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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2016年10月号

1000字提言

インクルージョン社会を目指して
~EVERYONE IS ORIGINAL~

細川佳代子

「障がいのある方たちが著名人とペアで出演するファッションショーを開こう!」「アイドルの本物の衣装を着るファッションショーで可愛い姿を披露したい!」「色彩感覚や独特の作風が魅力の絵や書をアート展で披露しよう!」「ダンスが大好き!の気持ちをステージからアピールしてみよう!」

私が代表を務めるNPO法人「勇気の翼インクルージョン」では、そんな私の思いやアイデアを次々とカタチにしている。「障がい者の~」と銘打つイベントではなく、ショッピングモールやイベント会場を舞台に、来場するたくさんのお客様に向け、「EVERYONE IS ORIGINAL」のメッセージを発信し続けているのだ。

2005年、長野で開催した「スペシャルオリンピックス冬季世界大会」で、皇太子殿下から「大会をきっかけとして、知的障がいのある人々の社会参加が進み、誰にも開かれた、温かみのある社会が創造されることを希望します」とのお言葉をいただいた。以来「障がいの有無にかかわらず、誰もが地域社会で生き生きと輝いて、温かな笑顔になるインクルージョン社会」を実現することが私のミッションとなった。

「障がい」と聞くと、「可哀相(かわいそう)なこと」「気の毒で触れてはいけないこと」「自分とは関係のない世界」など、マイナスなイメージを持つ方がまだまだ多い。障がいのある方と交流を重ねたら、そんなイメージはすぐに払拭されるのだが、自ら出向かない限り、障がいのある方と交流するチャンスさえほとんどないのが日本の現状だ。

それならもともと人がたくさん集まる場所に出て行って、それぞれの輝きを見てもらおうと、さまざまな会場から継続的な発信をしている。障がいのある方と健常の参加者が一緒になって自分らしさをアピールし、会場全体はいつも笑顔でいっぱいになる。出演者もボランティアも、またご来場の方々も、「一人ひとりが違って、だから楽しい」「ありのままが素敵だ」と実感して、このイベントのファンになったと喜びの声を送ってくれる。最近は、わざわざ出向いてくれるリピーターも大勢集まるイベントになってきて、本当に嬉(うれ)しい。

障がいがあっても、必要な部分へのサポートさえあれば、本来持っている才能や能力を発揮して、輝いて暮らすことができると、取り巻く私たちの側がもっと深く理解したら、社会はガラリと変るはずだ。

一人ひとりのありのままを認め合う心は、思いやりや優しい心を育み、関わる人自身も豊かにしてくれる。私自身が実感しているインクルージョンの素晴らしさは、関われば関わるほど、さらに深く心に染み渡るものだ。一人でも多くの方に知らせていくことが、今は「使命」にすら思えてならない。


【プロフィール】

ほそかわかよこ。NPO法人勇気の翼インクルージョン2015理事長。公益財団法人スペシャルオリンピックス日本名誉会長。知的障がいのある人の自立と社会参加を目指して「スペシャルオリンピックス日本」を設立。「インクルージョン社会」の実現に向けて活動を続ける。ドキュメンタリー映画5作品を製作・総指揮。著書『花も花なれ、人も人なれ ~ボランティアの私~』