(横の連携)が求められています。

また、支援者の専門性の向上や専門職の確保、障害児相談支援の推進、支援に係る情報の共有化、障害児入所施設の入所児支援のための児童相談所等との連携が必要とされています。

(3)今後の障害児支援が進むべき方向(提言)

前記の考え方を踏まえ、1.地域における「縦横連携」を進めるための体制づくりとして、児童発達支援センター等を中心とした地域支援の推進や入所施設の機能の活用、2.「縦横連携」によるライフステージごとの個別の支援の充実として、保育、母子保健等と連携した保護者の「気づき」の段階からの乳幼児期の障害児支援や教育と連携した障害児の支援、3.継続的な医療支援等が必要な障害児のための医療・福祉の連携、4.家族支援の充実、5.個々のサービスの質のさらなる確保、などが提言されております。

3 「障害者総合支援法施行3年後の見直しについて」を踏まえた対応

(1)「障害者総合支援法施行3年後の見直しについて」(社会保障審議会障害者部会報告書)

障害者総合支援法(平成25年4月施行)の附則では、施行後3年を目途として障害福祉サービスの在り方等について検討を加え、その結果に基づいて、所要の措置を講ずることとされていました。このため、社会保障審議会障害者部会で平成27年4月から本格的に検討が開始され、今後の取組について報告書が取りまとめられました。

この中で、障害児支援では、乳児院や児童養護施設等に入所している障害児や重度の障害等のために外出が困難な障害児に対する発達支援のきめ細かな提供、医療的ケア児への支援などが示されています。

(2)平成28年障害者総合支援法及び児童福祉法の改正

この社会保障審議会障害者部会報告書等を踏まえ、障害児支援のニーズの多様化へのきめ細かな対応を図るため、平成28年の通常国会において、障害者総合支援法及び児童福祉法の一部を改正する法律案が審議されました(平成28年5月25日成立)。この改正により、1.重度の障害等により外出が著しく困難な障害児に対し、居宅を訪問して発達支援を提供するサービスを新設する、2.保育所等の障害児に発達支援を提供する保育所等訪問支援について、乳児院・児童養護施設の障害児に対象を拡大する、3.障害児のサービスに係る提供体制の計画的な構築を推進するため、自治体において障害児福祉計画を策定するものとする、4.医療的ケアを要する障害児が適切な支援を受けられるよう、自治体において保健・医療・福祉等の連携促進に努めるものとする、ことが児童福祉法に盛り込まれました(1~3は平成30年4月1日施行、4は平成28年6月3日公布日施行)。

(3)放課後等デイサービス等について

放課後等デイサービスについては、平成27年12月現在、事業所が7,378か所、利用児童数が116,954人(国保連データ)となっており、事業所数及び利用者数、費用額の量的な拡大が著しい状況にあります。

このような中、社会保障審議会障害者部会報告書においては、単なる居場所となっている事例や、発達支援の技術が十分ではない事業所が軽度の障害児だけを集めている事例など、障害児本人にとって適切な支援がなされていないケースがあるとの指摘がされています。また、この現状・課題を踏まえた今後の取組として、障害児の放課後等の支援については、子ども・子育て支援施策である放課後児童クラブや、教育施策である放課後子ども教室等における受け入れを引き続き推進すべきであり、その際、保育所等訪問支援などを活用して、必要に応じて専門的なバックアップを行うべきとされています。

また、放課後等デイサービスなどの障害児通所支援については、発達支援を必要とする障害児のニーズに的確に対応するため、質の向上と支援内容の適正化を図る観点から、放課後等デイサービスガイドラインの活用を徹底するとともに、発達支援等の子どもに関する支援の専門的な知識・経験を有する者の配置を求めるほか、障害児本人の発達支援のためのサービス提供を徹底するなど、制度面・運用面の見直しを行うべきとされています。

このため、厚生労働省においては、放課後等デイサービス等の障害児通所支援について、質の向上と支援内容の適正化を図ることを目的に、平成28年3月に自治体に対し、1.放課後等デイサービスガイドラインの活用の徹底等を図ること、2.障害児通所支援は、障害児の心身の状況に応じ、障害児の自立の支援と日常生活の充実に資するよう、適切な技術をもって指導、訓練等を行うものであり、障害児通所給付費等の通所給付決定にあたっては、障害児本人の最善の利益を図り、その健全な発達のために必要な支援を適切に提供する観点から、支給の要否及び必要な支給量について適切に判断し、決定すること、3.障害児についても、保育所、放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)等の一般施策を利用(併行利用を含む)する機会が確保されるよう、たとえば保育所等訪問支援の活用など、適切な配慮及び環境整備に努めることなどの留意事項を示した通知を発出しております。

(こじまゆうじ 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課障害児・発達障害者支援室障害児支援専門官)