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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2016年10月号

フォーラム2016

相模原殺傷について感ずること

賀来宏之

事件そのものについては、もういろいろと報道されているようなので、私がいまさらどうこうと言うことはあまりありません。ただ、「ヒトラー思想が降りてきた」という言葉についてですが、私は以前、ナチスの障がい者殺りくについての書籍『灰色のバスがやってきた―ナチ・ドイツの隠された障害者「安楽死」措置』(草思社、1991年)という本を読んだことがあります。

この前の、精神科の入院の際に、完全閉鎖病棟の職員と、そのことについて少し話したことがあります。「医師が、障がい者を殺すことが、国家による作戦として行われていた」という…皆、ショックを受けていました。

やはり、うまく言葉にはならないのですが、今の世の中の仕組みとか動きというものが、そういう巨大で猛烈な、凍り付くような暴力・狂気を次第に容認しつつあるように感じるのです。

問題は、次第に、というところで、何とかしてそのような動きをどこかで止めておかないと、どんどんエスカレートしていってしまうのではないか、と感じます。異常であることが、通常であることになる前に、何とかしておかなければ…。

インターネットの掲示板では、今も、この瞬間であっても、障がい者のみならず、人々を徹底的に罵倒し、その住んでいるところから力づくで引きずりおろそうとする力が働いています。しかし、それをどこかでとどめるのも、やはり人間の力なのです。

この原稿は、現在通所している作業所の事務室で、職員の隣のパソコンを使って書いています。世界の片隅のようなところからですが、「どこかで、とどめておかなければ!」と、叫びのようではありますが、声を上げていたいと感じます。

(かくひろゆき 神奈川県藤沢市、NPO法人ポトピの会 地域活動支援センターワークショップポトピ利用者)